日経俳句会上期合同句会

35人参加、「夏至」を詠む

一席愉里句「クイズ」が8点、二席に実千代句と阿猿句

日経俳句会は6月18日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で上期合同句会(通算40回)を開いた。梅雨入り後まもなく梅雨前線が消滅し、梅雨明けしたかのような晴天が続き、この日も朝から30℃を超す暑い一日。合同句会とあって、月例会ではあまり顔を合わせる機会が少ないメンバーを含め15人が出席、合評会はもとより、続く暑気払いを含め俳句談義に花が咲いた。兼題の「夏至」をはじめ35人から103句の投句があり、全員事前選句(5句選)の結果、向井愉里さんの8点句「新聞のクイズ解く母夏至の雨」が堂々の一席。次いで二席には池村実千代さんの「一日を農婦になりて梅仕事」と中嶋阿猿さんの「再会は言葉少なく水羊羹」がそれぞれ7点で並び、一席と二席の上位3人を女性が占めた。三席は6点で、大澤水牛さんの「馬穴七杯梅の実汝如何せん」と玉田春陽子さんの「水鉄砲笑ひの中に放ちけり」が入り、ベテラン2人が実力をみせた。以下、5点5句、4点7句、3点12句、2点14句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「夏至」

新聞のクイズ解く母夏至の雨             向井 愉里

夏至の日や路上ライブのアンコール          植村 方円

休耕の田の甦り夏至の雨               中村 迷哲

乗り継ぎ便待つ空港や夏至白夜            廣田 可升

すずらん燈点いても暮れぬ夏至の宵          中沢 豆乳

分けつの稲をはぐくむ夏至の雨            金田 青水

夏至の日や昼酒重ね二日酔い             工藤 静舟

三振もリハビリも華日天心              杉山 三薬

ペンギンさん南極の夏至どんなです          須藤 光迷

夏至が来てまたあの頃が遠くなり           中嶋 阿猿

石垣も天守も夏至の雨の中              廣田 可升

フラミンゴピンクの空の暮れて夏至          星川 水兎

モネの絵の水の煌めき夏至近し            溝口戸無広

「当季雑詠」

一日を農婦になりて梅仕事              池村実千代

再会は言葉少なく水羊羹               中嶋 阿猿

馬穴七杯梅の実汝如何せん              大澤 水牛

水鉄砲笑ひの中に放ちけり              玉田春陽子

どくだみの澄まして咲くや散歩道           大澤 水牛

父の日やギフト売場の小ささよ            篠田  朗

古古米に陽の当たりたる走り梅雨           杉山 三薬

八ヶ岳にゴジラむくむく入道雲            中沢 豆乳

夏星座不滅の3番輝ける               中村 迷哲

百年の孤独半ばに梅雨に入る             廣田 可升

猫達も夫も逝きし水無月よ              藤野十三妹

紫陽花の色を深める小雨かな             溝口戸無広

兄の手を引いて引かれて夏祭             加藤 明生

八十年居座る基地や沖縄忌              須藤 光迷

露天湯に木桶の音や万緑裡              廣上 正市

目の前に異世界のあり熱帯魚             向井 愉里

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、植村方円、大澤水牛、坂部富士子、澤井二堂(選句のみ参加)、篠田朗、杉山三薬、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、溝口戸無広、向井愉里。【投句参加21人】伊藤誠一、伊藤健史、岩田千虎、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、金田青水、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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菖蒲園吟行・向島百花園で句会

参加8人で即日投句・合評講評、打上げは町屋の名物蕎麦

梅雨入りまもない6月14日、堀切菖蒲園と向島百花園をめぐる菖蒲吟行を実施した。雨雲が全国で勢いを増すなか、アメニモマケズと参加したのは嵐田双歩、池村実千代、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、澤井二堂、向井愉里、杉山三薬の8人。

午前11時、京成線堀切菖蒲園駅に集合、菖蒲祭りの旗がはためき、紫陽花の咲くクネクネ道を10分ほど歩いて堀切菖蒲園に到着。大変な人出だ。さして広くない園内だが、花菖蒲が今を盛りと何千本。花の種類の多さ。色、形さまざまに刺激を受けたか。午後からの句会では産地や名称にちなむ句が多く出された。

