19人が旧東海道品川宿を歩く
恒例のメール句会を開催
令和二年の新春四日、初詣を兼ねる恒例の七福神吟行を催した。品川近辺の旧東海道に沿って七社寺を訪ねる「東海七福神めぐり」。日経俳句会、番町喜楽会から平均年齢七十五歳を超える十九人が参加、旧街道の歴史をたどりつつ、四・五キロを三時間かけ全員が巡り終えた。集合は京浜急行の大森海岸駅。小春日和に恵まれ、午後一時の集合時間前には十九人が勢揃いして、気合は十分。参加者は嵐田双歩、植村博明、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、須藤光迷、塩田命水、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、野田冷峰、廣田可升、前島幻水、向井ゆり、山口斗詩子の面々。
歩きやすさを考えて、通常とは逆回りに大森海岸駅近くの磐井神社(弁財天)からスタート。第一京浜から旧東海道に入る分岐点が鈴ヶ森刑場跡。八百屋お七や天一坊、丸橋忠弥ら、芝居で知られる江戸時代の罪人が露と消えた場所。今は狭い敷地に石塔類が残るだけで、火あぶりと磔の柱を立てた礎石が昔を語っている。住宅地を二十分ほど歩き天祖・諏訪神社(福禄寿)に着く。街道沿いに立会川、鮫洲、青物横丁と商店街を一・六キロを歩きやっとの思いで品川寺(毘沙門天)にたどりつく。ここまで来れば、行程の七割をこなしたことになる。目黒川畔にある品川宿の総鎭守荏原神社(恵比寿) に参拝、疲れた足を励まし、北品川商店街を抜けて一心寺(寿老人)へ。そこから路地を五十メートル入ると養願寺(布袋尊)。行程表と時計をにらみつつ、最後の品川神社に向かう。海を望む小高い丘に鎮座する品川神社(大黒天)は、源頼朝が安房の須崎明神を勧請して創建。その後、太田道灌、徳川家康をはじめとする歴代将軍の庇護を受け、北品川の鎮守として崇敬を集めている。ずっと平坦な道を歩いてきたが、最後に五十三の石段が待ち受けていた。石段裏には勾配が緩やかな女坂があり、それぞれの疲れ具合いに応じて本殿を目指す。予定通り、午後四時には境内で集合写真に納まり、新馬場駅近くの台湾ダイニング「游羅」で盛大な打ち上げ懇親会を開催した。 (七福神吟行幹事・中村迷哲)
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東海七福神吟行のメール句会
例のごとく参加19人によるメール句会は投句3句・5句選句で行い、集計の結果、迷哲さんの「巡り終え酒席に揃ふ七福神」が六点で第一席。次いで「福詣一歩一歩の女坂 双歩」「賽銭を小出しに供え七福神 博明」「獅子舞に暫し華やぐ下駄屋前 春陽子」「頻尿の心せはしき福詣 木葉」が五点で並んだ。四点に「初凪や品川海が遠くなり 水牛」「引きたいが凶の予感の初御籤 光迷」「富士塚や四日の海も橋も暮れ 光迷」「富士塚の下界やかまし早四日 木葉」「獅子舞をすわ天敵と仔犬吠ゆ 可升」の五句が続いた。ほか三点三句、二点十二句、一点十三句という結果になった。
東海七福神吟行作品集
福詣一歩一歩の女坂 嵐田 双歩
疊屋の旧字古びぬ初仕事
恙なく句友こぞりて福巡り
獅子舞や品川宿の小商人 植村 博明
賽銭を小出しに供え七福神
福詣巡り終えるや怪気炎
十二度もあるぞ令和の福詣 大澤 水牛
初凪や品川海が遠くなり
丈六の地蔵微笑む四方の春
禿頭撫で湧けよ秀句よ福禄寿 岡田 鷹洋
釣ったのは空飛ぶジャンボ恵比須神
品川神富士登りたし余力なし
神楽笛きりゝ流るゝ初御空 金田 青水
図らずも獅子に喰はれて貰ひ福
品川に海苔や魚や福まゐり
鈴ヶ森落葉の陰に火焰台 澤井 二堂
品川寺小鐘をついて福願ひ
春日差す龍馬の眼差し旧海道
大森に集ふ四日の福詣り 塩田 命水
憧れし車に出会ふ福詣り
飛行反対の幟の踊る福詣り
福詣お七が袖引く鈴ヶ森 杉山 三薬
初歩き枚方までなら五十六次
金餅を色紙代わりに七福神
初春や策士龍馬の懐手 須藤 光迷
引きたいが凶の予感の初神籤
富士塚や四日の海も橋も暮れ
狛犬の子連れの阿吽冬日差 田中 白山
目黒川囃子太鼓の恵比須神
一万歩大団円の七福神
初御籤謙虚になれば幸来ると 玉田春陽子
弁天の朱肌あらはや福詣
獅子舞に暫し華やぐ下駄屋前
今むかし天下の大道福巡り 堤 てる夫
品川神社家康庇護の高みかな
正月も何も縁なし涙橋
頻尿の心せはしき福詣 徳永 木葉
富士塚の下界やかまし早四日
東海の福神たずね江戸上り
広重の街道たどる福詣 中村 迷哲
福詣坂に列なす女高生
巡り終へ酒席に揃ふ七福神
楪の仔連れ狛犬福鎮座 野田 冷峰
福巡り句友の介添えありてこそ
念入りに下駄屋の老舗福踊り
首垂れ獅子頭待つ女将かな 廣田 可升
獅子舞をすわ天敵と仔犬吠ゆ
新海苔の赤き幟や東海道
東海道の昔を偲び福詣 前島 幻水
旧海道巡るもご利益福詣
福神はインタナショナル福詣
獅子舞の囃子につられ早歩き 向井 ゆり
人のことばかり願いて福詣
江戸明治昭和を往き来四方の春
八十翁健脚競ひ初巡り 山口斗詩子
賽銭の多寡気にしつつ初詣
小吉と出でてにんまり初みくじ
(まとめ 嵐田双歩)