日経俳句会第233回例会

迷哲句「子らの声」が10点、二席は木葉句・双歩句が並ぶ

「秋深し」「小鳥来る」を詠む

日経俳句会は10月16日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で10月例会(通算233回)を開いた。10月になっても夏日が続き、この日も曇天ながら蒸し暑い夕刻。急に来られなくなった人があって出席者は9人と少なかったが、坂部さんという現役の方が見学に来てくれて選句に参加、計10人の句会となった。「秋深し」と「小鳥来る」の兼題に、34人から102句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は中村迷哲さんの10点句「子らの声聞こえぬ団地小鳥来る」、二席は嵐田双歩さんの「太陽の匂ひ束ねて今年藁」と徳永木葉さんの「吊るし鮭鬼の貌して風の中」が9点で並んだ。三席は須藤光迷さんの8点句「尻撫でて行く人もあり青蜜柑」だった。以下、7点2句、6点3句、5点1句、4点6句と特定の句に人気が集まった。その他、3点7句、2点21句、1点25句だった。向井愉里さんの紹介で見学に見えた坂部富士子さんは、日経プラザ&サービスの社員で、現在は日経HR本部に出向中。この日は選句に参加してもらった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「秋深し」

秋深し向う三軒未亡人                藤野十三妹

刈られたる越後の広さ秋深し             溝口戸無広

ごみ出しの猫背の老爺秋深し             谷川 水馬

秋深し明かりの漏れる製本所             徳永 木葉

秋深し荒砥すべらす鍬と鎌              廣上 正市

秋深し他人の空似とすれ違ひ             植村 方円

秋深し煎餅よりも蒸し饅頭              澤井 二堂

風干しの鮎の色錆び秋深し              中沢 豆乳

秋深し仏の指の少し反り               岩田 千虎

秋深しころんじやだめよころぶなよ          横井 定利

「小鳥来る」

子らの声聞こえぬ団地小鳥来る            中村 迷哲

小鳥来て旅の誘いの二つ三つ             中嶋 阿猿

小鳥来る百年蔵の喫茶店               星川 水兎

小鳥来る万年筆をそつと置く             溝口戸無広

小鳥来る知覧の空へ今日もまた            加藤 明生

当季雑詠

太陽の匂ひ束ねて今年藁               嵐田 双歩

吊るし鮭鬼の貌して風の中              徳永 木葉

尻撫でて行く人もあり青蜜柑             須藤 光迷

金継ぎの碗の温もり秋時雨              中嶋 阿猿

主老いて荒れたる庭や薮枯らし            杉山 三薬

秋さぶや隣家の窓の開かぬまま            廣上 正市

虫の音に包まれてゐる家路かな            溝口戸無広

秋時雨ぽつぽつ語る通夜の席             向井 愉里

《参加者》【出席10人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、坂部富士子(見学)、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】池村実千代、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

 

This entry was posted in 句会報告. Bookmark the permalink.

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>