番町喜楽会は「広島原爆の日」の八月六日(土)午後一時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第七十一回例会を開いた。六十六年前のあの日と同じような厳しい陽射しの中、出席したのは、大澤水牛、今泉而雲、井上啓一、岩澤克恵、須藤光迷、高橋楓子、玉田春陽子、堤てる夫、星川佳子、前島巌水、三好六甫の十一人。高井百子、高瀬大虫、谷川透、徳永正裕、野田冷峰、山口詩朗の六人が投句参加した。
兼題は「雲の峰」「鰻」。総投句数八十五句を十人で清記したため、八句用の清記用紙に九句書き込む作業になった。選句も九句とたっぷり。その結果、最多の七点を得たのは大虫さんの「白焼きはうなぎの浴衣姿かな」の一句。季重なりを乗り越えて、白焼を浴衣姿に見立てたユーモラスな着眼に点が集まった。
次席は五点句で、「うな重や老いて姉妹の美しく 而雲」、「雲の峰喪服の人の急ぎ足 春陽子」、「雲の峰十勝の空の熱気球 正裕」の三句。続く四点句は、「鰻待つ三島の宿の古時計 水牛」、「うなぎのう絵文字になりて風泳ぐ 春陽子」、「鰻待つ扁額の詩文誦しつつ 正裕」、「雲の峰石鎚尾根を鷲づかみ 六甫」の四句。以下三点六句、二点十句、一点二十四句という結果になった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。
「雲の峰」
雲の峰喪服の人のいそぎ足 玉田春陽子
雲の峰十勝の空の熱気球 徳永 正裕
雲の峰石鎚尾根を鷲づかみ 三好 六甫
銀色の機体吸ひ込む雲の峰 前島 巌水
「鰻」
白焼きはうなぎの浴衣姿かな 高瀬 大虫
うな重や老いて姉妹の美しく 今泉 而雲
鰻待つ三島の宿の古時計 大澤 水牛
うなぎのう絵文字になりて風泳ぐ 玉田春陽子
鰻待つ扁額の詩文誦しつつ 徳永 正裕
小あがりでうなぎ喰ふ仲怪しまれ 高瀬 大虫
備長の灰も薬味と鰻焼く 谷川 透
「雑詠」
どこから人がビルの谷間の盆踊り 大澤 水牛
夏草や浄土庭園在りし跡 須藤 光迷
夏雲や貨車連結の大音響 山口 詩朗
(堤てる夫記)