堀切菖蒲園駅に戻り、そこから京成関谷、東武線牛田駅を経由して東武線東向島に向かう。この辺り隅田川と荒川に挟まれた、典型的な下町風景の残るところ。東向島駅近くのインド料理店で昼食。食後10分ほど歩いて向島百花園に到着。園内を散策する人、貸し座敷で一休みの人、2時半から句会開始。今回の吟行は、投句、選句、講評をすべて当日中にすます方式にした。投句2句、選句4句。合評会では高点を逃した句にも、多くの感想、質問が寄せられ、通常の句会にはない臨場感のある句会になった。総括を求められた水牛さんからは「今日はいい句が揃い、充実した討論も出来た。今後ともこういう形式の吟行をやろう。3人以上集まれば吟行だ」と全員に喝を入れられた。

句会終え、全員タクシーで本日の反省会会場、町屋の蕎麦屋「如月徳」へ。上質のつまみと旨い蕎麦で、和やかに一日を締め括った。後で分かったのだが、富士子さんが、てるてる坊主を三つも吊るして今日の晴れを願ってくれていた。その霊験あらたか、夕方まで傘をさすことなく行動できた。参加8人のこの日の代表句は次の通り。

花の名は銘酒に似たり菖蒲園      嵐田 双歩

堀切の菖蒲愛でるや句友あり      池村実千代

白菖蒲凛とその名も香炉峰       大澤 水牛

咲き終へし花がら摘むや菖蒲園     金田 青水

水無月や愉しき里の貸座敷       坂部富士子

葉柳の頬くすぐって池の道       澤井 二堂

花菖蒲初めてクッパ食った町      杉山 三薬

花菖蒲江戸系肥後伊勢咲き揃い     向井 愉里

(報告 杉山三薬)

 

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番町喜楽会第228回例会

16人参加し「入梅」と「鮎」を詠む

投句78句中50句が得点の大乱戦、双歩、水牛が首位並走

番町喜楽会の第228回例会が令和7年6月7日(土)午後6時、東京・九段下の千代田区生涯学習館で行われた。このところ番喜会は忙しかったり身体不調などで欠席者が多くなっているが、この日はそれが甚だしく、欠席投句9名に対して出席が7人に止まった。しかし、こぢんまりとした集いにはなったものの談論風発、とても充実した句会となった。今回の兼題は「入梅」と「鮎」。16人から78句の投句があり、6句選(欠席者は5句)で選句を進めた結果、「天」の位は6点で嵐田双歩さんの「一服の新茶のほぐすわだかまり」と大澤水牛さんの「古古古米行列で買ふ梅雨入かな」の2句が並んだ。「地」の位は4点で、双歩さんの「入梅の雨垂を聞く二度寝かな」、玉田春陽子さんの「川上る姿のままに串の鮎」と「逆さまに空をしずめて植田かな」、そして中村迷哲さんの「石の罠築き少年鮎を待つ」の4句がひしめき合った。「人」の位3点は金田青水さんの「入梅を待たずあぢさゐ小むらさき」と水牛さんの「群れ咲いて十薬日陰かがやかす」の2句だった。このほか2点が11句、1点31句と非常に票が分散し、50句に点が入る大乱戦となったのも今回の特徴だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「入梅」

古古古米行列で買ふ梅雨入かな                                        大澤 水牛

入梅の雨垂を聴く二度寝かな             嵐田 双歩

入梅を待たずあぢさゐ小むらさき           金田 青水

「鮎」

川上る姿のままに串の鮎               玉田春陽子

石の罠築き少年鮎を待つ               中村 迷哲

「当季雑詠」

一服の新茶のほぐすわだかまり            嵐田 双歩

逆さまに空をしずめて植田かな            玉田春陽子

群れ咲いて十薬日蔭かがやかす            大澤 水牛

《参加者》【出席7人】大澤水牛、金田青水、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。

(報告 大澤水牛)

