日経俳句会第213回例会

36人参加「十月」「黄落」を詠む

光迷句「家族葬」が最高12点、百子句「妻の早足」が9点で続く

日経俳句会は10月19日、令和4年10月例会(通算213回)を鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。朝晩寒くなり晩秋にふさわしい夕べ、14人が出席し賑やかな句会となった。「十月」と「黄落」の兼題に36人から108句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「家族葬にてとの便り秋時雨」が12点で一席に輝いた。二席は高井百子さんの「秋天や妻の早足追ひつけず」で9点、三席には向井愉里さんの「十月をあれこれ詰めて二段重」が8点で続いた。そのほか、先月入会したばかりの溝口戸無広さんの「十月や空へと続く千枚田」など、3句が6点で並んだ。以下、5点3句、4点3句、3点14句、2点22句、1点24句。4点以上が12句と少なく、まんべんなく得票した。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「十月」

十月をあれこれ詰めて二段重             向井 愉里

十月の昭和の五輪ふと浮ぶ              久保田 操

十月や空へと続く千枚田               溝口戸無広

十月やベッドの脇に予備毛布             大澤 水牛

十月や茶色の上着取り出して             植村 方円

十月の果実に我が身甘やかす             大下 明古

十月や夢百歳へ十五年                岡田 鷹洋

十月や三年ぶりの旅に出る              岩田 三代

十月の窓の明かりの暖かさ              中嶋 阿猿

十月の大気を吸ひて太極拳              中村 迷哲

「黄落」

黄落や踏んだ踏まぬの通学路             伊藤 健史

黄落にくるまれ眠る城趾かな             嵐田 双歩

夕映えの地獄の門に黄落す              須藤 光迷

黄落やゴッホの顔の無精ひげ             谷川 水馬

黄落や横浜日本大通り                廣上 正市

黄落の一葉拾いつ墓地探し              藤野十三妹

黄落の夕陽を掬ふボートかな             星川 水兔

「当季雑詠」

家族葬にてとの便り秋時雨              須藤 光迷

秋天や妻の早足追ひつけず              高井 百子

遺句集を編みて深々寒露の夜             大澤 水牛

蔦巻くや故郷の家は朽ち果てて            工藤 静舟

渡り鳥タワー見ゆると鳴き交はす           今泉 而云

幼子が母呼ぶ道に金木犀               岩田 三代

匂ひくる金木犀を探す路地              久保田 操

お互ひに立派な腹よ秋刀魚焼く            谷川 水馬

ゴム巻きの愛機を放つ天高し             中村 迷哲

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、向井愉里、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

 

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