首位に双歩句「譲られし席」、二席に明生句「親子熊」
「酉の市」と「熊」を詠む
日経俳句会は令和7年11月例会(通算244回)を11月16日(日)午後2時から鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター集会室で開いた。小春日日和に誘われて9人が顔を揃え。和気あいあいの句会を楽しんだ。兼題は「酉の市」と「熊」。37人から110句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、嵐田双歩さんの「譲られし席に温もり冬初め」が11点を獲得し断トツの首位。二席には加藤明生さんの「駆除といふ言葉が哀れ親子熊」が7点で続いた。三席6点には岩田千虎さんの「お多福が姉に似ている大熊手」、中沢豆乳さんの「父の手の温もりうれし酉の市」と「冬隣一抜け二抜けクラス会」、さらに水口弥生さんの「ビル越しの富士のてっぺん冬来る」の4句が並んだ。このほか5点7句、4点6句、3点9句と高点句が28句を数え、2点16句、1点28句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「酉の市」
お多福が姉に似ている大熊手 岩田 千虎
父の手の温もりうれし酉の市 中沢 豆乳
酉の市英語で値切るツアー客 岡田 鷹洋
酉の市メトロ狭しと大熊手 杉山 三薬
とりどりのヒジャブが笑う酉の市 伊藤 誠一
酉の市果てて寂しき裏通り 大沢 反平
酉の市なにはともあれ屋台酒 藤野十三妹
天空へ手打ち抜け行く一の酉 金田 青水
背負はれて笑ふ福神酉の市 中村 迷哲
酉の市いつしか他人事となり 向井 愉里
「熊」
駆除といふ言葉が哀れ親子熊 加藤 明生
冬隣一抜け二抜けクラス会 中沢 豆乳
熊撃たれ更に深まる森の闇 植村 方円
剥製の熊に見張られ蕎麦を食ふ 中嶋 阿猿
熊闊歩マタギ文化の遠くなり 工藤 静舟
襲わねば熊にあげたき庭の柿 高井 百子
腹減らし眠らぬ熊に寝られぬ町 中村 迷哲
熊ゐない千葉のあちこち柿たわわ 嵐田 双歩
熊よ熊里には人の暮らしあり 篠田 朗
穴に入る熊にやりたや一升瓶 藤野十三妹
当季雑詠
譲られし席に温もり冬初め 嵐田 双歩
ビル越しの富士のてっぺん冬来る 水口 弥生
回送の電車ゆるりと冬に入る 植村 方円
初時雨アンモナイトの泳ぐ壁 金田 青水
小夜時雨猫駆け込みし映画館 高橋ヲブラダ
筑波山夕陽のなかの烏瓜 池村実千代
落葉踏む音なきエールやデフ五輪 伊藤 誠一
牡蠣洗い独り酌む夜の北斗星 須藤 光迷
《参加者》【出席9人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中村迷哲、向井愉里、溝口戸無広。【投句参加28人】池村実千代、和泉田守、伊藤誠一、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、横井定利。
(報告 中村迷哲)





