「夏至」と「萍」を兼題に37人から111句
日経俳句会は6月15日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で平成28年度上期合同句会を開いた。合同句会のため「夏至(げし)」「萍(うきくさ)」と雑詠の3句投句、事前選句5句という方式のもと、37人から111句の投句があった。この日は舛添東京都知事の辞職の報も相まって鬱陶しい梅雨空の中、出席者は18人。欠席者は19人と空席が目についた。
事前選句の結果、最高点は7点で谷川水馬さんの「萍やダムに沈みし村の上」と久保田操さんの「萍や日ねもす雲の行くへ追ふ」の二作品が並んだ。次席の5点は「夏至の日やハシビロじっと立ち尽くす 涸魚」「夏至の夜やことばを交はす牛と馬 綾子」「萍や子ら散り散りに外つ国へ 青水」「六月の闇六月の白き花 而云」「朝餉には皆出払って鮎の宿 博明」の5句。4点句は「リビングに日の色残す夏至の夜 操」「根無草内緒ですけど多産系 智宥」「鮎の香の指に残れり解禁日 悌志郎」「三叉路に陽石ごろり麦の秋 水牛」の4句だった。
今回の投句は粒揃いで投句者全員に点が入り、3点17句、2点17句、1点30句と万遍なく得票した。実力伯仲、レベルの高い選句となった中、萍の下にダム湖を想い、上に行雲を浮かべた両句が最高点を獲得したのが印象的だった。
兼題別高点句(3点句以上)は以下の通り。
「夏至」
夏至の日やハシビロじっと立ち尽くす 片野 涸魚
夏至の夜やことばを交はす牛と馬 大下 綾子
リビングに日の色残す夏至の夜 久保田 操
点滴の清き光や夏至の夜 大熊 万歩
ベか船の気だるく舫ふ夏至の昼 岡田 臣弘
夏至の日やアブサン燃ゆる喉心地 谷川 水馬
日めくりの夏至は一日遅れけり 玉田春陽子
夏至の空埋め尽くすほど衣干す 中村 哲
夏至の空突き破らんかスカイツリー 流合研士郎
天地の熱とどまれり夏至の夜 水口 弥生
まだまだと遊びつづけし夏至日暮れ 星川 佳子
「萍」
萍や日ねもす雲の行くへ追ふ 久保田 操
萍やダムに沈みし村の上 谷川 水馬
萍や子ら散り散りに外つ国へ 金田 青水
根無草内緒ですけど多産系 杉山 智宥
萍の徐々に彼岸に流れ寄る 高瀬 大虫
萍に休める蠅の至福かな 水口 弥生
「当季雑詠」
六月の闇六月の白き花 今泉 而云
朝餉には皆出払って鮎の宿 植村 博明
鮎の香の指に残れり解禁日 大倉悌志郎
三叉路に陽石ごろり麦の秋 大澤 水牛
愛用の父の写真機黴びてをり 嵐田 双歩
犬吠ゆといふ名の岬夏の雲 大石 柏人
万緑に生命の証駒ヶ岳 大沢 反平
梅熟す採る人も無く遊歩道 杉山 智宥
亡き人の墓打つ雨や七変化 髙石 昌魚
桑いちご車道染めたる和紙の里 中嶋 阿猿
路地裏の紫陽花ひとり薄化粧 中村 哲
参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、澤井二堂、杉山智宥、髙瀨大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕 、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川佳子、横井定利
(投句参加)植村博明、大石柏人、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、片野涸魚、金田青水、久保田操、須藤光迷、高石昌魚、高橋ヲブラダ、直井正、流合研士郎、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、水口弥生、
(まとめ・嵐田双歩)