番町喜楽会西新井大師吟行

番町喜楽会は10月4日(土)の第109回例会を西新井大師(五智山總持寺)への吟行句会とした。たまたまこの日、西新井大師で年に一度の「北斎会(ほくさいえ)」が行われ、寺宝である葛飾北斎の肉筆画『弘法大師修法図』が展観されることが分かったため、会議室での例会を急遽吟行会に切り替えた。大師修法図は美濃紙三十六枚を継いだ大画面に二日月の暗夜の巌上に修業する大師とそれに襲いかかる巨大な鬼を描いた作品。北斎晩年を代表する肉筆画で、寺宝として大切に扱われて来たためか絵の具の状態も良く、なかなかの迫力ある名画で、参加者一同「来た甲斐があった」と満足そうだった。

句会は足立区立鹿浜学習センターで開催した。会場が和室で茶会が出来るよう水屋のある準備室が備わっていたので、星川佳子さんのお点前によるお薄が出席者に振る舞われた。茶を喫した後、いよいよ句会。既に例会用の兼題「秋冷」「とろろ汁」が出されていたためそれを生かし、吟行の嘱目3句と兼題句2句を投句する形(投句参加者は兼題句、雑詠含め3句)で行った。

7句選句の結果、最高点句は6点で今泉而雲さんの「眉月も妖しや大師修法図」と星川佳子さんの「お茶たてて俳句の会や秋晴るる」の2句。続く5点は堤てる夫さんの「秋の風祈祷の太鼓堂に満つ」の1句、三席4点は投句参加山口斗詩子さんの「子等の手がすり鉢おさへとろろ汁」だった。以下3点4句、2点11句、1点26句という結果になった。3点獲得以上の句は以下の通り。

「秋冷」

朝冷えや切り絵のやうな烏帽子岳   堤 てる夫

秋冷や休耕田の深轍         玉田春陽子

「とろろ汁」

子等の手がすり鉢おさへとろろ汁   山口斗詩子

ぐぁぐぁととろろ擂る母日曜日    高井 百子

とろろ吸ふ脇本陣の黒き梁      徳永 正裕

「吟行句」

眉月も妖しや大師修法図       今泉 而雲

お茶たてて俳句の会や秋晴るる    星川 佳子

秋の風祈祷の太鼓堂に満つ      堤 てる夫

《参加者》(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰、星川佳子、前島厳水、(投句参加)岩沢克恵、田中白山、徳永正裕、山口斗詩子。(まとめ 大澤水牛)

 

 

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第132回日経俳句会

日経俳句会は9月17日(水)午後6時半から東京内神田鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で例会(通算第132回)を開催した。

つい先頃まで暑い暑いとぼやいていたのが嘘のような秋冷の候となり、句会出席者20人、投句参加者12人、投句総数153句と相変わらずの盛況ぶりを見せた。この日の兼題は「墓参」と「鮭」。投句は3句以上5句以内、選句7句として句会を行った。選句結果は最高点が9点で、「もう少し生きてみますと墓参 悌志郎」の1句。次席は7点で「肩の荷を下ろして帰る墓参かな 庄一郎」「墓洗ふ終に養子にならぬまま 恂之介」「日を跳ねて波跳ね上げて鮭のぼる 綾子」の3句、三席は5点で「墓洗ふ家系に一人残されて 反平」「掃苔や素直になりて父に逢ふ 靑水」の2句だった。以下、4点が4句、3点10句、2点26句、1点44句という結果になった。兼題別高得点句(3点以上)は次の通り。

「墓参」

もう少し生きてみますと墓参     大倉悌志郎

肩の荷を下ろして帰る墓参かな    井上庄一郎

墓洗ふ終に養子にならぬまま     今泉恂之介

墓洗ふ家系に一人残されて      大沢 反平

掃苔や素直になりて父に逢ふ     金田 青水

墓参り想ひは父の肩車        髙石 昌魚

戻る家なき生国の墓洗ふ       廣上 正市

ローカル線棚田にぐるり墓地ありて  岡田 臣弘

墓参り隣は子連れ若夫婦       流合研士郎

「鮭」

日を跳ねて波跳ね上げて鮭のぼる   大下 綾子

海の色川の色変へ鮭の群れ      大倉悌志郎

アイヌ語の地名懐かし鮭のぼる    嵐田 啓明

鬼の目を盗んで蹴るや鮭の缶     植村 博明

初鮭や鳥獣川に宴を張る       大熊 万歩

初鮭に生醤油少し老夫婦       徳永 正裕

また落ちてまた跳ね上がる鮭の群れ  星川 佳子

「当季雑詠」

銀輪の縦の一列秋の雲        廣上 正市

石段のひびに一列にらの花      大澤 水牛

虫の音を聞きつつ寝入る浄土かな   須藤 光迷

近隣の婆さま集ふバーの秋      堤 てる夫

 

