而云さん「鍬の先」11点など大量点
旛山、斉藤両氏が入会
日経俳句会は2月20日(水)、平成31年度2月例会(通算176回)を千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。この日は20度近くまで気温が上がり、春本番を思わせる陽気。「春浅し」と「バレンタインデー」の兼題に対し、新たに加わった旙山芳之、斉藤早苗両氏(ご両人とも日経編集局整理部畑の現役ちゃきちゃき)からも投句があり、39人から117句もの出句があった。欠席者がほぼ半数のため、出席者20人(欠席投句19人)には6句選んでもらった結果、今泉而云さんが「浅春の石打ち当てし鍬の先」11点、「老夫婦花鉢買へりバレンタインデー」9点、「芽柳や献血バスに人並ぶ」4点と票を独り占めした格好。二席の9点には谷川水馬さんの『バレンタインチョコにお手紙「じいじすき」』が並び、星川水兎さんの7点句「在りし日のままの書斎や春浅し」が続いた。以下6点3句、5点2句、4点11句、3点12句、2点18句、1点37句だった。なお、新入会員の旙山さんと斉藤さんは、それぞれ4点句をものにするなど将来有望を印象づけるデビューとなった。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。
「春浅し」
浅春の石打ち当てし鍬の先 今泉 而云
在りし日のままの書斎や春浅し 星川 水兎
春浅し黒々並ぶ土竜塚 大熊 万歩
春浅し出棺告げるクラクション 嵐田 双歩
春浅し猫背が野良と語らひて 金田 青水
春浅しセロリはみ出すレジ袋 谷川 水馬
丹頂の子別れ近し浅き春 徳永 木葉
浅き春屋根の普請の槌の音 大下 綾子
春浅し丸刈り坊主は首すぼめ 澤井 二堂
陽の匂ふ布団うれしや春浅し 谷川 水馬
ブランコの尻冷たくて春浅し 中沢 豆乳
春浅し入園通知待つポスト 中村 哲
「バレンタインデー」
老夫婦花鉢買へりバレンタインデー 今泉 而云
バレンタインチョコにお手紙「じいじすき」 谷川 水馬
語りたき本ありバレンタインの日 大下 綾子
仕舞ひ込むバレンタインの包み紙 植村 博明
バレンタイン逃げる二月のはや半ば 斉藤 早苗
恐妻のバレンタインのチョコうれし 澤井 二堂
バレンタインたった一つを待つじいじ 池村実千代
バレンタイン遠くになりて老いを生く 岩田 三代
バレンタインデーさて何色のシャツ着よう 大澤 水牛
「当季雑詠」
海は凪丘はたわわの夏蜜柑 大熊 万歩
塗りたての公園遊具春を待つ 中村 哲
目薬の頬を流るる余寒なほ 橫井 定利
斑雪母の忌なれば灯をともし 嵐田 双歩
芽柳や献血バスに人並ぶ 今泉 而云
春一番顔真卿の墨の跳ね 澤井 二堂
残雪や苔あおあおと三千院 旙山 芳之
我慢してお洒落セーター淡き春 池村実千代
梅見んと小日向を経て牛天神 鈴木 好夫
立春や受診可もなく不可もなし 髙石 昌魚
春の雪湯船に舞ふ夜の箱根山 流合研士郎
《参加者》(出席)=嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、高井百子、高石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村哲、野田冷峰、流合研士郎、星川水兎、向井ゆり、横井定利。(投句参加)和泉田守、井上庄一郎、岩田三代、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、加藤明生、金田青水、久保田操、斉藤早苗、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹。 (報告 嵐田双歩)