三四郎句会、六月例会開く

三四郎句会の平成27年6月例会(通算36回)は、6月18日午後1時半から東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。出席は11人で、岡本崇さん、深瀬久敬さんが欠席投句・選句、篠田義彦さんは欠席した。

兼題は「青田」と「合歓の花」で、選句の結果、河村有弘さんの「バス降りてふる里匂う青田かな」が6点を獲得して最高点。印南さんの「かのひとの嫁ぎし家や合歓の花」が5点、宇野木敦子さんの「青田風しばしまどろむ畳かな」が4点で続いた。今回は全投句65句中の40句に点が散ったためか、6点、5点、4点が各1句、3点句が5句に留まった。3点以上の高点句は以下の通り。

「青田」

バス降りてふる里匂う青田かな       河村 有弘

青田風しばしまどろむ畳かな        宇野木敦子

山蒼し空また碧く青田在り         河村 有弘

チンドンの列ねり進む青田なか       深瀬 久敬

老農の小手かざし見る青田かな       深瀬 久敬

「合歓の花」

かのひとの嫁ぎし家や合歓の花       印南  進

いつか往く夢の細道合歓の花        今泉恂之介

「雑詠」

父の日や書斎に眠る鉄亜鈴         岡本  崇

(まとめ 今泉恂之介)

 

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日経俳句会平成27年度上期合同句会

日経俳句会と酔吟会は6月17日(水)午後6時半から東京・内神田の日経広告研究所会議室(MIFビル)で、平成27年度上期合同句会(通算20回)を開催した。兼題は「入梅(にゅうばい)」と「梅雨一般」。出席22人、投句参加15人で、予め3句投句した計111句の選句表を基に事前選句した。

当夜の合同句会は投句選句の取りまとめを一手に引き受けてくれた嵐田双歩幹事による結果発表でスタート。その結果、大倉悌志郎さんの「日本橋ふと潮匂ふ梅雨入りかな」が最高の10点句。次席は玉田春陽子さんの「マネキンの担がれてゆく梅雨の入」の8点句。三席7点は双歩さんの「入梅や島影淡き瀬戸の海」、谷川水馬さんの「叢雲のなごり茜や梅雨に入る」、悌志郎さんの「冷奴吉野の杉の箸そろへ」の3句が並んだ。

続く6点は、廣上正市さんの「船の名を店の名にして古簾」の1句。5点は、大下綾子さんの「記憶よりくすみし校舎梅雨に入る」、金田青水さんの「入梅や少年のひげ薄つすらと」、澤井二堂さんの「蓮池の葉の大海や梅雨に入る」の3句。以下4点は7句、3点12句、2点12句、1点30句だった。

この合同句会に、昨年番町喜楽会から酔吟会に加わった春陽子、水馬両氏が初出席し、次席、三席を占める鮮やかなデビユーを飾った。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「入梅」

日本橋ふと潮匂ふ梅雨入りかな       大倉悌志郎

マネキンの担がれてゆく梅雨の入      玉田春陽子

入梅や島影淡き瀬戸の海          嵐田 双歩

叢雲のなごり茜や梅雨に入る        谷川 水馬

記憶よりくすみし校舎梅雨に入る      大下 綾子

入梅や少年のひげ薄つすらと        金田 青水

蓮池の葉の大海や梅雨に入る        澤井 二堂

楽団の音のそろはぬ梅雨入りかな      大下 綾子

入梅の雲海抜けて富士の嶺         高瀬 大虫

連山の墨絵となりぬ入梅かな        谷川 水馬

焦げ飯を醤油で握り梅雨入りかな      玉田春陽子

「梅雨一般」

梅雨寒やまたも乱るる衣裳棚        高石 昌魚

梅雨走る都電の軋む飛鳥山         岡田 臣弘

男梅雨坂東太郎ひろごりぬ         野田 冷峰

梅雨ごもる人の心の深き井戸        藤野十三妹

「雑詠」

冷奴吉野の杉の箸そろへ          大倉悌志郎

船の名を店の名にして古簾         廣上 正市

村境越えて十里の青田かな         今泉恂之介

まなうらに光跡消えぬ蛍かな        大下 綾子

蚯蚓喰ふすずめの爪の野生かな       金田 青水

夏空に放鳥の朱鷺はばたけり        久保田 操

そぞろゆく龍馬の海や夏の月        谷川 水馬

明け方の黄色い喇叭花胡瓜         大熊 万歩

飛び立ちてすぐに電線燕の子        大熊 万歩

紫陽花や移ろふ藍の今淡し         久保田 操

機を織る音すこやかに夏の月        須藤 光迷

紫陽花を背の六地蔵頬濡れる        高石 昌魚

噴水の眠りし後の池袋           横井 定利

参加者(出席)嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高瀬大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、流合研士郎、藤村詠悟、星川佳子、横井定利。