 

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酔吟会第112回例会

日経俳句会酔吟会は9月13日(土)午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で平成26年度第5回例会(通算112回)を開いた。秋らしい爽やかに晴れた一日で、出席15人、投句参加4人という近来にない大盛況の句会となった。これは番町喜楽会のメンバーである高井百子、玉田春陽子、谷川水馬の3氏が参加(水馬氏は投句)したため。これによって会員減で先細りの印象があった酔吟会が力強く蘇った。

この日の兼題は「秋の声」と「新蕎麦」。句会はいつものように短冊に自作を書いて幹事に提出し、全投句短冊を混ぜてから出席者に均等になるように振り分け、各人が淸記用紙に書き写したものを順繰りに回覧して選句、披講、合評会に移るという伝統的な方式によって粛々と進んだ。

投句5句、選句7句で句会を行った結果、最高点は7点で今泉恂之介さんの「寝返りの背に新涼の来たりけり」。次席は5点で金指正風さんの「新蕎麦や小さん師匠の箸遣ひ」、三席は3点で「小上りに古希ことほぐや走り蕎麦 春陽子」「新蕎麦や旧街道はよく晴れて 反平」「海鼠壁くづれし宿場秋の声 水牛」「走り蕎麦一茶の在所はとの曇り 正裕」「新蕎麦を打つや店継ぐ次男坊 恂之介」「満月や冥土へ続く道明かり 百子」「ハゼ釣りの竿が縁取る東京湾 涸魚」「シャッターの銀天街や秋の声 二堂」「落日の尾瀬かがやけり草紅葉 冷峰」の9句がひしめき合った。以下、2点が15句、1点が33句だった。

《参加者》(出席)今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、藤村詠悟、星川佳子、(投句参加)大石柏人、金指正風、谷川水馬、藤野十三妹。

(記録 大澤水牛)

 

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姨捨山田毎の月吟行を開催

日経俳句会と番町喜楽会は9月7、8両日、「おばすて観月祭」開催中の長野県千曲市の「姨捨の棚田」を訪れ、観月吟行会を催した。参加したのは大澤幹事長以下、両会の有志13人、雨模様の予報をものともせず、長野新幹線を長野駅で乗り換えてJR篠ノ井線姨捨駅に昼過ぎ集合した。一行の気合いが天に通じたのか二日間とも好天、特に満月を翌日に控えた7日夜は鮮やかな「十四夜月」に恵まれた。

夜の観月ツアーのあとはホテルに戻り、連句の会。日中の棚田散策、松尾芭蕉の面影塚のある長楽寺見学など句材たくさんの一日を思い出しながらの一夜となった。翌8日は善光寺参詣に向かう人、姨捨一帯の名所、武水別神社などを巡る人などそれぞれの日程をこなして帰途についた。

吟行句会は恒例のメール句会とし、投句3句、選句4句(天5点、地3点、人2点、入選1点)で得点を集計した。その結果、最高は今泉恂之介さんの「更科に晴れ女来て今日の月」が20点、次席は堤てる夫さんの「善光寺平瞬き涼新た」が16点、三席は玉田春陽子さんの「待宵や駅に味噌屋の小商い」が14点。田中白山さんの「棚田へは行きも帰りも萩の道」が11点、澤井二堂さんの「小さき田の案山子も眺む姨の月」が10点、高瀬大虫さんの「棄つらるる齢越え来て良夜かな」が9点と続いた。

