芭蕉の旧跡を巡る東阪合同の大阪吟行が11月29、30の一泊二日で実現した。タイトルは大阪吟行だが、初日は琵琶湖周辺を歩き、翌30日に大阪市内散策と句会という段取り。参加は、東京組=嵐田双歩、植村方円、金田青水、杉山三薬、中村迷哲、向井愉里、大阪組=伊藤健史、岡松卓也、高橋ヲブラダの9名。琵琶湖畔周遊には、迷哲さんの後輩で大津在住の日経OB田村雅弘さんが同行して、案内役を務めてくださった。
京都駅新幹線コンコースにある「松葉」という蕎麦屋前に午前十一時すぎに全員集合。昼食に京都の蕎麦を食べた後、JRで琵琶湖畔の唐崎駅へ。天気はこれ以上の晴はない、というぐらいの快晴。駅から普通の住宅街をしばし行くと、「唐崎の松」で知られる唐崎神社に行き着いた。いきなり琵琶湖の景色が広がる。ここで田村雅弘さんと合流した。唐崎神社は「琵琶湖の盲腸」などとも呼ばれる南湖沿いにあるが、それでこのスケールか、と改めて琵琶湖の大きさに驚く。
唐崎にまつ友来たり冬の浜 卓也
冬晴れの琵琶湖に遊ぶ舟と鴨 愉里
電車とバスを乗り継ぎ、全国の日吉・日枝・山王神社の総本宮である日吉大社に向かう。境内に植えられた三千本のモミジが真っ盛りで、関西有数の紅葉の名所に目を奪われた。
山紅葉目を奪われて大社 方円
日短し時刻表手に旅案内 ヲブラダ
次は芭蕉の墓のある義仲寺。境内には、あちこちに芭蕉が植えられていて、季節外れの花を枯らしたところだった。
寺守の軽妙トーク冬ぬくし 迷哲
義仲寺や生き様のあり枯芭蕉 健史
JR膳所駅から大阪へ。御堂筋の芭蕉終焉の地に向かう。終焉の地を示す石碑は車道の中の緑地帯にポツンとある。時間も17時半過ぎ。すでに暗くなっていて、御堂筋の街路樹にイルミネーションが灯されている。通り過ぎるヘッドライトの脇の小さな石碑を見ていると、なんとも無常感を覚える。
翌朝、地下鉄と南海電車を乗り継ぎ住吉大社の向かいにある住吉公園の芭蕉句碑へ。記された「升買て分別かはる月見かな」という句を観賞したあと、大社へ。よう来たな住吉さんの七五三 青水
案内役ヲブラダの勘違いで、新世界を目指して乗ったはずの阪堺鉄道は天王寺へ。次の目的地新世界に行くには、かなり歩く必要がある。
はからずもあべのハルカス冬日差す 三薬
大混雑の天王寺公園を抜けて新世界へ。通天閣は長蛇の列で、上るのは諦めて記念撮影。地下鉄で北浜に行き、昼食を済ませて、いよいよ句会場の大阪市中央公会堂へと向かった。
冬日影昭和のままの新世界 双歩
大阪市中央公会堂は1918年に建てられ、一時老朽化で取り壊しも検討されたが保存・改修工事がなされ、2002年に国の重要文化財に指定されている。ひょっとすると重文での句会は日経俳句会史上、初めてではないだろうか。句会は短冊で投句し、清記、選句・披講する酔吟会方式で実施。三句投句で五句選、うち特選一句とし、双歩さんの司会によりテンポよく進んだ。時間があったので点の入った全句を合評、様々な句評が飛び交い、盛り上がった。健史さん、卓也さんは初めての本格対面句会だったそうだが、楽しまれたのではないだろうか。 (報告 高橋ヲブラダ)





