17人参加、「鰯雲」と「水澄む」を詠む
可升さんの“挑む古城”がトップ6点
番町喜楽会は令和7年10月4日(土)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で第232回例会を開催した。朝晩ようやく涼しくなり、ことにこの日は夕方に一雨あって過ごしやすくなったのだが、これまでの異常な猛暑続きで家族や自身の体調に狂いを生じた向きもあり、出席者は7人に止まった。ただし欠席者も全員投句、番喜会常連17人の句が出そろった。今回の兼題は「鰯雲」と「水澄む」。投句総数は82句で、6句選(欠席者は5句)で選句を進めた結果、第一席「天」の位は6点で廣田可升さんの「秋灯下挑む古城は一〇〇〇ピース」。「地」の位5点には嵐田双歩さんの「国東の水澄む磯の兜蟹」、斉山満智さんの「しっぽ立て迎える猫のいない秋」、大澤水牛さんの「百千の嘘を沈めて水澄めり」の3句が並んだ。「人」の位4点には6句がひしめき合い、3点3句、2点10句、1点18句という乱戦模様を呈した。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「鰯雲」
生涯の転居いくたび鰯雲 徳永 木葉
能登の海越えて棚田へ鰯雲 須藤 光迷
その下は海なし県や鰯雲 玉田春陽子
電柱は地中化してよ鰯雲 須藤 光迷
鰯雲手足拡げて露天風呂 前島 幻水
「水澄む」
百千の嘘を沈めて水澄めり 大澤 水牛
国東の水澄む磯の兜蟹 嵐田 双歩
水澄むや跡継ぎ募る和紙の里 中村 迷哲
水澄むやダムの底には古き村 星川 水兎
「当季雑詠」
秋灯下挑む古城は一〇〇〇ピース 廣田 可升
しっぽ立て迎える猫のいない秋 斉山 満智
故郷へ喪服いくたび流れ星 廣田 可升
秋冷や夕闇まとふ杉の玉 玉田春陽子
《参加者》【出席7人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。【投句参加10人】嵐田双歩、池内的中、斉山満智、澤井二堂、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。
(報告 大澤水牛)