反平氏、最高点の八点句
選句のばらつき、一段と
日経俳句会は5月18日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で5月例会(通算第149回)を開いた。風薫る季節感通りの夕刻、「夕立」「新茶」の兼題に33人から164句の投句があった。当日の出席者は25人に達し、俳句の言葉使い、ルビの振り方などを巡り、活発なやり取りが繰り広げられた。
当日の最高点は8点で大沢反平さんの「終活の一つを済ませ新茶買ふ」。次席6点は植村博明さんの「新茶より嬉しきものは添へ手紙」と、杉山智宥さんの「三人乗りママの脚力夕立雲」の2句。5点句は「貫乳を静かに愛でつ新茶汲む」と「夕立の誰もが無口軒の下」ともに嵐田双歩さんの作品が選ばれた。
続く四点には7句が並び、3点も12句あった。さらに2点33句、1点が46句に達するなど選句にばらつきが目立った。会員各位の作句力の向上とともに、選句ポイントの多様化を反映していると思われる。
三点句以上獲得の高点句は以下の通り。
「新茶」
終活の一つを済ませ新茶買ふ 大沢 反平
新茶より嬉しきものは添へ手紙 植村 博明
貫乳を静かに愛でつ新茶汲む 嵐田 双歩
新茶淹れ夫の知らぬこともある 今泉 而云
新茶汲みはらからの忌を修しけり 大澤 水牛
祖父の手の緑に染まる新茶摘み 流合研士郎
語り合う夫婦のむかし古茶新茶 徳永 正裕
茶巾ずし一つを二人新茶吞む 野田 冷峰
母といて勝手気ままや新茶汲む 星川 佳子
「夕立」
三人乗りママの脚力夕立雲 杉山 智宥
夕立の誰もが無口軒の下 嵐田 双歩
夕立や軒先借りる猫二匹 久保田 操
白雨(ゆうだち)を黒線で描く江戸の絵師 髙瀨 大虫
石蹴りの石の残りて夕立あと 谷川 水馬
海賊を気どりてラム酒大夕立 谷川 水馬
夕立に思わず笑う見ず知らず 鈴木 好夫
一人居の迷子のここち大夕立 星川 佳子
熊本城崩れんばかり驟雨打つ 水口 弥生
「当季雑詠」
吊革の腕(かひな)あらわに夏来る 高石 昌魚
雑巾になることもなし衣更 高橋ヲブラダ
後ずさり出来ぬこの夏カンガルー 谷川 水馬
星涼し生きよ卒寿の五輪まで 直井 正
大楠や三千年の若葉風 中村 哲
無残やな熊本城に夏の月 横井 定利
参加者(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕 、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、廣上正市、星川佳子、水口弥生、横井定利
(投句参加)池村実千代、植村博明、大熊万歩、久保田操、金田青水、高橋ヲブラダ、流合研士郎、藤野十三妹
(まとめ・廣上正市)