 

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日経俳句会第239回例会

最高9点に方円句・双歩句、二席に水牛句と健史句

「五月」と「卯の花」を詠む

日経俳句会は令和7年の5月例会(通算239回)を5月18日(日)午後2時から鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター会議室で開いた。日曜昼間開催の二回目で、爽やかな5月の風に誘われて12人が顔を揃え、にぎやかな句会となった。兼題は「五月」と「卯の花」。34人から101句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は植村方円さんの「生命線伸びた気のする五月かな」と嵐田双歩さんの「滑舌の悪さを言はれ心太」がともに9点で分け合った。二席8点には伊藤健史さんの「脱いで着て脱いでまた着る五月かな」と大澤水牛さんの「戸車を換へて軽やか五月来ぬ」が並び、三席7点は中沢豆乳さんの「夏揚羽へのへのもへじ空に描く」が入った。以下、5点3句、4点6句、3点11句と続き、2点18句、1点28句と、まんべんなく点が入った。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「五月」

生命線伸びた気のする五月かな            植村 方円

脱いで着て脱いでまた着る五月かな          伊藤 健史

戸車を換へて軽やか五月来ぬ             大澤 水牛

バチカンの白煙祝ふ聖五月              中村 迷哲

野の神が沸き立ち踊る五月かな            岩田 千虎

花が咲きまた花が咲き五月過ぐ            工藤 静舟

湖の先に秀峰五月美(は)し             須藤 光迷

いざ五月大屋根リング風渡る             高橋ヲブラダ

みどりなる五月の地球風の息             中村 迷哲

「卯の花」

卯の花のみな俯いて通夜の家             中沢 豆乳

卯の花や古き歌集をひもときて            池村実千代

卯の花や初月給はまず親へ              岡田 鷹洋

卯の花やコンクラーベに白煙             久保田 操

にぎやかな移住の一家花うつぎ            中村 迷哲

当季雑詠

滑舌の悪さを言はれ心太               嵐田 双歩

夏揚羽へのへのもへじ空に描く            中沢 豆乳

天井へ響く談笑菖蒲の湯               岡田 鷹洋

駐輪の隣の籠も菖蒲の葉               植村 方円

衣更想ひ出ひとつまた消ゆる             加藤 明生

子も孫も男ばかりや柏餅               高井 百子

噺家の仕草なぞりて冷し酒              中野 枕流

柿若葉人麻呂憶良踏みし道              岩田 千虎

船遊び東京に出て半世紀               工藤 静舟

鯉のぼり川に吊るされ立泳ぎ             篠田  朗

鳥眠り黒く光れる代田かな              中嶋 阿猿

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、向井愉里、溝口戸無広。【投句参加22人】池村実千代、伊藤誠一、伊藤健史、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、星川水兎、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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番町喜楽会第227回例会

「初夏」と「鮓」を詠む

天に光迷「更衣」と百子「新樹光」

地に満智「初夏の風」と水兎「目張鮓」

番町喜楽会は令和7年5月の例会(通算227回)を12日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。兼題は「初夏」と「鮓」、15人から75句の投句があった。選句6句(欠席者は5句)の結果、天には須藤光迷さんの「どっちみちユニクロだけど更衣」と高井百子さんの「ホスピスの兄の枕辺新樹光」が6点で並び、地には斉山満智さんの「カーテンを変えて呼び込む初夏の風」と星川水兎さんの「森ふかく熊野詣の目張鮓」が4点で並んだ。人は3点で7句に上った。2点が10句、1点が22句とかなり票が割れた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「初夏」

カーテンを変えて呼び込む初夏の風                       斉山 満智

初夏の風なんじゃもんじゃの大木陰         徳永 木葉

貝拾う少女の素足初夏の潮             中村 迷哲

初夏の風と乗りこむ登山客             星川 水兎

「鮓」

森ふかく熊野詣の目張鮓              星川 水兎

子等嬉々とタッチパネルの鮨選び          須藤 光迷

寛解や家族で祝ふ出前寿司             徳永 木葉

瀬戸内の旬とりどりに祭ずし            中村 迷哲

「当季雑詠」

どっちみちユニクロだけど更衣           須藤 光迷

ホスピスの兄の枕辺新樹光             高井 百子

ふるさとの鰹囲んで七回忌             斉山 満智

【句会出席8人】金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水、向井愉里。【投句参加7人】嵐田双歩、大澤水牛、斉山満智、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、山口斗詩子。

