番町喜楽会の第69回例会が6月4日(土)午後1時から、内神田の日経第二別館で開かれた。今年は5月27日に関東地方が早々と梅雨入り、うっとうしい季節になったが、この日は幸いの梅雨晴れ。井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、前島厳水、三好六甫、星川佳子、山口詩朗の十四人が出席、高井百子、徳永正裕、野見山啓子が投句参加した。
この日の兼題は「更衣」と「十薬」、雑詠含め投句は5句、選句7句とし句会を行った。最高得点は5点で「やはらかくシャツも老いたり更衣 塘外」の1句しか出なかった。その代わりというか、4点が「更衣鏡に入りて二歩三歩 春陽子」「十薬の繁れる隣家との境 佳子」「十薬や想ひ出多き脛の傷 厳水」「校庭の今朝のまぶしさ更衣 正裕」の4句、続く3点が10句もひしめいた。以下2点が9句、1点が30句もあり、投句総数85句のうち55句に点が入るという乱戦状態を呈した。3点以上の高点句は次の通り。
「更衣」
やはらかくシャツも老いたり更衣 笹本 塘外
更衣鏡に入りて二歩三歩 玉田春陽子
校庭の今朝のまぶしさ更衣 徳永 正裕
甘縒りの絹ふはふはと更衣 野見山恵子
またも手の止まる形見や更衣 須藤 光迷
捨てやうか迷ひつしまふ衣替へ 高井 百子
元町の衣更へたり女学生 三好 六甫
「十薬」
十薬の繁れる隣家との境 星川 佳子
十薬や想ひ出多き脛の傷 前島 厳水
十薬の花ざかりなり引越しす 野見山恵子
どくだみの根方に古きインク瓶 今泉 而雲
十薬の一叢咲ける婆の庭 徳永 正裕
「雑詠」
新樹光五十年振りの校歌かな 三好 六甫
羽抜鶏今朝渾身の大卵 野見山恵子
扇風機客の話を散らしけり 玉田春陽子