37人が「五月」「風薫る」を詠む
定利さん「香水びん」11点、双歩さん「水切り石」10点
日経俳句会は令和元年の初開催となる五月例会(通算179回)を5月15日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。兼題に合わせたように爽やかな風の吹くこの日は21人が出席、令和新時代の幕開けにふさわしく新旧メンバーが活発に議論を交わす句会となった。
兼題は「五月」と「風薫る」。37人から111句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、横井定利さんの「空つぽの香水のびん百二歳」が11点を集め最高。これに嵐田双歩さんの「水切りの石の眩しき五月かな」が10点で続き、8点句に加藤明生さんの「ジーンズの似合ふ少女や風五月」が入った。
7点句には「就職の次女のアパート風五月 芳之」と「さん付けで妻呼ぶ朝の新樹光 反平」が、6点句に「薫風や港見下ろす風見鶏 水馬」と「初鰹皿は小鹿田(おんた)の飛び鉋 双歩」がそれぞれ並んだ。このほか5点2句、4点7句、3点11句、2点21句、1点38句で、八割近い句に点が入った。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。
「五月」
水切りの石の眩しき五月かな 嵐田 双歩
ジーンズの似合ふ少女や風五月 加藤 明生
就職の次女のアパート風五月 旙山 芳之
匂ひ立つ故郷の五月笹だんご 大倉悌志郎
烏賊刺に生姜醤油の五月かな 今泉 而云
風五月つるりと光る椿の葉 澤井 二堂
五月来て青き葉擦れの渡りけり 水口 弥生
連休が明けて五月は元の顔 杉山 三薬
風五月空き家の貝塚伊吹かな 廣上 正市
「風薫る」
薫風や港見下ろす風見鶏 谷川 水馬
薫風や一羽の飛べば一羽追ひ 大下 綾子
薫風に空飛ぶ菩薩平等院 久保田 操
風薫る庭のパーティー三家族 堤 てる夫
掃き立ての団地緑道風薫る 旙山 芳之
「当季雑詠」
空つぽの香水のびん百二歳 横井 定利
さん付けで妻呼ぶ朝の新樹光 大沢 反平
初鰹皿は小鹿田(おんた)の飛び鉋 嵐田 双歩
蹴りあげたボールの向こう夏の雲 岡田 鷹洋
叱られて漕ぐぶらんこの空にじむ 大倉悌志郎
夏祭寄り眼で笑ふ狐面 谷川 水馬
行李から緋鯉目をむく五月晴れ 中沢 豆乳
自転車で来て緑陰の読書かな 今泉 而云
吊革に白き腕の薄暑かな 髙石 昌魚
堰上げや水路田毎に生き返る 堤 てる夫
紫陽花を描くパレット万華鏡 中沢 豆乳
空豆を噛めば故郷の野山見ゆ 中村 迷哲
振り返りなほ振り返る桐の花 廣上 正市
《参加者》(出席)嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、高井百子、髙石昌魚、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、野田冷峰、星川水兎、水口弥生。(投句参加)岩田三代、植村博明、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、加藤明生、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、政本理恵、向井ゆり、横井定利。 (報告・中村迷哲)