(報告 須藤光迷)

 

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酔吟会第174回例会

12人が「薄暑」「自転車」を詠む

首位9点に可升「若葉雨」、6点迷哲「夏燕」、5点愉里「こどもの日」が続く

酔吟会は令和7年5月例会(通算第174回)を10日午後1時から江東区の森下文化センターで開催した。兼題は「薄暑」、岩田千虎さんから出題された席題は「自転車」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の9点句に廣田可升さんの「泣くたびに大きくなる子若葉雨」、次点の6点句には中村迷哲さんの「補助輪を外す自転車夏燕」、5点句に向井愉里さんの「よろよろと自転車練習こどもの日」が選ばれた。4点句には玉田春陽子さん「旧き家硝子に歪む薄暑かな」、中村迷哲さん「むき出しの二の腕眩し薄暑光」、嵐田双歩さん「パンクして担ぐ自転車玉の汗」、岩田千虎さん「万博や未来混沌雷を聞く」の4句が並んだ。連休明けの、まさに兼題の「薄暑」に相応しい陽気の午後、12人が集まり活発な句会を楽しんだ。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「薄暑」

旧き家硝子に歪む薄暑かな         玉田春陽子

むき出しの二の腕眩し薄暑光        中村 迷哲

薄暑かなブルゾン腰にジャズフェスタ    岡田 鷹洋

笛太鼓まつり稽古の薄暑かな        徳永 木葉

「自転車」

補助輪を外す自転車夏燕          中村 迷哲

よろよろと自転車練習こどもの日      向井 愉里

パンクして担ぐ自転車玉の汗        嵐田 双歩

「当季雑詠」

泣くたびに大きくなる子若葉雨       廣田 可升

万博や未来混沌雷を聞く          岩田 千虎

押入も風呂もオープン青葉風        杉山 三薬

<句会参加者12人>嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里

(報告 廣田可升)

 

 

 

 

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日経俳句会第238回例会

一席8点に豆乳・正市・方円句が並ぶ

35人が「春の月」「若草」詠む

日経俳句会は4月16日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で4月例会(通算238回)を開いた。大方の花も散り、ようやくコートが手放せる陽気になってきたこともあり、この日は14人が出席、和やかな句会となった。

兼題は「春の月」と「若草」。35人から104句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、中沢豆乳さんの「春の月乗せて鈍行動き出す」、廣上正市さんの「若草や才女と云はれし日の遠く」、植村方円さんの「雨降りと知れば二度寝の春の朝」の3句がいずれも8点を獲得、一席となった。二席には星川水兎さんの「昭和の日沈没船に住む魚」が7点で続いた。三席の5点句は6句あり、光迷句と迷哲句のほかに千虎句と愉里句がそれぞれ2句ずつ選ばれた。以下、4点6句、3点16句、2点15句、1点26句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「春の月」