(投句参加)大石柏人、大熊万歩、岡田臣弘、片野涸魚、加藤明男、金田青水、久保田操、高井百子、高石昌魚、高橋ヲブラダ、直井正、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、村田佳代。

(まとめ・てる夫)

 

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番町喜楽会第117回例会

番町喜楽会は6月6日(土)午後6時、東京・九段下の千代田区立生涯学習会館4階学習室で、6月例会(通算117回)を開いた。兼題は「扇子(せんす)」「蟇(ひきがへる)」で、投句参加を含む18人から88句の投句があった。6句選句の結果、最高は6点で、高瀬大虫さんの「汗飛ばすロマの女の黒扇」と、廣田可升さんの「日暮れては蟇のこゑ聞く新任地」の2句が並んだ。次席は4点で、須藤光迷さんの「扇子買う写楽北斎見比べて」と、星川佳子さんの「道わたる蟇に停車の縄電車」の2句だった。

続く3点は6句で、結局この日は3点以上の高点句が10句にとどまった。これに対して2点が20句、1点26句の計46句と過半数を超え、票が完全に分散した。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「扇子」

汗飛ばすロマの女の黒扇     高瀬 大虫

扇子買う写楽北斎見比べて    須藤 光迷

投了の所作美しき扇子かな    嵐田 双歩

絵扇や言葉の端に京訛      玉田春陽子

かをり来る扇の風に裏おもて   玉田春陽子

「蟇」

日暮れては蟇のこゑ聞く新任地  廣田 可升

道わたる蟇に停車の縄電車    星川 佳子

蟇鳴けば旧家冷たき三和土かな  嵐田 双歩

がまがへる宇宙の闇に種の起源  徳永 正裕

イボ蟇幼きころの綽名なり    野田 冷峰

参加者(出席)嵐田双歩、井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、廣田可升、星川佳子、前島巌水(投句参加)大下綾子、高瀬大虫、野田冷峰、山口斗詩子       (まとめ・堤てる夫)

 

 

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日経俳句会第139回例会

日経俳句会は5月20日(水)午後6時半、千代田区内神田の日経広告研究所(MIFビル)で、平成27年度第5回例会(通算139回)を開いた。兼題は「夏」「柿若葉」で、出席20人、投句参加16人から計170句の投句があった。7句選句の結果、最高は6点で、大下綾子さんの「割箸を割れば木の香のひらく夏」と、水口弥生さんの「朽ちゆくもいま柿若葉露地の家」の2句が並んだ。

次席は5点、大沢反平さんの「白雲を乗せて田水の夏初め」、岡田臣弘さんの「歌舞伎町ゴジラの目剥く夏の宵」、堤てる夫さんの「炎帝や雲浅間へと差し掛かる」、徳永正裕さんの「冷製と太く書かれし夏メニュー」、弥生さんの「黒揚羽即かず離れず地蔵まで」と5句が勢揃い。続く4点は6句、3点14句、2点28句、1点35句だった。

この日、親族のご不幸で句会欠席を余儀なくされた大澤水牛幹事長は、日経俳句会創始以来の連続出席が途切れた。代役の嵐田双歩幹事が句会進行をそつなく勤めた。新規入会の自由会員、溝口知宏さん(みぞぐち・ともひろ、日経編集局整理部、平成12年入社)が投句、選句に初参加した。4月句会に再登場した和泉田守さんが投句・選句に完全復帰し、雑詠の「通し矢の如く飛燕の空気裂く」で3点獲得した。兼題別高点句(3点以上)は次の通り。

