阿猿さん、ゆりさん七点句で並ぶ
お盆の例会、「盆」句に票集まる
日経俳句会の平成29年度8月例会(通算161回)は、8月16日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開かれた。8月は半月も雨模様の日が続き、送り日のこの日は肌寒いほど。盆休みとあって、出席17人、欠席投句20人と欠席者が上回ったものの合評会は白熱し、大いに盛り上がった。
兼題は「処暑」と「盆」。37人から109句の投句があり6句選(欠席5句選)の結果、中嶋阿猿さんの「星屑を夜空に戻す送り盆」と、向井ゆりさんの「あら盆や音なき家に風抜けて」の盆の句がそれぞれ7点で並んだ。5点句は岩田三代さんの「盂蘭盆会花なき墓の増えてゆき」や髙石昌魚さんの「残る日々如何に過ごさむ蝉時雨」など5句。以下、4点5句、三点が17句もあり、2点25句、1点26句と票がばらけた。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。
「処暑」
炊き立ての白きご飯や処暑の朝 今泉 而云
処暑の風水上バスの川下り 大倉悌志郎
九九表を暗唱する子処暑の朝 德永 正裕
灯明の揺らぐ風来し処暑の夕 水口 弥生
水の音処暑の平たき石に座し 橫井 定利
フルートの深きラ音や処暑の杜 池村実千代
子ら消えて大波寄せる処暑の海 岩田 三代
疲れたる物干し竿や処暑の庭 大熊 万歩
木漏れ日と処暑の風とのハーモニー 加藤 明男
埴輪武者たたずむ処暑の展示室 金田 青水
高々と球なげて受く処暑の空 星川 佳子
「盆」
星屑を夜空に戻す送り盆 中嶋 阿猿
あら盆や音なき家に風抜けて 向井 ゆり
盂蘭盆会花なき墓の増えてゆき 岩田 三代
うぶすなへ帰る伝手なし盆果つる 廣上 正市
迎え火や親の写真に声かけて 嵐田 双歩
開け放つ夕餉の座敷盆の客 大熊 万歩
今年から派遣僧侶や盂蘭盆会 谷川 水馬
新盆や卒寿写真の笑ひ皺 德永 正裕
盆僧の青き頭に風通る 中村 哲
送り火の一人は淋し慣れにけり 橫井 定利
「当季雑詠」
残る日々如何に過ごさむ蝉時雨 髙石 昌魚
まあ座れまずは落ち着け水羊羹 中嶋 阿猿
ひとり言増えしこの頃萩くくる 星川 佳子
水底に揺れる藻の見ゆけさの秋 大倉悌志郎
幼子の身振り手振りや盆踊り 髙石 昌魚
わが句歴喜寿に船出しはや米寿 直井 正
紫陽花の土の色なる晩夏かな 廣上 正市
廃校が決まりし年の盆踊り 向井 ゆり
【参加者】(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、星川佳子。(投句参加)池村実千代、和泉田守、岩田三代、植村博明、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、澤井二堂、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、野田冷峰、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、向井ゆり、横井定利。
(まとめ・嵐田双歩)