春の月乗せて鈍行動き出す              中沢 豆乳

縄文のヴィーナス見上ぐ春の月            岩田 千虎

何処へか上着失くして春の月             向井 愉里

朝焼の空のはづれに春の月              金田 青水

山火事のすべなき闇に春の月             久保田 操

かみさんがちよつぴり美人春の月           横井 定利

沖合いに薄々とあり春の月              大沢 反平

三宝にたこ焼き載せて春の月             杉山 三薬

大荒れの相場が閉じて春の月             中嶋 阿猿

春の月顎のラインをそっと見る            中野 枕流

春の月雲を裏より透かしけり             溝口戸無広

消灯の窓辺に仰ぐ春の月               向井 愉里

「若草」

若草や才女と云はれし日の遠く            廣上 正市

若草やむかし砦のありし丘              須藤 光迷

若草の土手に寝転ぶ二軍戦              中村 迷哲

若草を分けて一両列車行く              向井 愉里

若草を喰むや短足寒立馬               嵐田 双歩

若草や太古の力野に満ちて              岩田 千虎

若草に椅子を並べてコンサート            植村 方円

若草やこのやはらかさあの青春            大沢 反平

仰向けに五体投地の若草野              金田 青水

若草を踏む再婚の十余年               高井 百子

当季雑詠

雨降りと知れば二度寝の春の朝            植村 方円

昭和の日沈没船に住む魚               星川 水兎

横殴り桜吹雪の中に居る               岩田 千虎

富士見えるE席なれど目借時             嵐田 双歩

かげろふの奥へ奥へと友ゆけり            大澤 水牛

花筏親は目で追ひ子は走り              高橋ヲブラダ

老桜幹の小枝も花こぼる               和泉田 守

つむじ風輪舞乱舞の花吹雪              徳永 木葉

花の下安吾は仏と宴する               藤野十三妹

空白く紛れさうなる桜かな              溝口戸無広

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、溝口戸無広、向井愉里。【投句参加21人】和泉田守、伊藤誠一、伊藤健史、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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晩春の久留里線吟行

8人が参加、名水の里を巡る

4月13日(日)、久留里線吟行の出発点、JR内房線木更津駅に集合したのは次の7人。嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、須藤光迷、廣田可升、中村迷哲、杉山三薬(幹事)。水牛さん、光迷さんは横浜から高速バス。千虎さんは武蔵野線、京葉線を乗り継いで、とメンバーそれぞれ工夫をしての到着。午前11時11分、1両だけの久留里線ディーゼルの音軽やかに出発。乗客は我らの他には、鉄ちゃんと見られる父子連れなど10人ほど。

生憎の雨降りだが幸い小降り。木更津の住宅街を抜けた車両は、散り残る桜、水の張られた田んぼ、山桜の咲く山などの風景の中を行く。40分ほどで沿線唯一の有人駅、久留里に到着。ここで地元出身の向井愉里さんが迎えてくれた。一同駅を出て、酒ミユージアムをチラリと覗いたあと、町の中心部に向かい古民家カフエに入り、イタリアンランチはボリュームたっぷりのパスタの昼食。

食後、タクシーと愉里さん運転の車に分乗し、久留里城主土屋氏三代を弔う円覚寺で県内最大という五輪塔を見学。続いて花の寺の案内板のある円如寺へ。まだ花を残しているソメイヨシノ、枝垂れ桜、花桃、ミツバツツジと咲き誇り、山里にはもったいないほど。この二つの寺、鎌倉や京都にあったら、けっこうな拝観料を求められそうだが、ここ久留里はタダ。その後、本日のハイライト、久留里城に向かう。山頂近くの久留里城資料館で下車。まず高台に設けられた展望広場へ。小雨に烟ってはいたものの、眼下に広がる上総の田園風景が素晴らしい。資料館の脇に置かれた、上総掘りの実物大模型も見ものだ。今でもアフリカ、アジアの一部で井戸掘りに使われている技術らしい。この資料館、武具や特産品がコンパクトに展示されている優れものだが、入場無料。久留里いいぞ。

天守閣は昭和53年にコンクリート造り三階建で再建されたもの。ただ、令和5年5月に房総一帯を襲った地震で屋根などが破壊された。いまだに立ち入り制限が続いている。

雨も街中に戻る頃には、すっかりあがっていた。愉里さんの案内で、町内の湧水所をいくつか回る。皆さん備え付けのカップで飲んだり、持参のボトルに詰めたり、年寄りの冷や水を実践。久留里の締めは、呑兵衛たちお待ちかねの酒蔵巡り。藤平酒造店、吉崎酒造を回る。酒蔵の白壁、高い煙突、大きな樽などが目を引いた。最近、都会では見かけなくなったツバメも飛び廻り、酒と水の城下町の静かな夕暮れが迫っていた。