「夏」

割箸を割れば木の香のひらく夏     大下 綾子

白雲を乗せて田水の夏初め       大沢 反平

歌舞伎町ゴジラの目剥く夏の宵     岡田 臣弘

冷製と太く書かれし夏メニュー     徳永 正裕

藍染の帽子がサイン兄の夏       金田 青水

夏来るメタセコイアの高きかな     廣上 正市

根津谷中千駄木廻り父の夏       横井 定利

犬の声子等の大声路地の夏       横井 定利

あの夏の国民学校二年生        今泉恂之介

納豆の今日は大粒夏は来ぬ       大熊 万歩

夏の日を息詰め集中治療室       大澤 水牛

破裂音飛び交う初夏の免税店      須藤 光迷

「柿若葉」

朽ちゆくもいま柿若葉露地の家     水口 弥生

家深くサックス聞こゆ柿若葉      大沢 反平

嬰児の手のふくらみや柿若葉      高石 昌魚

詰め襟の坊主頭や柿若葉        池村実千代

柿若葉日ごとに変る朝の彩       井上庄一郎

柿若葉蔵の白壁染めるほど       大倉悌志郎

牛居らぬ牛舎となれど柿若葉      大倉悌志郎

柿若葉校舎の隅の逆上がり       岡田 臣弘

柿若葉風に揺れおり淡き恋       野田 冷峰

地の水を縷々と吸い上げ柿若葉     流合研士郎

柿若葉窓全部開け昼の風呂       横井 定利

「雑詠」

炎帝や雲浅間へと差し掛かる      堤 てる夫

黒揚羽即かず離れず地蔵まで      水口 弥生

通し矢の如く飛燕の空気裂く      和泉田 守

インパール烈士の墓碑や仏桑花     岡田 臣弘

参加者(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、流合研士郎、藤村詠悟、星川佳子、横井定利。(投句参加)池村実千代、和泉田守、大石柏人、大熊万歩、大澤水牛、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、鈴木好夫、高橋ヲブラダ、廣上正市、藤野十三妹、溝口知宏、水口弥生、村田佳代。

(まとめ・堤てる夫)

 

 

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番町喜楽会第116回例会

番町喜楽会は5月11日(月)午後6時半から千代田区九段下の生涯学習館会議室で第116回例会を開いた。兼題は「浴衣」と「新樹」で、投句5句選句6句で句会を行った結果、最高点は7点で星川佳子さんの「潮騒を遠くきく夜の浴衣かな」の一句だった。次席の6点は高瀬大虫さんの「パナマ帽つまみ会釈の白絣」。三席は4点で「肩車して鯉幟つかませり 光迷」「古民家を描く人に降る桐の花 光迷」「城壁の狭間くぐるや新樹光 春陽子」「子等の声新樹のなかの秘密基地 冷峰」「初浴衣見返り美人のポーズして 斗詩子」の5句が並んだ。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「浴衣」

潮騒を遠くきく夜の浴衣かな      星川 佳子

初浴衣見返り美人のポーズして     山口斗詩子

湯の町に異国の言葉宿浴衣       嵐田 双歩

新しき浴衣地裁ちぬざっくりと     岩沢 克恵

殻破ってみたき夜あり初浴衣      廣田 可升

「新樹」

城壁の狭間くぐるや新樹光       玉田春陽子

子等の声新樹のなかの秘密基地     野田 冷峰

吹き渡る新樹の風や千枚田       谷川 水馬

新樹揺れ郵便バイク走り来る      徳永 正裕

「雑詠」

パナマ帽つまみ会釈の白絣       高瀬 大虫

肩車して鯉幟つかませり        須藤 光迷

古民家を描く人に降る桐の花      須藤 光迷

薫風やローカル線の新車両       堤 てる夫

(まとめ 大澤水牛)

 

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酔吟会第116回例会

酔吟会は5月9日(土)午後1時から千代田区内神田の日経広告研究所会議室で平成27年第3回例会(通算116回)を開催した。兼題は「水馬(みずすまし)」「新茶(しんちゃ)」で、ビルの外の神田祭の喧騒を耳にしながら夏模様の席。メンバー17人からの投句は85句。7句選句の結果、最高は、高井百子さんの「畦塗りのみな整ひて水走る」と、谷川水馬さんの「新茶摘むかつて特攻滑走路」の6点2句だった。次席は百子さんの「新茶売る狭山の露店赤たすき」の5点1句。次いで4点は、大沢反平さんの「吾子らにも昇給の報新茶買う」「水馬(あめんぼう)三寸進んで考える」の2句と、玉田春陽子さんの「あめんぼや仲良くみえて恋敵」の計3句。続く3点は6句、以下2点15句、1点21句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「水馬」

