明古さん「楼蘭の遺跡」が圧巻の14点
ゆりさん、三代さんと続き、女性が三席占める
日経俳句会の8月例会(第191回)は、句会予定の8月19日(水)を締切としてメール句会を行った。梅雨明けとともに猛暑が襲い、新型コロナも感染拡大が著しく、対面での句会を断念、二月以降半年連続のメール句会となった。今回の兼題は「夜這星」と「原爆忌」。暑さにもめげず35人から105句の投句があった。5句選の結果、大下明古さんの「楼蘭の砂中の遺跡夜這星」が14点を集め堂々の一席。次いで、向井ゆりさんの「閉店の貼紙千切れ秋の雷」が10点、岩田三代さんの「悲しみは赤錆となり原爆忌」が8点と、一、二、三席を女性会員が独占した。続いて、6点句に「折鶴に風さやさやと原爆忌(而云)」と「豊かさを詫びる気持ちや原爆忌(博明)」が並んだ。以下、5点1句、4点8句、3点11句、2点14句、1点28句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「夜這星」
楼蘭の砂中の遺跡夜這星 大下 明古
収束に数多の願ひ流れ星 池村実千代
願ひ事半ばで消ゆる夜這星 中村 迷哲
里帰り叶わぬ吾子へ流れ星 大沢 反平
来ぬ人を迎へにゆくや流れ星 中嶋 阿猿
「原爆忌」
悲しみは赤錆となり原爆忌 岩田 三代
折鶴に風さやさやと原爆忌 今泉 而云
豊かさを詫びる気持ちや原爆忌 植村 博明
語り部がまたひとり逝く原爆忌 加藤 明生
佛花赤く不忍に咲き原爆忌 鈴木 雀九
厚塗りの黒き油絵原爆忌 谷川 水馬
原爆忌一秒前と一秒後 星川 水兎
原爆忌マスクのままで手を合はす 嵐田 双歩
原爆忌子との話しに孫も入る 澤井 二堂
黒い雨なほ降り止まぬ原爆忌 向井 ゆり
「当季雑詠」
閉店の貼紙千切れ秋の雷 向井 ゆり
新涼や久方ぶりの理髪店 髙石 昌魚
踏み入れば蝉の国なり森の中 今泉 而云
無言館訪ふ人のなく秋の声 高井 百子
厄災の町にあかあか盆の月 嵐田 双歩
走馬燈戻らぬ過去も廻りけり 加藤 明生
如己堂を訪ねし真昼蝉時雨 堤 てる夫
絵日記に描くことなしに夏終わる 中村 迷哲
蝉の声聞き分けてをる暮色かな 廣上 正市
御先祖のみたま重たし茄子の馬 藤野十三妹
《参加者》嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、植村博明、大澤水牛、大沢反平、大下明古、大平睦子、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、金田青水、久保田操、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、高石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中村迷哲、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生向井ゆり、横井定利。 (報告 嵐田双歩)