参加者は、嵐田啓明、今泉恂之介、井上庄一郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰。

参加者の代表句は以下の通り。

月待つや棚田の中のさざれ石     嵐田 啓明

名月や鎮む棚田に里光る       井上庄一郎

老僧の芭蕉と座する月見堂      今泉恂之介

あきらめてをりしが棚田を照らす月  大澤 水牛

名月に味噌せんべいの味も添へ    岡田 臣弘

姨捨のスーパームーンや母の影    澤井 二堂

千曲川見下ろす案山子踊りをり    高井 百子

姨捨や案山子田毎に月迎へ      高瀬 大虫

小望月闇のくの字の千曲川      田中 白山

名月や棚田の水の音高く       谷川 水馬

秋の蝶黃金の波の十里ほど      玉田春陽子

姨捨や観月列車二胡の弦       堤 てる夫

夜明け前編まれし里の月今宵     野田 冷峰

(報告 堤てる夫)

 

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番町喜楽会第108回例会

番町喜楽会は9月1日(月)午後6時半、千代田区九段の区立生涯学習館4階会議室で9月例会(通算108回)を開いた。兼題は「二百十日(にひゃくとおか、厄日も可)」「柿(かき)」。出席者13人、投句参加3人、投句総数80句、6句選句で句会を行った。

その結果、最高は5点で、須藤光迷さんの「伊那谷を跨ぎ揺るがぬ天の川」、星川佳子さんの「サーカスのテント波打つ厄日かな」、山口斗詩子さんの「事多き一日終えて柿をむく」の3句が並んだ。続く4点は4句、3点が2句で、結局3点以上獲得の高点句が9句しかなく、しかも兼題句はこのうち僅か3句という珍しい結果になった。以下、2点12句、1点が28句あった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「二百十日」

サーカスのテント波打つ厄日かな     星川 佳子

風音に猫考える厄日かな         今泉 而雲

「柿」

事多き一日終えて柿をむく        山口斗詩子

「雑詠」

伊那谷を跨ぎ揺るがぬ天の川       須藤 光迷

キャンパスに戻りし声や葉鶏頭      岩沢 克恵

係船の一艘減りて島の秋         高瀬 大虫

魂祭往きも還りもみな手ぶら       谷川 水馬

大西日なんと我が脚長きこと       堤 てる夫

指の先天をくすぐる阿波踊        徳永 正裕

参加者(出席)今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)岩沢克恵、高橋楓子、山口斗詩子              (まとめ・堤てる夫)

 

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第31回三四郎句会

三四郎句会の8月例会(第31回)は残暑厳しい21日午後1時半から、東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。今回から宇野木敦子さんが紅一点の初参加。岡本崇、田村豊生、宇佐美論さんは欠席だったが、事前に投句・選句を行った。3人の欠席投句・選句を加えると会員14人全員参加となった。

兼題は「八月」と「朝顔」。吉田正義さんの「八月の棚田見廻る赤とんぼ」が最高の5点を獲得した。吉田さんは俳句を始めて半年足らず、二度目の句会参加で、出席者全員の拍手喝采を受けた。

次いで「八月や海の果て行く雲の列」(今泉恂之介)が4点、「丁寧に新聞畳む広島忌」(岡本崇)、「朝顔や妻の言葉を聞き流し」(宇佐美論)、「八月や自然も歴史も息苦し」(竹居照芳)、「敵機なき夜空を飾る大花火」(田村豊生)など七句が3点を獲得した。(今泉恂之介記録)

 

 

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日経俳句会第131回例会

「暑さ止む」という処暑を目前にして、水銀柱が36℃超を示した8月20日(水)。午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所会議室で、日経俳句会の平成26年度第7回例会(通算131回)が開かれた。猛烈な蒸し暑さの残暑をついて23人もが出席、投句参加10人、投句総数が159句に達する大賑わいとなった。

この夜の兼題は夏の続きを見越しての夏の季語「滴り(したたり)」と「サングラス」。選句7句の結果、最高は廣上正市さんの「旧姓に戻るうわさやサングラス」の10点句だった。次席は大澤水牛さんの「変らぬは蝉の声のみ敗戦忌」の八点句。三席は今泉恂之介さんの「胸中に鬼が一匹サングラス」の6点句。続く5点には5句が並び、4点は10句、3点10句。以下、2点24句、1点33句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「滴り」

