日経俳句会第186回例会

渦中のクルーズ船から投句した実千代さん、「数独をとく」12点ほか3句合わせて22点獲得。次席は双歩さんの「土のやさしさ」11点。

日経俳句会は2月19日(水)、令和2年度2月例会(通算186回)を千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。新型コロナウィルスの脅威が世界中を駈け廻り、日本でも感染者がじわじわと広がっていることもあり、開催を危ぶむ声もあったが、どこ吹く風の元気な会員15人が集い、兼題の「日永」と「蕗の薹」などの105句を俎上に熱い句会を繰り広げた。この日の話題は何といっても、あのダイヤモンドプリンセス号の船上で詠んだ池村実千代さんの作品。「永き日や数独をとく船の上」は前書きがなくとも素晴らしいと12点、ほか「客船で戦友となり日永かな」が8点、「本当の豊かとはなに蕗の薹」が2点、合わせて22点を独り占めした(実千代さん夫妻は句会当日の19日に無事下船した)。次席は双歩さんの「ひと雨の土のやさしさ蕗の薹」が11点。三席は実千代句と並び操さんの「改札の先に広がる日永かな」が8点を獲得した。次いで青水さんの「母校失せ友失せし里ねこやなぎ」が7点。以下6点1句、5点4句、4点5句、3点4句、2点20句、1点31句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「日永」

永き日や数独をとく船の上       池村実千代

客船で戦友となり日永かな       池村実千代

改札の先に広がる日永かな       久保田 操

このままの往生ねがふ日永かな     金田 青水

来て逃げて雀の群れの日永かな     堤 てる夫

永き日や寄せ波引き波幾千年      大沢 反平

チョキチョキと園丁鋏日永かな     加藤 明生

「蕗の薹」

ひと雨の土のやさしさ蕗の薹      嵐田 双歩

蕗の薹ザルツブルグの塩振つて     谷川 水馬

まだ動く水車ごとごと蕗の薹      植村 博明

アマゾンで買いし一キロ蕗の薹     髙橋ヲブラダ

釣れぬ日の魚籠にはせめて蕗の薹    杉山 三薬

当季雑詠

母校失せ友失せし里ねこやなぎ     金田 青水

マッチ擦る仕草の記憶春のカフェ    中沢 豆乳

堰越えの水の膨らみ冬をはる      廣上 正市

音すれど姿の見えぬ雪解水       井上庄一郎

梅二本早や満開の老い始め       大平 睦子

朧なりカークダグラス顎えくぼ     杉山 三薬

氷瀑の便り来ぬまま春立ちぬ      徳永 木葉

《参加者》【出席】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、高石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中村迷哲、星川水兎。【投句参加】池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、大平睦子、岡田鷹洋、加藤明生、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、向井ゆり、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

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