水馬(あめんぼう)三寸進んで考える  大沢 反平

あめんぼや仲良くみえて恋敵      玉田春陽子

まひまひの見られていると早回り    大澤 水牛

水の面雲かき分けしあめんぼう     久保田 操

悠久の富士の湧き池みずすまし     徳永 正裕

木もれ日と影ふみ遊びみずすまし    星川 佳子

「新茶」

新茶つむかつての特攻滑走路      谷川 水馬

新茶売る狭山の露店赤たすき      高井 百子

吾子らにも昇給の報新茶買う      大沢 反平

語り合ひすくなき二人新茶汲む     堤 てる夫

「雑詠」

畦塗りのみな整ひて水走る       高井 百子

木もれ日と影ふみ遊びみずすまし    星川 佳子

参加者(出席)今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、藤村詠悟(投句参加)久保田操、野田冷峰、藤野十三妹        (まとめ・堤てる夫)

 

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三四郎句会第35回例会

三四郎句会の平成27年4月例会(通算35回)は、4月16日午後1時半から東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。欠席投句・選句の岡本崇さん、渡邊信さんも含めれば会員14人全員の参加となった。

この日の兼題は「春愁」と「囀」で、選句の結果、最高点の5点には渡邊信さんの「春愁や一人住まいの洗い皿」と田村豊生さんの「囀りや子らは明日へと駆け出して」が並んだ。次いで宇佐美論さんの「囀りに仁王立ちする子猫かな」「春愁や踏みたる草の深くして」の両句と印南進さんの「行く春やランドセル背に馴染みけり」が4点で続いた。3点以上の句は以下の通り。

「春愁」

春愁や一人住まいの洗い皿       渡邊  信

春愁や踏みたる草の深くして      宇佐美 諭

ぼんぼりの揺れる水面や春愁う     印南  進

春愁をまとひ京町暮れ泥む       河村 有弘

春愁や曲りしままの老の背       田村 豊生

春愁と深爪共に切り捨てて       渡邊  信

「囀」

囀りや子らは明日へと駆け出して    田村 豊生

囀りに仁王立ちする子猫かな      宇佐美 諭

さえずりて又さえずりて飛び立ちぬ   石黒 賢一

囀りを朝陽と森が抱きしめる      河村 有弘

さえずりの空に響きて沁み入れり    深瀬 久敬

三陸に野鳥さえずる鎮魂歌       吉田 正義

「雑詠」

行く春やランドセル背に馴染みけり   印南  進

澄み渡る空のしじまや花大根      岡本  崇

(まとめ 今泉恂之介)

 

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NPO法人双牛舎第8回総会・俳句大会

俳句振興NPO法人双牛舎は4月25日(土)正午から千代田区二番町の東京グリーンパレス「レストラン・ジャルダン」で第8回総会と第7回俳句大会を開催した。

総会には29名が出席、今泉恂之介代表が「双牛舎は平成26年度、皆様のご協力を得て、日経俳句会、番町喜楽会、三四郎句会の運営とともに、ブログ『みんなの俳句』の発信、俳句関連叢書を中心とした出版活動などを順調に行うことができました。今年も引き続き各事業を進めて行きます」と開会挨拶した。その後日経俳句会の長老髙石昌魚さんの音頭で乾杯、昼食を取りながらの懇親会を賑やかに繰り広げた。

席上、やはり日経俳句会の長老の一人大石柏人さんが「日経俳句会月報」に連載中の「兼題解説(水牛歳時記)」の酔吟会句会の兼題をまとめて作成した和綴本「水牛歳時記」を回覧し、「このユニークな季語研究をちゃんとした『水牛歳時記』にまとめ、出版したらどうか」と提案、出席者の盛大な拍手を浴びた。

続いて恒例のイベント「双牛舎俳句大会」が高井百子、谷川水馬両幹事の司会進行の下に始まった。まず、昨年の入賞句9句の作者9人に書家赤池溪舟師揮毫の短冊を贈る贈賞式が行われた。

双牛舎俳句大会は第2回総会から始まったもので、今年が第7回。出席者29名に欠席投句19名を加えて、参加者は48名、投句総数96句となった。

兼題「長閑(のどか)」1句と雑詠1句を事前投句し、出席者は予め送られた選句表をもとに5句選んで持ち寄り、会場に張り出された大きな選句表に赤丸ラベルを貼り付けた。一方、欠席投句・選句者から送られたものは幹事が代行してラベルを貼り付け、これを集計して入賞句を決定した。その結果、最高点は13点で三四郎句会の田村豊生さんの「母白寿昭和を駆けていま長閑」が天賞を射止めた。次点の「地」賞は8点で「野の色のここに極まる草の餅 今泉恂之介」と「のどかさや草食む馬の隠岐の島 宇野木敦子」の2句、三席「人」賞は7点で「長閑さやライオンの子の大欠伸 髙石昌魚」「ひとひらの行きつくところ花筏 田中白山」「パンダ舎の隣のどけし象の尻 谷川水馬」「新じゃがのホコと崩れる暮れの春 徳永正裕」の4句が並んだ。5点以上獲得し入選した句は次の通り。

