最高9点に木葉句「百日紅」
厳しい残暑の中、「秋」と「桃の実」を詠む
日経俳句会は令和5年8月例会(通算221回)を8月16日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。秋とはいえ「油照」のこの日、連日の暑さで体調を崩す人が続出し、出席者は11人にとどまった。
兼題は「秋」と「桃の実」で、36人から108句の投句があった。今年は異常な暑さの中、三秋の大きな季語「秋」を読むのに苦労したようだ。6句選(欠席は5句)の結果、徳永木葉さんの「地に落ちて星屑となる百日紅」が9点で一席。次いで、廣上正市さんの「三食をまかなふ日々のままに秋」が8点で二席、三席には星川水兎さんの「湯上がりの首筋の風秋ひとつ」、中野枕流さんの「籠の桃目だけで探る熟れ具合」、中村迷哲さんの「セシウムを測る山野や桃実る」が6点で並んだ。以下、5点1句、4点14句、3点8句、2点17句、1点27句で、4点句続出が今回の特徴だった。
なおこの日の句会では、日経新聞社の採用サイトに掲載するための句会風景写真を撮った。総務局では日経で働くイメージを就活生に伝えることを狙いに採用ツイッター(現在はX)を運用している。社員の交流の場としてサークルも紹介されており、日経俳句会も取り上げたいと要請があり、この日の撮影となったもの。嵐田カメラマンが和気あいあいとした句会の雰囲気を捉えた写真を撮影した。8月20日過ぎには掲載されるので、ツイッターをお使いの方はアクセスしてみて欲しい。
この日の兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。
「秋」
三食をまかなふ日々のままに秋 廣上 正市
湯上がりの首筋の風秋ひとつ 星川 水兎
秋なのだ秋なんだぞと云ひ聞かせ 大澤 水牛
色抜けし花あぢさゐの揺れる秋 金田 青水
夕暮れの余熱の中に秋の風 篠田 朗
こんなにも待ち遠しきは秋の風 旙山 芳之
しわしわの手にもエチュード秋の夜 池村実千代
秋立つや昨日と違ふ今日の風 加藤 明生
朝の陽の畳に届き秋に入る 高井 百子
秋の空鳶颯爽と三方五湖 谷川 水馬
伏せられて厨に秋の魔法瓶 徳永 木葉
「桃の実」
籠の桃目だけで探る熟れ具合 中野 枕流
セシウムを測る山野や桃実る 中村 迷哲
ちょこなんと祖母似の桃を仏前に 谷川 水馬
親の家売りに出す夜や桃二つ 中嶋 阿猿
桃の香を解き放ちける宅急便 斉藤 早苗
当季雑詠
地に落ちて星屑となる百日紅 徳永 木葉
原爆忌白磁茶碗に白湯満たし 嵐田 双歩
語り部のまた一人逝き原爆忌 岩田 三代
落としたる葡萄ばらばら原爆忌 大澤 水牛
盆踊り玄人はだし外科院長 岡田 鷹洋
四十度焼かれた蝉の骸かな 篠田 朗
捨てられし絵筆の先は夏の色 高井 百子
群衆のやがて静まる大文字 高橋ヲブラダ
鳴き尽くし宙向く骸夏の果 中村 迷哲
新盆や天涯孤独の身となりぬ 藤野十三妹
環七の西日の側にバスを待つ 今泉 而云
武器輸出なんかしないで敗戦日 須藤 光迷
《参加者》【出席11人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、金田青水、篠田朗、鈴木雀九、中沢豆乳、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】和泉田守、岩田三代、植村方円、岡田鷹洋、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。
(報告 嵐田双歩)