日経俳句会第230回例会

双歩句「夫婦喧嘩」が最高8点、二席は明生・操・水兎句並ぶ

「暑中見舞」と「素麺」を詠む

日経俳句会は令和6年7月例会(通算230回)を7月17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。梅雨明け目前の蒸し暑さの中、12人が元気な顔を見せ句会に臨んだ。兼題は「暑中見舞」と「素麺」。38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、嵐田双歩さんの「冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに」が8点で一席となった。二席6点には加藤明生さんの「添書きの文字の細さよ夏見舞」、久保田操さんの「またひとつ老舗閉店竹落葉」、星川水兎さんの「蓮の葉を回る雨つぶ池之端」の3句が並んだ。三席5点は中嶋阿猿さんの「書くことも来ることもなし暑中見舞い」をはじめ8句が入った。このほか4点6句、3点11句、2点18句、1点34句で、全体にまんべんなく点が入った印象だった。

なお句会の席上、岩田三代さんが俳号「千虎(ちこ)」を名乗ることを表明、拍手で了解された。由来は髪をおかっぱにしたところ、友人から「NHK番組のチコちゃんに似ている」とチコと呼ばれるようになり、この愛称に漢字をあてたもの。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「暑中見舞」

添書きの文字の細さよ夏見舞             加藤 明生

書くことも来ることもなし暑中見舞い         中嶋 阿猿

夏見舞おもて面まで続きけり             星川 水兎

絵手紙に似合ふ癖字や夏見舞             嵐田 双歩

貝描く暑中見舞に海の音               篠田  朗

安否まず問ひて問はれて夏見舞            水口 弥生

薄墨や優しき筆の夏見舞               池村実千代

墨痕に気合の暑中見舞かな              今泉 而云

色褪せし暑中見舞いに母の文字            岩田 三代

ご無沙汰をラインで交はす夏見舞           久保田 操

下手な絵に生きているぜと夏見舞           中村 迷哲

「素麺」

冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに             嵐田 双歩

古のラガー揃ひて冷素麺               池村実千代

FMはギターの調べ冷素麵              和泉田 守

素麵に孫の健啖ほれぼれと              今泉 而云

つれあひの霊に索麺供へたり             金田 青水

素麺をたらいで冷やす子沢山             杉山 三薬

箸握り流し素麺待てる子ら              徳永 木葉

冷素麺妻病褥の笑顔かな               廣上 正市

当季雑詠

またひとつ老舗閉店竹落葉              久保田 操

蓮の葉を回る雨つぶ池之端              星川 水兎

自販機を落ちて響きし夜のビール           今泉 而云

旧盤のだるい曲聴く夏の夜              植村 方円

三文字の暖簾くぐりて泥鰌鍋             中野 枕流

富士山に縦じま見えて夏来たる            野田 冷峰

勘違いと言い放つ君夏の果              向井 愉里

無精菜園バット胡瓜の不貞寝する           大澤 水牛

理由なく諍ふ夫婦梅雨の雷              中村 迷哲

ゆつくりとグライダー行く夏木立           溝口戸無広

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、植村方円、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。

【投句参加26人】和泉田守、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、星川水兎、増田浩志、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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