氏名の後の丸カッコ内の「日」は日経俳句会所属、「番」は番町喜楽会、「三」は三四郎句会。

『長閑』

母白寿昭和を駆けていま長閑     田村 豊生(三)

のどかさや草食む馬の隠岐の島    宇野木敦子(三)

長閑さやライオンの子の大欠伸    髙石 昌魚(日)

長閑なり添ひ寝の親も寝息かな    印南  進(三)

『雑詠』

野の色のここに極まる草の餅     今泉恂之介(日)

ひとひらの行きつくところ花筏    田中 白山(番)

パンダ舎の隣のどけし象の尻     谷川 水馬(番)

新じゃがのホコと崩れる暮れの春   徳永 正裕(日)

四月馬鹿孫の言う嘘透き通る     高井 百子(番)

のどかなりハエの足もむ音きこえ   石黒 賢一(三)

のどけしや駅弁膝にローカル線    大下 綾子(日)

のどかさや亀行列の甲羅干し     片野 涸魚(日)

花びらの空飛び地這う万華鏡     深瀬 久敬(三)

(まとめ 大澤水牛)

 

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日経俳句会第138回例会

日経俳句会は4月15日(水)午後6時半、千代田区内神田の日経広告研究所(MIFビル)で、平成27年第4回例会(通算138回)を開いた。兼題は「春の宵(はるのよい)」「燕(つばめ)」で、参加者34人(うち投句参加10人)から164句が寄せられた。

7句選句の結果、最高は廣上正市さんの「種蒔きの風より低くかがみたり」の9点1句。次席は加藤明男さんの「園児らのでんぐり返し山笑ふ」の7点句。三席6点は岡田臣弘さんの「万歩計走りたくなる春の宵」と、徳永正裕さんの「北アより水走り来て山葵沢」の2句が並んだ。続く5点は、大澤水牛さんの「桜しべ降るふる訃報つれて降る」、加藤明男さんの「初燕わが学舎は朽ちしまま」、金田青水さんの「嫁といふむすめに出会ふ春の宵」の3句。次いで4点は8句、3点18句を数えた。以下2点16句、1点51句。

桜前線北上中のこの日に嬉しいニュース。しばらく「句会休場」していた和泉田守元事務局長が投句参加、復帰宣言した。また長老大石柏人さんが久方の投句で「老楽やうつらうつらと春の宵」の3点句で気を吐いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「春の宵」

