日経俳句会第238回例会

一席8点に豆乳・正市・方円句が並ぶ

35人が「春の月」「若草」詠む

日経俳句会は4月16日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で4月例会(通算238回)を開いた。大方の花も散り、ようやくコートが手放せる陽気になってきたこともあり、この日は14人が出席、和やかな句会となった。

兼題は「春の月」と「若草」。35人から104句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、中沢豆乳さんの「春の月乗せて鈍行動き出す」、廣上正市さんの「若草や才女と云はれし日の遠く」、植村方円さんの「雨降りと知れば二度寝の春の朝」の3句がいずれも8点を獲得、一席となった。二席には星川水兎さんの「昭和の日沈没船に住む魚」が7点で続いた。三席の5点句は6句あり、光迷句と迷哲句のほかに千虎句と愉里句がそれぞれ2句ずつ選ばれた。以下、4点6句、3点16句、2点15句、1点26句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「春の月」

春の月乗せて鈍行動き出す              中沢 豆乳

縄文のヴィーナス見上ぐ春の月            岩田 千虎

何処へか上着失くして春の月             向井 愉里

朝焼の空のはづれに春の月              金田 青水

山火事のすべなき闇に春の月             久保田 操

かみさんがちよつぴり美人春の月           横井 定利

沖合いに薄々とあり春の月              大沢 反平

三宝にたこ焼き載せて春の月             杉山 三薬

大荒れの相場が閉じて春の月             中嶋 阿猿

春の月顎のラインをそっと見る            中野 枕流

春の月雲を裏より透かしけり             溝口戸無広

消灯の窓辺に仰ぐ春の月               向井 愉里

「若草」

若草や才女と云はれし日の遠く            廣上 正市

若草やむかし砦のありし丘              須藤 光迷

若草の土手に寝転ぶ二軍戦              中村 迷哲

若草を分けて一両列車行く              向井 愉里

若草を喰むや短足寒立馬               嵐田 双歩

若草や太古の力野に満ちて              岩田 千虎

若草に椅子を並べてコンサート            植村 方円

若草やこのやはらかさあの青春            大沢 反平

仰向けに五体投地の若草野              金田 青水

若草を踏む再婚の十余年               高井 百子

当季雑詠

雨降りと知れば二度寝の春の朝            植村 方円

昭和の日沈没船に住む魚               星川 水兎

横殴り桜吹雪の中に居る               岩田 千虎

富士見えるE席なれど目借時             嵐田 双歩

かげろふの奥へ奥へと友ゆけり            大澤 水牛

花筏親は目で追ひ子は走り              高橋ヲブラダ

老桜幹の小枝も花こぼる               和泉田 守

つむじ風輪舞乱舞の花吹雪              徳永 木葉

花の下安吾は仏と宴する               藤野十三妹

空白く紛れさうなる桜かな              溝口戸無広

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、溝口戸無広、向井愉里。【投句参加21人】和泉田守、伊藤誠一、伊藤健史、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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