日経俳句会令和5年度下期合同句会
一席は水兎句「冬すみれ」、二席春陽子句「空っ風」
17人出席し、納めの会
日経俳句会は12月20日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で下期合同句会を開いた。季節外れの陽気は何処へやら、急に寒くなり師走らしい気候となったこの日、17人が出席し今年最後の熱い句会となった。「年の暮」の兼題に、当季雑詠含め39人から117句の投句があり事前選句の結果、星川水兎句「冬すみれ城の名残の野面積」が10点を獲得し一席に輝いた。次いで二席には玉田春陽子句「全集に朱文字の値札空つ風」が9点で続き、三席にはこの日、日経俳句会賞英尾賞を受賞した徳永木葉さんの「この年の傷を浸して柚子湯かな」(7点)が入った。6点句には澤井二堂句「何もかも妻の仕切りや年の暮」、溝口戸無広句「理髪師の刻むリズムや年の暮」、廣田可升句「伴侶といふ不思議の縁冬の旅」、水口弥生句「年の暮三倍速のひと日ずつ」の4句が並んだ。以下、5点4句、4点5句、3点14句、2点19句、1点25句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「年の暮」
何もかも妻の仕切りや年の暮 澤井 二堂
理髪師の刻むリズムや年の暮 溝口戸無広
年の暮三倍速のひと日ずつ 水口 弥生
一年の一日のごとく年暮るる 嵐田 双歩
今年こそマニキュア塗って年の暮 池村実千代
年の暮我慢できずに犬を買う 鈴木 雀九
一年の禍福煮こごる年の暮 中沢 豆乳
喜寿こえてヨットレースや年の暮 池村実千代
いくつかの不義理ともども年の暮 和泉田 守
拍子木の一夜一夜に年果つる 今泉 而云
この星もヒトも狂ひて年の果 岩田 三代
夫婦して初期認知症年暮るる 大澤 水牛
年の暮流るる雲の迅さかな 加藤 明生
酒干て生きて迎えし年の果 久保 道子
鼻歌を歌へば破調年の暮れ 髙橋ヲブラダ
腹立ちも右へ左へ年の暮 向井 愉里
当季雑詠
冬すみれ城の名残の野面積 星川 水兎
全集に朱文字の値札空つ風 玉田春陽子
この年の傷を浸して柚子湯かな 徳永 木葉
伴侶といふ不思議の縁(えにし)冬の旅 廣田 可升
凪ぐ海に星瞬くや十二月 加藤 明生
ペンギンの一列縦隊冬うらら 谷川 水馬
雑踏を歩くも楽し手帳買う 和泉田 守
川音の轟渡る冬露天 植村 方円
もみ殻の林檎を掘りし幼き日 中村 迷哲
オラショ聴く祈りの島に冬の月 岩田 三代
孫と子と婿と師走の水天宮 金田 青水
狂い咲きもう振り向かぬ自然界 工藤 静舟
新海苔の香の束の封を切る 玉田春陽子
片っぽの靴下みっつ冬座敷 中沢 豆乳
《参加者》【出席17人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加22人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、玉田春陽子、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。 (報告 嵐田双歩)