合同句会初のメール句会で「短夜」と「毛虫」を詠む
三代さんの「墓が見守る」が圧倒的13点で一席
日経俳句会は、6月17日(水)に開く予定だった令和二年度上期合同句会(通算30回)をメール句会に切り替えて開催した。新型コロナはやや小康状態だが、意味不明の東京アラートなるものが発令中でもあり、会場の都合もあってメール句会とした。
合同句会に相応しく、「短夜」と「毛虫」の兼題に38人から114句の投句があった。5句選の結果、岩田三代さんの「真ん中で墓が見守る田植かな」が13点もの圧倒的人気を集め一席。二席には「明易や明けきる前の街若し」(阿猿)、「ジパング手帳まっさらのまま夏最中」(水牛)、「全身で逃げる毛虫の速さかな」(双歩)の三作品が7点で並んだ。三席は「短夜やうす紫の街の色」(水兎)、「輪廻して毛虫だつたらまあいいか」(可升)が6点で続いた。以下5点2句、4点9句、3点10句、2点18句、1点25句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「短夜」
明易や明けきる前の街若し 中嶋 阿猿
短夜やうす紫の街の色 星川 水兎
短夜やもう朝刊のバイク音 須藤 光迷
短夜やゾンビドラマの続き観る 嵐田 双歩
短夜やトロトロと寝て夢多し 岩田 三代
盃置けばはや短夜の白み初め 大澤 水牛
短夜や光秀の謎解けぬまま 大沢 反平
短夜や夢の続きを惜しむ夢 髙石 昌魚
さざ浪の音して近江明易し 廣田 可升
「毛虫」
全身で逃げる毛虫の速さかな 嵐田 双歩
輪廻して毛虫だつたらまあいいか 廣田 可升
前世とか来世の話毛虫焼く 谷川 水馬
妻の肩口毛虫這ふ教へない 横井 定利
毛虫焼く毛虫のやうな眉あげて 大澤 水牛
もう一寸まだ一寸や毛虫這う 須藤 光迷
晩節は妻の裏方毛虫焼く 玉田春陽子
毛虫焼く火炎放射の沖縄戦 野田 冷峰
書の上に落ちし毛虫やもぞと読む 藤野十三妹
毛虫見て子どものやうに騒ぐ妻 髙石 昌魚
「当季雑詠」
真ん中で墓が見守る田植かな 岩田 三代
ジパング手帳まっさらのまま夏最中 大澤 水牛
母の名と同じ店ある梅雨晴れ間 大沢 反平
寛解のメールのありて花ざくろ 金田 青水
一駅を涼暮月の帰り道 星川 水兎
矢狭間に三角四角城薄暑 玉田春陽子
農道を走るうれしさ青田風 徳永 木葉
ひきがへる夜の歩道の真ん中に 旙山 芳之
《参加者》嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、植村博明、大澤水牛、大沢反平、大下明古、大平睦子、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、金田青水、久保道子、久保田操、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、高石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中村迷哲、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、廣田可升、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井ゆり、横井定利。 (報告 嵐田双歩)