反平句「添い寝」が最高10点、二席9点方円句「サプリ」
兼題の「獺祭」にみんな苦吟
日経俳句会は2月15日、内神田の日経広告研究所会議室で2月例会(通算216回)を開いた。この日は厳しい寒の戻りで、冷たい北風に震え上がった。体調を崩した会員もいて出席は13人とやや寂しかったが、合評会に入ると議論百出。熱気で暖房温度を下げるほどだった。
兼題は、この日に相応しく「余寒」と珍しい季語「獺祭」。特に獺祭は苦吟の跡のにじむ句が多かった。36人から106句が集まり、選句6句(欠席5句)の結果、一席は大沢反平さんの「介護の夜妻に添い寝の余寒かな」が10点。二席には植村方円さんの「気休めのサプリ並べて獺祭」が9点で続いた。三席は「おばちゃんもモンローになる春一番」中沢豆乳さんと「梅東風や茶筒の蓋のぽんと鳴る」星川水兔さんが7点で並んだ。以下6点3句、5点4句、4点6句、3点9句、2点27句、1点18句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「余寒」
介護の夜妻に添い寝の余寒かな 大沢 反平
ダウン着て少女ビラ撒く余寒かな 中村 迷哲
熱燗を飛切燗とする余寒 大澤 水牛
真鍮の手摺に宿る余寒かな 中嶋 阿猿
夜の地震掴む柱の余寒かな 星川 水兎
花柄の傘の手すくむ余寒かな 溝口戸無広
きーきーと鳥姦しき余寒かな 嵐田 双歩
らっしゃいの笑顔が溶かす余寒かな 金田 青水
吉報に余寒吹き飛ぶ受験生 篠田 朗
衣装箱再び荒るる余寒かな 髙石 昌魚
「獺祭」
気休めのサプリ並べて獺祭 植村 方円
膏薬を肩に背中に獺祭 嵐田 双歩
片付かぬ部屋にこもりて獺祭 岩田 三代
ほろ酔ひて書店漁るや獺祭 溝口戸無広
老いてなほ食べ盛りなり獺祭 加藤 明生
獺祭り口伝も絶えて村廃る 篠田 朗
獺祭の部屋から長女いざ国試 旙山 芳之
当季雑詠
おばちゃんもモンローになる春一番 中沢 豆乳
梅東風や茶筒の蓋のぽんと鳴る 星川 水兔
増え続く空き家どうする猫の恋 須藤 光迷
雪掻けば近所交流始まりぬ 高井 百子
ゆらゆらと光の波紋水温む 岩田 三代
終バスのまた一人減り冴返る 嵐田 双歩
春浅し巣穴の熊の二度寝かな 篠田 朗
朝のミサ何だか嬉し春の雪 池村実千代
百まではまだ十五年春うらら 横井 定利
《参加者》【出席13人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】伊藤健史、岩田三代、大沢反平、大下明古、加藤明生、金田青水、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。 (報告 嵐田双歩)