桜五千本の花吹雪に酔う
4月9日(土)、日経俳句会は恒例の村田英尾先生の墓参・桜吟行を実施した。花曇りの中、時折陽射しに恵まれる絶好の吟行日和、集合場所のJR高尾駅北口に集まったのは、大澤水牛幹事長、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、徳永正裕、星川佳子、野田冷峰に番町喜楽会の田中白山と幹事堤てる夫の9人。
まずは路線バスで都立八王子霊園へ向かい、日経俳句会創設者英尾先生のお墓参り。先生没後3年を経た平成20年4月、霊園と近くの「多摩森林科学園」を訪れたのが第1回で、それから既に8年、先生が亡くなられて11年になる。初回以来、墓参後は森林科学園の「桜保存林」へ行くのが慣例になっていたが、今回は趣向を変えて、北条氏照の居城だった「滝山城址公園」に足を伸ばした。霊園からタクシーに分乗して30分ほど、滝山街道沿いの登山口から標高160㍍ほどの三の丸、二の丸、中の丸を目指す。
この滝山城址公園は5千本の桜の名所だけに花見客、ハイカーが目立つ。千畳敷址で昼食。保存林と違って「飲酒可」なのが嬉しい。風が出て桜吹雪は「舞う」より「飛ぶ」感じ。山城北側にある多摩川を見下ろす眺望を中の丸から楽しむ。鶯が飛び鳴くという、おまけ付きの展望だった。帰途は麓の滝山街道「純心学園」前から京王バスで八王子駅北口に戻った。仕上げの懇親会は北口周辺の花街黒塀横丁などをさらっと見て、へぎそばの「笹禅」でテーブルを囲んだ。
吟行句会は慣例の「メール句会」、5句投句、5句選句で「天地人」「入選」を選ぶ方式を踏襲。選句には吟行には参加しなかった今泉而云さんが飛び入りで加わった。
その結果は、最高点が徳永正裕さんの「谷に落ち谷より上がる花吹雪」でダントツの18点だった。次席は堤てる夫さんの「古戦場遥か眼下に春の川」の10点、三席がやはり徳永さんの「酔いほのか昼寝に誘う花筵」の9点、次いで本日の副幹事として地元案内を買って出てくれた杉山智宥さんが「多摩川の春きらめいて中の丸」の句で8点獲得し面目を保った。その他、句会で人気を集めた参加者の代表作は次の通り。
鶯の稽古積んだる谷渡り 大澤 水牛
茣蓙のべて浅き夢路へ山笑ふ 岡田 臣弘
桜散る花びら添へてむすび喰ふ 澤井 二堂
花吹雪千畳敷に昼の酒 杉山 智宥
芽柳の花街の路地狭かりき 田中 白山
英尾忌の十一年目の桜かな 堤 てる夫
精気満つ九本桜の異形かな 徳永 正裕
一叢の関東破れ傘一家 星川 佳子
山桜背伸びしてをり五千本 野田 冷峰
(報告者 堤てる夫・大澤水牛)