35人で「木枯」「鴨」詠む
綾子さん「イヤリング」最高9点、鷹洋・水牛・反平氏、高点句続く
日経俳句会は平成30年度11月例会(通算174回)を11月21日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。兼題に合わせるように木枯が到来。風邪を引いた方もいて参加者は18人とやや少なかったが、高点の佳句が多く、合評会も多彩なやりとりが交わされた。兼題は「木枯」と「鴨」。35人から105句の投句があり、5句選の結果、大下綾子さんの「木枯やイヤリングより冷え初むる」が最高9点を獲得。8点に「木枯らしや日めくり痩せて八十路越え」(鷹洋)、7点に「何千里飛び来て鴨の吊るさるる」(水牛)、6点に「木枯らしや猫背叱られまた猫背」(反平)と高点句が続いた。5点句には「一湾の暮れてかすかに鴨の声」(昌魚)はじめ5句が入ったほか、4点7句、3点7句、2点17句、1点27句だった。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。
「木枯」
木枯やイヤリングより冷え初むる 大下 綾子
木枯らしや日めくり痩せて八十路越え 岡田 鷹洋
木枯らしや猫背叱られまた猫背 大沢 反平
木枯や路地に描かれたけんけんぱ 嵐田 双歩
木枯や部室のガラス割れたまま 今泉 而云
「鴨」
何千里飛び来て鴨の吊さるる 大澤 水牛
一湾の暮れてかすかに鴨の声 髙石 昌魚
口衝くはふるさとの歌詞鴨来る 和泉田 守
宗達の鴨飛び立つや江戸の空 岩田 三代
吊るされし鴨の細頚深き青 大熊 万歩
鴨の波磐梯山を揺らしけり 谷川 水馬
番い鴨拳ひとつの距離で浮き 中嶋 阿猿
鴨の池めぐりて言葉なき二人 大倉悌志郎
鴨の陣しづしづ過ぐる鯉の上 大下 綾子
「当季雑詠」
踏切の点滅長し冬の月 植村 博明
カーテンの襞の谷間の冬日かな 大熊 万歩
足指を手指でまわす冬の風呂 金田 青水
トンネルに葡萄酒眠る小春かな 水口 弥生
ひそやかな介護ホームに帰り花 中村 哲
木の葉髪本に落ちれば銀の色 井上庄一郎
寄鍋や卓袱台しきる父の声 髙石 昌魚
落葉かき気まぐれ風にからかはれ 堤 てる夫
咲き残り実らず散るか野のなすび 藤野十三妹
《参加者》(出席)池村実千代、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、高石昌魚、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川水兎、水口弥生、向井ゆり。(投句参加)嵐田双歩、井上庄一郎、和泉田守、岩田三代、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。
(報告・中村哲)