今年最高の114句が集まる
一席8点「浜ことば」迷哲句、二席7点「糊づくり」青水句
日経俳句会の令和3年11月例会(通算204回)は、コロナ感染が下火となり17日に前月に続き対面で開催した。兼題は「目貼」と「牡蠣」。38人から114句と今年最高の投句があり、日常が戻るにつれ句作の意欲も高まっているようだ。句会の出席は12人とやや少なかったが、出席者に高点句が多く合評会は盛り上がった。6句選の結果、中村迷哲さんの「牡蠣打ちの陽気な婆の浜ことば」が最高8点を獲得。二席7点には金田青水さんの「飯粒で兄と目貼の糊づくり」が入り、三席6点には「飼馴れし猫に死なるる夜寒かな(水牛)」と「仁丹が香る亡父の冬背広(豆乳)」、「朝の汁青菜ざくざく冬に入る(正市)」の3句が並んだ。このほか5点6句、4点6句、3点8句と3点以上の高点句が25句にのぼった。以下2点20句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「目貼」
飯粒で兄と目貼の糊づくり 金田 青水
目貼して秘密基地めく四畳半 嵐田 双歩
目貼して世にかた時の安堵来る 向井 ゆり
熊眠るルシャの番屋の板目貼 中沢 豆乳
目貼して劇団員の猛稽古 植村 方円
目貼して風の音聞く安下宿 篠田 朗
目貼せし窓より連山雲の帯 中嶋 阿猿
「牡蠣」
牡蠣打ちの陽気な婆の浜ことば 中村 迷哲
帰京する朝に立ち寄り牡蠣打ち場 向井 ゆり
生牡蠣やシャンゼリーゼの風の中 大沢 反平
エッフェル塔眺めつ牡蠣の三種盛 須藤 光迷
牡蠣の身のなまめく光すすりけり 流合研士郎
生の牡蠣食へぬ男と食ふ女 横井 定利
お隣も眼鏡外すや牡蠣雑炊 植村 方円
煎牡蠣やことばのいらぬ老二人 大澤 水牛
牡蠣啜る舌に滑らか潮香る 久保田 操
宇宙屑海に落ちしは牡蠣の殻 中嶋 阿猿
「当季雑詠」
飼馴れし猫に死なるる夜寒かな 大澤 水牛
仁丹が香る亡父の冬背広 中沢 豆乳
朝の汁青菜ざくざく冬に入る 廣上 正市
冬桜わが身もか細くなりにけり 大沢 反平
短日や交通巡査尖る笛 岡田 鷹洋
夕時雨裏路地駆けるランドセル 中村 迷哲
冬うらら忘れたきこと忘れたり 嵐田 双歩
孫忘れし玩具ぽつんと冬に入る 徳永 木葉
《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、向井ゆり.【投句参加26人】池村実千代、和泉田守、岩田三代、植村方円、大沢反平、大下明古、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、横井定利. (報告 中村迷哲)