日経俳句会第229回例会

百子句「衣替」最高14点、二席に卓也句、三席に光迷句

38人が「葛餅」「葉桜」詠む

日経俳句会は令和6年の5月例会(通算229回)を5月15日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。ケガなどで欠席が相次ぎ、出席は見学者を含め12人にとどまったが、高点句が多く盛り上がった句会となった。体調を崩していた堤てる夫さんが4ヵ月ぶりに元気な姿を見せ、句座に加わった。兼題は「葛餅」と「葉桜」。38人から114句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、高井百子さんの「母の手に似る手の皺や衣替」が14点と圧倒的な支持を集めた。二席9点には岡松卓也さんの「くろもじの先を葛餅逃げ回る」が続き、三席8点には須藤光迷さんの「葉桜や老には老の矜恃あり」が入った。また6点句には大澤水牛さんの「医者通ひ葉桜日々に色を増し」をはじめ4句が並び、5点5句、4点6句、3点12句と高点句が30句にのぼった。このほか2点16句、1点30句だった。この日は入会希望で日経OBの増田浩志さんが見学に訪れ、選句に加わった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「葛餅」

くろもじの先を葛餅逃げ回る             岡松 卓也

木漏日や吉野葛餅うすにごり             須藤 光迷

旧交を葛餅に蜜掛けながら              嵐田 双歩

酒も呑む葛餅も喰ふ師匠かな             谷川 水馬

葛餅の武骨な色も味も江戸              水口 弥生

ぷるるんと葛餅揺れて雲流る             岩田 三代

くず餅の講釈長し奈良生れ              廣上 正市

葛餅や病友やうやく快方へ              大沢 反平

葛餅の少し透かせて皿の青              谷川 水馬

蜜なめて葛餅残す孫娘                堤 てる夫

「葉桜」

葉桜や老には老の矜恃あり              須藤 光迷

医者通ひ葉桜日々に色を増し             大澤 水牛

葉桜やきらきら光る隅田川              嵐田 双歩

葉桜や上野は緑の風を呼び              澤井 二堂

葉桜や白壁揺るる武家屋敷              加藤 明生

華やぎの去って葉桜影深く              久保田 操

葉桜や洒々落々と孫連れて              谷川 水馬

葉桜もひと目千本風青し               中沢 豆乳

葉桜や足取り軽く杖の人               中嶋 阿猿

葉桜の勢い花の記憶消す               向井 愉里

葉桜や訪ふ人も無き風の音              横井 定利

当季雑詠

母の手に似る手の皺や衣替              高井 百子

ナナハンの縦一列に風薫る              植村 方円

病窓に光のはねる五月かな              横井 定利

点滴の刻む命や五月闇                岡田 鷹洋

キャンパスの杜を貫き五月来る            溝口戸無広

老木も若木もすべて柿若葉              中村 迷哲

天秤の揺れに任せて金魚売り             野田 冷峰

活鯵と出刃包丁の三十度               伊藤 健史

自販機でしばし休憩つばくらめ            旙山 芳之

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里、(見学)増田浩志。【投句参加27人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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