日経俳句会の恒例行事「逆回り奥の細道」も回を重ねて第7回。今回は11月4,5日の一泊二日で、福島県の飯坂温泉周辺をスタートに白河の関まで、福島県の中通りをマイクロバスで縦断した。
参加者は井上庄一郎、高石昌魚(日帰り)、大澤水牛、今泉恂之介、高瀬大虫、岡田臣弘、堤てる夫(幹事)、徳永正裕、杉山智宥、須藤光迷、玉田春陽子、田中頼子、星川佳子の13人だった。
初日の11月4日(日)は快晴、東北新幹線「やまびこ53号」(東京発8:40)で福島駅に行き、迎えのマイクロバスで北上、桑折町の法圓寺へ行き「奥の細道絵巻」を見る。その後、信夫山羽黒神社、文知摺観音堂、医王寺、大鳥城址などを経由し、飯坂温泉の「なかむらや」旅館へ。200年前からあるという海鼠塀の土蔵造りの由緒ある建物で、明治時代に建てられた「新館」とつなげても全11室というこぢんまりした湯宿だが、女将さんも若女将も客あしらいが上手で、温泉も良く料理も美味く、一同大満足でくつろいだ。
翌5日(月)も上々の天気で、二本松城の菊人形展を見物してから須賀川へ。芭蕉と曾良が訪ねた相楽等窮宅跡、軒の栗庭園、可伸庵跡などを見学しながら市内散策。またバスに乗って、一路、白河へ。名物の蕎麦屋に入り、昼食。午後は三重櫓の聳える白河城(小峰城)公園へ行ったが、昨年三月の東日本大震災で石垣が大きく崩れて修理中のため閉鎖されていた。そこで白河の関へ向かい、途中、田畑、山林の中の硯石磨崖三十三観音に立ち寄り、紅葉が見事な白河の関で旅の締めくくりとした。
帰京後、いつものようにメール句会を行った。今回は福島原発の地を経巡る旅ということもあり、「放射線・放射能」に関係ある言葉を詠み込んだ一句を含め五句を投句、参加者各人の互選で「天」「地」「人」「入選」を選ぶ方式を取った。選句の結果、最高は「天」三つと「人」二つ、「撰」一つの計20点を獲得した玉田春陽子の「城跡や色なき風に放射能」。次いで17点が大澤水牛の「磨崖仏尋ねたづねて刈田道」、三席が13点で徳永正裕「江戸明治貫く宿の冬廊下」だった。参加各人の代表句は次の通り。
訪ね来し白河の関照紅葉 井上庄一郎
阿武隈の流れすすきと光り合ふ 今泉恂之介
にこやかに初冠雪の吾妻山 大澤 水牛
寒空に師弟同舟湯のけむり 岡田 臣弘
菊花展ひつそり戊辰の母の像 杉山 智宥
草紅葉かき分け拝む磨崖仏 須藤 光迷
多宝塔照紅葉背に鎮座せり 高石 昌魚
落葉積む古代の恋の歌枕 高瀬 大虫
カラコロと秋の湯に行く宿の下駄 田中 頼子
大わらぢ仰ぎて秋の信夫山 玉田春陽子
暮早し天守に代はる線量計 堤 てる夫
清盛の幾人もゐて菊花展 徳永 正裕
新豆腐温みほんのりなかむらや 星川 佳子