村田英尾先生の墓参を兼ねて多摩森林科学園で桜狩する日経俳句会恒例の吟行が4月16日(土)に行われた。参加したのは大澤水牛幹事長、嵐田啓明、今泉恂之介、大下綾子、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子に特別参加の鈴木夫人玲子さんの11人。雨天かもという前日までの予報が良い方に外れ、午前十時集合のJR中央線高尾駅北口は、中高年のハイカー達で大賑わい。英尾先生の眠る都立八王子霊園へは駅前からバスで数分の距離である。
英尾先生が亡くなったのは平成17年3月2日で、今年が七回忌。ひと月余り遅れての墓参だったが、大澤さん、嵐田さんの先導で般若心経を全員で唱和しご冥福を祈った。昨年までは僧籍を持つ田中頼子さんが無量誦経を読むのが恒例。しかし今年は田中さんが仙台方面へ被災地救援のボランティア活動に参加したため、俄か導師の登場となった。
多摩森林科学園の桜は一重桜が満開、八重桜も盛りを迎える絶好のタイミング。多くの花見客が詰めかけ、上りの急な「夫婦坂」では数珠つなぎになって渋滞するほどだった。汗ばむ陽気の中、谷間の桜を見下ろす高台のベンチでお昼の弁当。おかずや飲み物を分け合ったりのひと時、時間がゆっくり流れる。
吟行を締めくくる句会は今回もメール句会として高尾駅前で解散、三々五々帰途についたが、半数ほどが駅前蕎麦屋に立ち寄った。二軒あって片方は満員、もう一軒の店構えはずっと立派だががらがらの方に入る。ちょっと悪い予感がしたが、案の定、めぼしい肴は何もない。その上、この暑さなのに冷たい蕎麦が無くて「全部温かいつゆ蕎麦」というまことに奇妙な蕎麦屋であった。
メール句会には、別の日に桜保存林に行った澤井二堂さんが加わり、11人から合計35句が寄せられた。5句選句の結果、啓明さんの「花筵男も似合ふ横座り」が6点を集め最高。次いで5点は3句あり、水牛さんの「飴玉といふ名の桜見つけたり」と、正裕さんの「春風に供花のかたち定まらず」「花一片受けんとかざす酒杯かな」。4点は「桜満つ読経こころを一つにし てる夫」、3点「花びらをのせて静まる墓石かな 佳子」と続いた。(堤てる夫記)
英尾先生墓参・桜吟行参加者の人気作品
花筵男も似合ふ横座り 嵐田 啓明
鶯に不意を衝かれし山路かな 今泉恂之介
飴玉といふ名の桜見つけたり 大澤 水牛
すいてをるそば屋に入る春の昼 大下 綾子
同じ花今年見る人異なりて 澤井 二堂
真似て読む般若心経花墓参 杉山 智宥
先生はここにおはすか花のもと 鈴木 好夫
東屋でひとり花見る男かな 須藤 光迷
桜満つ読経こころを一つにし 堤 てる夫
花一片受けんとかざす酒杯かな 徳永 正裕
花びらをのせて静まる墓石かな 星川 佳子