隧道の滴るあたり国境        嵐田 啓明

滴りや笑ふがごとき磨崖仏      大澤 水牛

滴りの糸の如くを手に掬ふ      久保田 操

地の霊の泪滴る地下の壕       高瀬 大虫

滴りをタオルに浸す熊野道      徳永 正裕

滴りて残響返す鍾乳洞        流合研士郎

滴りの一滴天地映しをり       流合研士郎

「サングラス」

旧姓に戻るうわさやサングラス    廣上 正市

胸中に鬼が一匹サングラス         今泉恂之介

サングラス恨みつらみもセピア色   大澤 水牛

きのふとは違ふわたしよサングラス  大倉悌志郎

冷やかして買ふ羽目になるサングラス 直井  正

改札に待ちくたびれしサングラス   星川 佳子

にんまりと遠近両用サングラス    金田 靑水

サングラス今日一日の裕次郎     杉山 智宥

「雑詠」

 変らぬは蝉の声のみ敗戦忌       大澤 水牛

癌またも拡がりはじむ鰯雲      須藤 光迷

夏空の藍極まりて暮れ残る      徳永 正裕

勤行の坊主よろけて法師蟬      嵐田 啓明

 縁先に木曾の黒下駄今朝の秋)      今泉恂之介
 秋の闇ハシビロコウの忍者めく       大澤 水牛
 東西の本に囲まれ昼寝かな         大下 綾子

白神をこえて十和田へ星流る     須藤 光迷

半酔に亡友あらはる蝉しぐれ     大沢 反平

馬冷やすごと朝ぶろに身をひたす   金田 靑水

蔓の伸びはたと止まりし秋はじめ   廣上 正市

 

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、藤村詠悟、星川佳子、水口弥生、横井定利(投句参加)大石柏人、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、杉山智宥、高瀬大虫、流合研士郎、藤野十三妹      (まとめ・堤てる夫)

 

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番町喜楽会第107回例会

番町喜楽会は、梅雨明けの強い日差しが照りつける8月2日(土)午後、千代田区二番町の番町ハイム会議室で平成26年第8回例会(通算107回)を開いた。兼題は「残暑(ざんしょ)」「西瓜(すいか)」で投句参加1人を含め14人から69句の投句があった。6句選句で句会を進めた結果、最高は谷川水馬さんの「敗戦忌風に三線鳴る夜かな」の7点句。次席は星川佳子さんの「父の字の細くなりたる残暑かな」の6点句。三席は今泉而雲さんの「西瓜割る親の遺産を割るごとく」の5点句。それに玉田春陽子さんの「あんぱんの臍の凹みも残暑かな」の4点句が続いた。3点は5句、以下2点14句、1点24句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「残暑」

父の字の細くなりたる残暑かな                   星川   佳子

あんぱんの臍の凹みも残暑かな                   玉田春陽子

老ひ猫の土間に腹這ふ残暑かな                   大澤   水牛

托鉢の焼けた素足や秋暑し                          高橋   楓子

「西瓜」

西瓜割る親の遺産を割るごとく                   今泉 而雲

もらったはいいが西瓜の持ち重り               大澤   水牛

「雑詠」

敗戦忌風に三線鳴る夜かな                          谷川    水馬

神楽坂浴衣の似合ふ雨上がり                      高瀬    大虫

草原は日光キスゲ大入日                             前島   巌水

 

【参加者】(出席)今泉恂之介、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰、星川佳子、前島厳水、(投句参加)大下綾子、山口斗詩子、(選句参加)徳永正裕

(まとめ 堤てる夫)

 

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日経俳句会第130回例会

日経俳句会は、大暑の日の7月23日(水)、平成26年第6回例会(通算130回)を内神田・日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「大暑(たいしょ)」「金魚(きんぎょ)」で、熱暑をついて24人が出席、10人が投句参加した。投句総数は164句、7句選句の結果、最高は大倉悌志郎さんの「出目金に留守番頼み落語会」の9点1句。次席8点は須藤光迷さんの「縁日の金魚と五年ともにあり」と、廣上正市さんの「遠雷や自画像多き無言館」の2句。三席は6点で、大澤水牛さんの「肋骨の折れて大暑のコルセット」と、堤てる夫さんの「雨蛙畳の上に居る不思議」の2句。

次いで5点句には「深刻な話をいなす金魚かな 大下綾子」、「水打てば大暑の八百屋生き生きと 金田青水」、「山門の仁王大暑を吐き続け 直井正」、「石狩川(いしかり)の蛇行ここより雲の峰 正市」、「糸杉の絵のゆらぎをる大暑かな 星川佳子」の5句。続く4点は3句、3点12句、2点25句、1点49句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「大暑」

