35人参加「後の月」と「とろろ汁」を詠む
首位はヲブラダ句「咽頭がん」、二席に三薬句「千住大橋小橋」
日経俳句会は10月15日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で10月例会(通算243回)を開いた。ようやく涼しくなった途端に、この日は肌寒さを感じるほどの秋の夕。出席者は9人と少なかったものの、いつものように忌憚のない句評もあり、実りある句会となった。「後の月」と「とろろ汁」の兼題に、35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は高橋ヲブラダさんの8点句「咽頭がん全て取れたぞとろろ汁」、二席は杉山三薬さんの「十三夜千住に大橋小橋あり」が6点で続いた。三席は、高井百子さんの「生家跡灯籠だけの十三夜」、岩田千虎さんの「溜息も愚痴も呑み込みとろろ汁」、須藤光迷さんの「塗箸の先の剥げたりとろろ汁」、大沢反平さんの「老妻の食の細さよ衣被」、中村迷哲さんの「鳥獣とせめぎ合ふ里秋深し」の5句が5点で並んだ。以下、4点10句、3点14句、2点18句、1点22句だった。
兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「後の月」
十三夜千住に大橋小橋あり 杉山 三薬
生家跡灯籠だけの十三夜 高井 百子
万博や残るリングに後の月 伊藤 健史
縁台に君の残り香後の月 中野 枕流
たたら跡渡来の墓や十三夜 廣上 正市
一筋の航跡照らす後の月 岩田 千虎
いつまでも続くおしやべり十三夜 加藤 明生
古書店のビルの狭間に後の月 久保田 操
十三夜塔にぽつんとポンジュース 高井 百子
礎石だけ残る都府楼後の月 中村 迷哲
雲切れて不作の村に後の月 中沢 豆乳
「とろろ汁」
咽頭がん全て取れたぞとろろ汁 高橋ヲブラダ
溜息も愚痴も呑み込みとろろ汁 岩田 千虎
塗箸の先の剥げたりとろろ汁 須藤 光迷
ちさき手ですり鉢おさえとろろ汁 池村実千代
けふもまたする事もなきとろろ汁 伊藤 誠一
分け合いし人思い出すとろろ汁 伊藤 健史
擂鉢は妻が抑へてとろろ汁 大澤 水牛
とろろ汁隅田の川をそばに見て 加藤 明生
すり鉢は孫の支えるとろろ汁 中村 迷哲
当季雑詠
老妻の食の細さよ衣被 大沢 反平
鳥獣とせめぎ合ふ里秋深し 中村 迷哲
顔洗ふ蛇口の水に遅き秋 岩田 千虎
寛解と手をにぎり合ふ菊日和 金田 青水
庭の柿陽射しを浴びて輝けり 堤 てる夫
秋ともし古事記の謎に迷ひ込む 徳永 木葉
野に還る途中の棚田赤とんぼ 廣上 正市
日本にたまたま生まれ栗ご飯 嵐田 双歩
欲少し米寿迎える豊の秋 岡田 鷹洋
気球より眺むる古墳秋深し 加藤 明生
夜学の灯小百合と学び傘寿なり 中沢 豆乳
《参加者》【出席9人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、篠田朗、杉山三薬、中村迷哲、星川水兎、溝口戸無広。【投句参加26人】池村実千代、伊藤誠一、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、向井愉里、横井定利。 (報告 嵐田双歩)






