「夜寒着て」十三妹、「妻の顔」博明両氏が6点句でトップ
ゆり氏、5点句連発で気を吐く
日経俳句会の平成30年度10月例会(通算173回)は10月17日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開かれた。投句参加者は34人、「夜寒」と「山粧ふ」の兼題に102句が集まった。列島に災害をもたらした地震や台風も小休止、心地良い秋風に誘われて20人が出席し賑やかな句会となった。
5句選の結果、最高点は藤野十三妹さんの「夜寒着て飛び込む客や縄のれん」と植村博明さんの「秋冷や斜め後ろの妻の顔」が6点を獲得、一席を分け合った。次点は向井ゆりさんの2句、「保母の膝ひとり占めして待つ夜寒」と「秋高し進路定めり十八歳」、および流合研士郎さんの「出口なき議論の果ての夜寒かな」、星川水兎さんの「山粧ふおもちゃの色の遊覧船」の4句が5点で並んだ。以下、4点6句、3点15句、2点23句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。
「夜寒」
夜寒着て飛び込む客や縄のれん 藤野十三妹
出口なき議論の果ての夜寒かな 流合研士郎
保母の膝ひとり占めして待つ夜寒 向井 ゆり
徘徊の夢に目覚めて夜寒かな 大沢 反平
爪切れば指に夜寒の忍び寄り 徳永 木葉
生てゐる夜寒の尿意たのしまむ 金田 青水
諍へば夜寒の犬のそつと寄り 谷川 水馬
病院の床てらてらと夜寒かな 中嶋 阿猿
床ひとつ夜寒の宿の長湯かな 中村 哲
極道のとなりを生きて夜寒かな 野田 冷峰
「山粧ふ」
山粧うおもちゃの色の遊覧船 星川 水兎
剥き出しの地肌そのまま山粧ふ 植村 博明
山粧ふ横一列の膝小僧 加藤 明男
塩害や山の粧ひとげとげし 大熊 万歩
山粧ふ薪たかだかと軒に積み 大倉悌志郎
塩害の山のまだらに粧へり 大澤 水牛
信州青木村・大法寺の十一面観音菩薩を初拝顔
千年の観音像や山粧ふ 堤 てる夫
山粧ふ五山流るる読経かな 野田 冷峰
「当季雑詠」
秋冷や斜め後ろの妻の顔 植村 博明
秋高し進路定めり十八歳 向井 ゆり
秋天に鴟尾耀ける興福寺 久保田 操
豊洲へとターレの車列秋深む 杉山 三薬
測量士座標定める秋野かな 大熊 万歩
鴨一陣池の広さを独り占め 澤井 二堂
末の娘の嫁ぎて二人菊の庭 中村 哲
食べ終へし姿正しき秋刀魚かな 廣上 正市
何一つ楽器が駄目でとろろ汁 横井 定利
参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田鷹洋、澤井二堂、高石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、野田冷峰、流合研士郎、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井ゆり、(投句参加)植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、杉山三薬、鈴木好夫、谷川水馬、中嶋阿猿、廣上正市、深田森太郎、横井定利。 (報告 嵐田双歩)