日帰り組3人と別れた泊まり組5人は久留里から終点の上総亀山まで乗り、亀山湖畔に建つ亀山温泉ホテルに投宿。亀山湖は千葉県内最大の多目的ダム。農場用水、工業用水確保のため、小櫃川と笹川を堰き止めて昭和55年に完成した。井戸を掘ったら茶色の鉱泉が湧き出し、湖畔には観光客をあてこんで亀山温泉ホテルをはじめ数軒の旅館が建っている。ホテルの売り物は湖の景観とチョコレート色の温泉。風呂から上がって食事処に5人が揃い、千葉県産の食材をふんだんに使った会席料理を頂く。幹事愉里さんお勧めの「地酒八種飲み比べセット」を試す。久留里五蔵の福祝、吉寿、天の原、飛鶴、峯の精に、近隣の東魁季、聖泉、鹿野山を加えた8種。それぞれ100CC入りのグラスで供され、5人で注ぎ分けて飲み比べた。

翌日は快晴。爽やかな若葉風が吹き、日帰りで雨の久留里を後にした3人には申し訳ないほどの上天気に恵まれた。ホテルの社員がネーチャーガイドの資格を持っており、客の求めに応じて周辺観光をアレンジしてくれる。大型ワゴンでまずは三石山(みついしやま)をめざす。三石山は房総半島の背骨にあたる山塊のひとつ。半島の中央部に位置し、清澄山、三石山、鹿野山と連なる山並みは、雲が集まりやすく雨が多いので千葉県の水源地となっている。三石山の山頂部には室町時代の開基と伝わる観音寺がある。岩山の参道を10分ほど歩くと観音寺の境内。入口にシドニー五輪の女子マラソンで金メダルを取った高橋尚子が奉納した石柱があり、ミーハーの一行はそれを囲んで記念撮影。三石山の由来は境内にそびえる三つの巨岩にある。真ん中の岩に本尊の観音様が宿っているとされ、本堂に岩がのしかかっているように見える。梯子が掛けられており、岩の途中まで登ることができる。双歩さんに続き、千虎さん、愉里さんが登り、高所恐怖症の水牛さんまで登頂したのには驚いた。

次の目的地は濃溝(のうみぞ)の滝と亀岩の洞窟だ。急坂を下り亀山湖に注ぐ笹川の谷をめざす。濃溝の滝は、昔水車の溝を掘ったことからこの名があり、階段状の岩から滝が流れ落ちている。前日の雨で水量が増し、滝の水に新緑が映えて美しい。すぐそばに人力で掘られたという亀岩の洞窟がある。笹川の蛇行部の根元をトンネルでつなぎ、蛇行部分を水田に変えるために江戸時代に作られたという。いくら柔らかい水成岩とはいえ、手でこれだけ大きな洞窟を掘った上総人の努力に恐れ入る。半円形の洞窟が水に映ると、ハート形に見えることから、近年はインスタ映えする聖地として有名だ。あいにく増水していたので撮影スポットまで行けず、嵐田カメラマンも手を拱くしかなかったのは残念。昔の水田跡には木道が整備され、格好の散策コースになっている。

木道をたどり駐車場まで戻って甘味処でひと休み。ソフトクリームとプリンが売り物だが、何とこのプリン、愉里さんの実家の養鶏場の卵で作られたものという。当然全員がプリンを注文し賞味した。ラベルには「梅原さんちのきみつプリン」と記され、卵の味がしっかり感じられる濃密な味だった。

思い出に残る二時間のワゴン車観光を終えてホテルに戻り、愉里さんの車で久留里へ。駅前でお昼を食べて帰京の段取りだ。店は地元の有名店「喜楽飯店」。日帰りの可升さんが心を残しつつ行けなかった店だ、古びた路地の奥にある昭和レトロ感あふれる中華食堂である。煤けた壁には所狭しとメニューの短冊が貼られている。チャーハン七百二十円など、どれも安くてうまそうだ。ビールに餃子、焼きそばなど、それぞれ好みのものを注文し、眼福と口福の二日間の旅を締めくくった。

