参加36名で「冬の月」と「水洟」を詠む
日経俳句会は平成30年度の初句会一月例会(通算165回)を1月17日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。風邪で体調を崩す人が多いうえに雨も重なり、出席者は19人とやや少なかったが、寒さを吹っ飛ばす熱気のこもった句会となった。兼題は「冬の月」と「水洟」。投句参加者を含め36人から108句の投句があり、5句選の結果、今泉而云さんの「水洟を抑へてうなじ美しき」と谷川水馬さんの「陽だまりのオランウータン水っ洟」がともに最高6点を獲得した。5点句には大沢反平さんの「神鈴の鳴り止まぬ杜冬麗」など6句、4点句に廣上正市さんの「冬の月一本道を靴の音」など6句が入った。このほか3点に8句、2点に47句が並び、全体に点がバラついた。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。
「冬の月」
一村の田に煌々と冬の月 今泉 而云
満天の星を纏ひて冬の月 嵐田 双歩
ヒマラヤの峰鋭角に冬の月 中村 哲
冷凍庫から出したのよ冬の月 徳永 木葉
冬の月一本道を靴の音 廣上 正市
茹でたまごつるりとむけば冬の月 藤野十三妹
ご飯だとメールで呼ばれ冬の月 植村 博明
冬満月婚約せりと四十歳 堤 てる夫
亡き友と居場所探すや冬の月 流合研士郎
「水洟」
水洟を抑へてうなじ美しき 今泉 而云
陽だまりのオランウータン水っ洟 谷川 水馬
水洟をかみマドンナの顔となり 横井 定利
音高く洟水かむや通夜の席 植村 博明
「当季雑詠」
神鈴の鳴り止まぬ杜冬麗 大沢 反平
この時を選ぶ不思議や寒桜 星川 水兎
初日の出なに変わるでもないけれど 和泉田 守
西に向ひ歩くのが好き冬夕焼 大倉悌志郎
田は元の荒地に戻り冬雀 岩田 三代
月冴える昔高女の門構え 杉山 三薬
風流と貧乏の味薺(なずな)粥 高瀬 大虫
冴ゆる夜のスマホ突然光りけり 徳永 木葉
「酌みたし」のひと言のある賀状かな 廣上 正市
《参加者》(出席)嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川水兎、向井ゆり。(投句参加)池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。
(報告・中村哲)