事前選句、司会者が選評代読で、句会進行迅速に
「六月」と「蟇」を兼題に
日経俳句会の平成29年度上期合同句会(通算24回)は、6月21日(水)、大手町の日経本社ビルのセミナールーム開かれた。夏至のこの日、梅雨入り後初の強い雨が降りしきる中、合同句会に相応しく30人が出席した。今回は句会後に「俳句の殿堂」旗揚げ式を控え、会場もいつもと異なるため、事前にメールで選句と短評を募り、当日は披講、選評ともに司会者が代読することでスピードアップをはかった。
兼題は「六月」と「蟇」。5句選の結果、最高点は玉田春陽子さんの「便箋の白さ眩しき夏に入る」が断トツの11点を獲得。これに水口弥生さんの「ひきがえる半眼で見る憂き世かな」が9点で続いた。三席は6点句で澤井二堂さんの「六月や休耕田のまた一つ」など5句。以下、5点5句、4点9句、4点6句、2点25句、1点26句と満遍なく投句者全員に点が入った。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。
「六月」
六月や休耕田のまた一つ 澤井 二堂
六月や押せば門扉の鈍き音 水口 弥生
何の木の香ぞ六月の闇の道 今泉 而云
六月や万物包む雨やさし 岩田 三代
六月の湖を鏡に山の色 大沢 反平
六月や葉擦れの音も堰音も 廣上 正市
母となり六月の空やはらかく 向井 ゆり
六月の白杖の立つ日陰かな 鈴木 好夫
六月や湯煙淡き独鈷の湯 玉田春陽子
六月の窓に広がる無力感 深田森太郎
「蟇」
ひきがえる半眼で見る憂き世かな 水口 弥生
わが道は闇の先にと蟇歩く 大倉悌志郎
だつて今動いたじゃない蟇 嵐田 双歩
蟇蛙微動だにせず人の恋 今泉 而云
思ふこと腹にいっぱい蟇 大澤 水牛
それぞれに孤独かかへて蟇蛙 片野 涸魚
ひきがえる親の代から顔見知り 大下 綾子
酔客が二度見都会の蟾蜍 中嶋 阿猿
「当季雑詠」
便箋の白さ眩しき夏に入る 玉田春陽子
来し方の紆余曲折や蛞蝓(なめくじり) 嵐田 双歩
人影のまだあり夜の茅の輪かな 星川 佳子
ぼうふらに運動不足なかりけり 橫井 定利
故郷に祖母も梅酒も恙なく 今泉 而云
初生りの胡瓜の棘や柔らかし 大熊 万歩
老若の尻一列に田植ゑかな 谷川 水馬
父と見し群舞遠き日蛍橋 中村 哲
雨上がり四葩の藍の定まりぬ 廣上 正市
参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高井百子、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、流合研士郎、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、向井ゆり、横井定利。(投句参加)岩田三代、植村博明、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、廣上正市、深田森太郎。
(まとめ・嵐田双歩)