〈参加者の代表句〉

亀鳴くや水美しき城下町               嵐田 双歩

一両のディーゼル車窓田水張る            中村 迷哲

燕飛ぶむかし旅籠のイタリアン            須藤 光迷

花の雨曲輪はるかに古戦場              廣田 可升

春雨に久留里酒蔵めぐりかな             大澤 水牛

酒蔵の高き煙突初燕                 杉山 三薬

三石山天衝く岩に壺すみれ              岩田 千虎

故郷に句友招きて山笑ふ               向井 愉里

(報告 杉山三薬・中村迷哲)

 

 

 

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双牛舎、NPO法人を解散

任意団体として俳句振興活動を継続

NPO法人双牛舎は令和7年3月24日(月)、千代田区立スポーツセンターで臨時総会を開催し、NPO法人としての解散を決議した。

NPO法人双牛舎は今泉而云、大澤水牛両氏を代表に平成19年4月に設立され、三つの句会(日経俳句会、番町喜楽会、三四郎句会)を母体として、俳句の振興・普及事業に取り組んで来た。今般、双牛舎の事務所として使用していた千代田区二番町の番町ハイムが本年3月末で使えなくなる事情が発生し、NPO法人としては、18年間の活動によって当初の目的を果たしたとの考えから、解散することに至ったもの。臨時総会を開催して正会員に諮ったところ、当日の出席者9人、書面による事前回答37人の合計46人の賛成を得て、満場一致で解散案が可決された。今後、所轄官庁である都庁への届出や約2ヶ月間の清算期間を経たのち、6月中旬頃に解散手続が完了する見込みである。

NPO法人解散後も双牛舎は任意団体として存続し、ホームページの運営、ブログによる例会報告や「みんなの俳句」などは従来通り継続される。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第226回例会

15人参加、「啓蟄」「しゃぼん玉」を詠む

迷哲句「虹を宿せり」が5点で首位、次席は春陽子、百子並ぶ

番町喜楽会の令和7年4月例会(通算第226回)が5日午後6時から東京・九段下の千代田区生涯学習館で行われた。しとしと雨がようやく上がったが花冷えの夕方はコートが必要な寒さ。それでも地下鉄九段下駅は千鳥ヶ淵の夜桜見物の人たちでごった返していた。この夜の句会参加者は出席10人、投句参加5人の計15人、投句合計75句だった。兼題は「啓蟄」と「しゃぼん玉」で、選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、中村迷哲さんが「どの球も虹を宿せりしゃぼん玉」で5点獲得し「天」の位に座った。次席「地」の位は4点で玉田春陽子さんの「シャボン玉割れて微かに空濡らす」と「配達のピザここだ此処花筵」、高井百子さんの「せせらぎに触れたき今日の春日かな」の計3句が並んだ。三席「人」3点句は前島幻水さんの「啓蟄や人の湧き出る地下出口」「隣からベランダ越えてしゃぼん玉」、廣田可升さんの「花冷や歴史幕引く美術館」、山口斗詩子さんの「啓蟄や衝動買いの白シューズ」、春陽子さんの「啓蟄やマンホールよりヘルメット」の5句がひしめき合った。今回は春陽子さんが「地」2句、「人」1句と気を吐いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「啓蟄」

啓蟄や人の湧き出る地下出口            前島 幻水

啓蟄や衝動買いの白シューズ            山口斗詩子

啓蟄やマンホールよりヘルメット          玉田春陽子

「しゃぼん玉」

どの球も虹を宿せりしゃぼん玉           中村 迷哲

シャボン玉割れて微かに空濡らす          玉田春陽子

隣からベランダ越えてしゃぼん玉          前島 幻水

「当季雑詠」

配達のピザここだ此処花筵             玉田春陽子

せせらぎに触れたき今日の春日かな         高井 百子

花冷や歴史幕引く美術館              廣田 可升

万物の息吹く地球や春の月             須藤 光迷

【句会出席10人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加5人】嵐田双歩、斉山満智、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。 (報告 大澤水牛)

 

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