日経俳句会は平成25年第5回例会(通算119回)を5月21日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館で開催した。兼題は「夏めく(なつめく)」「薔薇(ばら)」で投句総数は172句(14人が投句参加)で、選句7句で進めた結果、徳永正裕さんの「夏めくや麻の上着の背中皺」が10点を集めて最高点。次席は大熊万歩さんの「夏めくや重たくなりし付け睫毛」の8点句。三席は佐々木碩さんの「夏めくや風のことばに木のことば」と、田中頼子さんの「ふたとせも人入れぬ町花いばら」の7点2句。
次いで6点は「つる薔薇にもの言ひてより母の朝 恂之介」、「病得て薔薇一輪に励まされ 臣弘」、「夏めくや田水の音のたうたうと てる夫」、「夏めくや子等にでつかい背番号 定利」、「薔薇一輪活けて独りの昼餉かな 光久」の5句が並んだ。続く5点は「夏めきて雑巾ぬつてみたくなる 実千代」の1句。以下4点10句、3点7句、2点17句、1点11句。3点以上の高点句が27句も出て会場は大いに沸いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「夏めく」
夏めくや麻の上着の背中皺 徳永 正裕
夏めくや重たくなりし付け睫毛 大熊 万歩
夏めくや風のことばに木のことば 佐々木 碩
夏めくや田水の音のたうたうと 堤 てる夫
夏めくや子等にでつかい背番号 横井 定利
夏めきて雑巾ぬつてみたくなる 池村実千代
夏めいて薄暮の似合ふ銀座かな 嵐田 啓明
夏めくやアジアン雑貨の店に入る 植村 博明
夏めくやゼブラ模様のワンピース 大澤 水牛
夏めくやオープンカフェの長話 大沢 反平
夏めくや薄く去年の日焼け跡 高瀬 大虫
夏めくや新潟平野水光る 大倉悌志郎
雲浮かぶ夏めく空に句も浮かぶ 山田 明美
「薔薇」
ふたとせも人入れぬ町花いばら 田中 頼子
つる薔薇にもの言ひてより母の朝 今泉恂之介
病得て薔薇一輪に励まされ 岡田 臣弘
薔薇一輪活けて独りの昼餉かな 吉野 光久
残されて薔薇のはなやぐ空家かな 大沢 反平
青き薔薇蒼穹よりの使者ならん 徳永 正裕
カルメンの運命や赤き薔薇くずる 大倉悌志郎
恩師百われ八十二薔薇盛る 直井 正
「雑詠」
藤棚に乳母車寄せ子と眠る 大倉悌志郎
廃屋や卯の花垣はくずれずに 大倉悌志郎
皿蕎麦や塩田平の新樹光 須藤 光迷
初夏の風入れて電車は大仏へ 大澤 水牛
母の日や里の血縁絶えにけり 大沢 反平
朝顔や谷中往き交ふ介護バス 澤井 二堂
参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、来間紘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、水口弥生、村田佳代、山田明美、横井定利(投句参加)井上庄一郎、植村博明、大石柏人、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、加藤明男、金田青水、久保田操、高瀬大虫、高橋淳、田中頼子、藤野十三妹、星川佳子、吉野光久 (まとめ・堤てる夫)