万歩計走りたくなる春の宵      岡田 臣弘

嫁といふむすめに出会ふ春の宵    金田 青水

膝の猫動こうとせぬ春の宵      大澤 水牛

落とし物家まで届く春の宵      杉山 智宥

春の宵さまざまな音石畳       横井 定利

女湯の暖簾は赤し春の宵       嵐田 双歩

遠来の阿弥陀薄目や春の宵      水口 弥生

老楽やうつらうつらと春の宵     大石 柏人

もう少し歩きましょうか春の宵    大倉悌志郎

春の宵ショパン流るる西麻布     流合研士郎

鯛飯の鍋の吐息や春の宵       須藤 光迷

これでもう五度目の欠伸春の宵    加藤 明男

春の宵イカ飯匂う自由席       杉山 智宥

「燕」

初燕わが学舎は朽ちしまま      加藤 明男

店仕舞いせし煙草屋に燕来る     須藤 光迷

無人駅改札抜けて燕来る       植村 博明

つばめ翔ぶ高き石垣青葉城      嵐田 双歩

現役の三連水車初つばめ       嵐田 双歩

シャッターは降ろせないんです燕来て 杉山 智宥

一閃の燕返しに羽虫消ゆ       高瀬 大虫

蝙蝠と見えしは燕夕惑ひ       徳永 正裕

宙蹴って変幻自在燕舞ふ       直井  正

工場のぎざぎざの屋根燕来る     星川 佳子

燕見た絵手紙文字の翻る       水口 弥生

「雑詠」

種蒔きの風より低くかがみたり    廣上 正市

園児らのでんぐり返し山笑ふ     加藤 明男

北アより水走り来て山葵沢      徳永 正裕

桜しべ降るふる訃報つれて降る    大澤 水牛

八重桜女相撲のごとく咲く      高橋ヲブラダ

花々々淋し淋しといふ村に      大沢 反平

ざれあひて首絞めあひて初登校    金田 青水

長々と八百八橋の花筏        高橋ヲブラダ

爛漫のあだ花悲し村廃る       高瀬 大虫

参加者(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、藤村詠悟、星川佳子、水口弥生、横井定利(投句参加)池村実千代、和泉田守、植村博明、大石柏人、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ   (まとめ・堤てる夫)

 

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番町喜楽会寺家村桜吟行と4月例会

番町喜楽会は4月11日(土)横浜市青葉区にある寺家ふるさと村を巡る吟行会を開催、近くに新築された谷川水馬さんのお宅で句会を行った。残念ながら桜はほとんど散っており、朝方まで雨が残るはっきりしない天気だったが、梨の花が真っ盛り、山吹、菜の花、諸葛菜をはじめ、イヌノフグリ、カラスノエンドウ、踊り子草、ホトケノザ、タンポポなど野の花が咲き乱れる田園を参加16人の大部隊が3時間近く歩き回った。

谷川邸は昨年新築なったばかり。まずこの日は即興で2句ずつ詠み、投句、それを水馬さんが片端からパソコンに入力して選句表を作成。弁当を食べ、銘酒を酌み交わしながら賑やかな句会を行った。一行を歓迎しておもてなし下さった谷川夫人にも選句には参加していただいた。この即興句会の最高点は8点で「山吹のひとむら映えて雨上る 廣田可升」と「花の名を尋ねつ春の小川かな 高瀬大虫」の2句。ついで7点句は「紀の国の才女を妻に春の家 田中白山」と「傘に靴に落花をそへて谷戸の道 星川佳子」の2句が並んだ。5点以上得た句は次の通り。

山吹のひとむら映えて雨上る        廣田 可升

花の名を尋ねつ春の小川かな        高瀬 大虫

紀の国の才女を妻に春の家         田中 白山

傘に靴に落花をそへて谷戸の道       星川 佳子

へらの浮子(うき)ぴくりともせず花は葉に 今泉 而雲

花散らす雨の水輪やむじな池        玉田春陽子

花むしろ濡れてはりつく石畳        高瀬 大虫

六甫大人ちょこなんとあり仏の座      今泉 而雲

寺家村へ歩み出せば初音かな        大下 綾子

菜の花に散り込む谷戸の桜かな       大澤 水牛

〈メール句会〉

吟行句会を終えた後、「番町喜楽会4月例会」として、改めてこの日の吟行句を中心に、兼題「花(桜でも可)」の句と雑詠を3句以上5句以内幹事に送信する「メール句会」も行った。これには吟行に参加しなかった山口斗詩子さんも加わった。

この句会の最高点は5点で、「大根の花真白なる雨上がり 而雲」「おうおうと花の奥より友の声 水牛」「プードルも尾っぽふりふり花の宴 水馬」「大皿の桜餅待つ新居かな 佳子」の4句並んだ。3点以上獲得した句は以下の通り。

「花(または桜)」

おうおうと花の奥より友の声     大澤 水牛

プードルも尾っぽふりふり花の宴   谷川 水馬

花散りてなほ山肌のさくら色     今泉 而雲

四年経て三春桜の底ぢから      野田 冷峰

薄日射す村は落花の中にあり     須藤 光迷

花屑の中に紛れし篦の浮子(うき)  田中 白山

「雑詠」

大根の花真白なる雨上がり      今泉 而雲

大皿の桜餅待つ新居かな       星川 佳子

芽吹きして青葉台とはよき地名    今泉 而雲

君はいま柳絮の街を歩むらん     大澤 水牛

谷戸囲む森の中より初音かな     田中 白山

谷戸に咲くこれがほんとの犬ふぐり  大下 綾子

菜の花や大曽根の姓多き里      今泉 而雲

一畝を耕し豆を咲かせけり      大下 綾子

送電線のっそりまたぐ春の月     須藤 光迷

 

【参加者】嵐田双歩、井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、大下綾子、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬(幹事)、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島厳水、(メール句会参加)山口斗詩子。

(まとめ 大澤水牛)

 

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