豆乳句「広島忌」が最高9点、二席8点は正市句「妻の部屋」
「夜の秋」と「ヨット」を詠む
日経俳句会は7月20日(日)、令和7年の7月例会(通算240回)を午後2時から鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター集会室で開いた。この日は参議院議員選挙の投票日とあって、不在者投票を終えた人や出がけに済ませた人など9人が出席。少人数ながら活発な意見が飛び交う中身の濃い句会となった。「夜の秋」と「ヨット」の兼題に、37人から111句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、中沢豆乳さんの「鶴を折る小さき手老いた手広島忌」が9点で一席。二席には廣上正市さんの「妻の部屋ありし日のまま夜の秋」が8点で続いた。次いで三席には須藤光迷さんの「月山を腰掛にして雲の峰」と徳永木葉さんの「爪を切る音の乾きや夜の秋」が7点で並んだ。以下6点5句、5点4句、4点6句、3点9句、2点14句、1点24句と、特定の句に票が集まった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。
「夜の秋」
妻の部屋ありし日のまま夜の秋 廣上 正市
爪を切る音の乾きや夜の秋 徳永 木葉
湯けむりを風がさらひて夜の秋 高橋ヲブラダ
大ぶりのぐい呑み出して夜の秋 向井 愉里
小屋はねて浜町河岸に夜の秋 杉山 三薬
瓶底に残るバーボン夜の秋 嵐田 双歩
書き込みし我が文字読めず夜の秋 和泉田 守
ガラガラの映画館出て夜の秋 中嶋 阿猿
夜の秋汽車の奏でる四拍子 伊藤 健史
夜の秋熱めの煎茶父の掌に 水口 弥生
「ヨット」
帰還するヨツトを囃す鷗かな 溝口戸無広
鼻剝けの子らが支へるヨットの帆 金田 青水
見はるかすヨット幾艘比叡山 高井 百子
海燃えて黒きヨットの一つあり 星川 水兎
ヨット乗せ新入部員は台車押す 嵐田 啓明
渋滞の窓にちらつくヨット群 中嶋 阿猿
当季雑詠
鶴を折る小さき手老いた手広島忌 中沢 豆乳
月山を腰掛にして雲の峰 須藤 光迷
生ビール交わす手と手の手話踊る 伊藤 誠一
派手かなと取っては戻し初日傘 中野 枕流
曝書してぱらり一葉諭吉翁 金田 青水
笑点見て笑い転げる妻の夏 工藤 静舟
山百合に出くわす道のくねりたる 向井 愉里
子と風呂で遊んだ記憶浮いて来い 嵐田 双歩
目が覚めるもう疲れてる蟻地獄 和泉田 守
夏菊が一生懸命咲いてゐる 大沢 反平
旧友の打明け話梅雨の雷 徳永 木葉
苗選ぶトマトは愛子と桃太郎 廣上 正市
《参加者》【出席9人】嵐田双歩、岩田千虎、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、向井愉里。【投句参加28人】池村実千代、和泉田守、伊藤誠一、伊藤健史、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、中村迷哲、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。
(報告 嵐田双歩)