肋骨の折れて大暑のコルセット    大澤 水牛

水打てば大暑の八百屋生き生きと   金田 青水

山門の仁王大暑を吐き続け      直井  正

糸杉の絵のゆらぎをる大暑かな    星川 佳子

蛇口より先ずは湯の出る大暑かな   植村 博明

錆色の線路のゆがむ大暑かな     大熊 万歩

諍ひのなほ続きゐる大暑かな     高石 昌魚

焼き鳥屋耳朶まで赤き大暑かな    植村 博明

動かないメタボの鯉の大暑かな    鈴木 好夫

山の神と言ふバス停あり大暑     徳永 正裕

撒き水に蝿の寄り来る大暑かな    水口 弥生

「金魚」

出目金に留守番頼み落語会      大倉悌志郎

縁日の金魚と五年ともにあり     須藤 光迷

深刻な話をいなす金魚かな      大下 綾子

金魚に名つけて挨拶母の朝      嵐田 啓明

帰宅して金魚に声をかけてをり    今泉恂之介

揺れる藻に金魚口づけ泡一つ     大熊 万歩

嫁がせて金魚二匹と過ごす日々    大沢 反平

水替へて金魚の踊るスロージャズ   高瀬 大虫

うなじ見せ金魚掬ふも女かな     徳永 正裕

「雑詠」

遠雷や自画像多き無言館       廣上 正市

雨蛙畳の上に居る不思議       堤 てる夫

石狩川の蛇行ここより雲の峰     廣上 正市

うす紅はいのちの色よ古代蓮     田中 頼子

はまなすの砂丘登るや海の青     徳永 正裕

 

参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、藤村詠悟、星川佳子、水口弥生、村田佳代、横井定利(投句参加)池村実千代、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、田中頼子、流合研士郎   (まとめ・堤てる夫)

 

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酔吟会第111回例会

酔吟会は7月12日(土)午後1時から鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で平成26年度第4回例会(通算111回)を開いた。梅雨台風8号が西日本に豪雨禍をもたらし、東日本には猛暑を置いて去った翌日とあって、湿度が高い上に気温が30℃を超え、大変な蒸し暑さだった。

それでも今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、徳永正裕、藤村詠悟、野田冷峰の11名が出席する好成績。大石柏人、金指正風、堤てる夫、藤野十三妹、星川佳子の5名が投句参加した。

兼題は「梅雨明」と「鰻(蒲焼も可能)」。投句5句、選句7句で句会を行った結果、最高点は5点で、「うなぎ待つ瓜漬で待つ小半刻 大澤水牛」1句。続く4点は堤てる夫さんの「窓枠に天下窺ふ青蛙」と金指正風さんの「世に残す句ひとつなし半夏生」の2句だった。三席3点句は大石柏人さん「梅雨明けや書『特選』のハガキ来る」と片野涸魚さんの「あの寺もこの寺もまたあぢさゐ寺」の2句が並んだ。以下、2点14句、1点が26句もひしめき合った。兼題別の2点以上獲得句は次の通り。

「梅雨明」

梅雨明や書「特選」のハガキ来る    大石 柏人

梅雨明けや龍馬のにらむ桂浜      星川 佳子

梅雨明けの目にささりくる白きビル   星川 佳子

家中の窓開け放つつゆの明け      久保田 操

梅雨明けや孫の襁褓もとれたるぞ    岡田 臣弘

梅雨明はいつのことかと買ふ日傘    藤野十三妹

梅雨明や飛鳥古仏の頬光る       徳永 正裕

「鰻」または「蒲焼」

うなぎ待つ瓜漬で待つ小半刻      大澤 水牛

憂しと云ひ嬉しと云ひて鰻飯      大澤 水牛

鰻焼く香り砂町銀座かな        星川 佳子

行く末の諸事はさておき鰻飯      大沢 反平

「雑詠」

窓枠に天下窺ふ青蛙          堤 てる夫

世に残す句ひとつなし半夏生      金指 正風

あの寺もこの寺もまたあぢさゐ寺    片野 涸魚

今はただ自然に生きむ山法師      片野 涸魚

憲法九条絶滅危惧種になりし夏     金指 正風

乗り過ごし鳩と仔猫と梅雨の駅     大澤 水牛

ブロックの風の穴から額紫陽花     堤 てる夫

ザック・ジャパンとんだ鬼味噌夏の夢  藤野十三妹

(まとめ 大澤水牛)

 

 

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