日経俳句会・番町喜楽会合同で25人が参加
新年恒例の七福神吟行は、日経俳句会と番町喜楽会の合同行事として1月9日(土)午後、東京・豊島、文京両区にまたがる「雑司が谷七福神」を歩いた。町おこしを目指す地元商工会などが十年ほど前に始めた、どちらかと言えば新参の七福神巡りだが、大欅並木に歴史をとどめる「鬼子母神堂」や漱石、夢二ら著名人の墓がある「雑司ヶ谷霊園」など見所が少なくない。
「寒」とはとても言えない暖冬の日差しの中、八十路の大先輩四名はじめ全員が颯爽と「完歩」した。霊園そばにある知る人ぞ知る「家庭料理 風(ふう)」での新年会を兼ねた懇親会も大いに盛り上がり、両会の今年の活躍ぶりが早くも約束されたような感じであった。
締め括りは吟行後のメール句会、3~5句投句、選句5句で上位から順に「天5点」「地3点」「人2点」「入選1点」の点数配分を行った。その結果、最高点は大沢反平さんの「七福神小路小路に昭和あり」の22点だった。次席は高瀬大虫さんの「女子寮の忍び返しや寒椿」の20点。三席は廣田可升さんの「誰が置くや夢二の墓に冬の薔薇」の17点。
続いて嵐田双歩さんの「冬麗や都電とことこ雑司が谷」の14点、須藤光迷さんの「寒晴れや茅の輪くぐりて恵比寿神」の13点、高井百子さんの「恵比寿顔揃ひてけふの初笑ひ」の12点、片野涸魚さんの「戦なき世こそ大事と福参り」の11点、玉田春陽子さんの「また一つ老いを背中に初参」の10点と二ケタ得点が8句並んだ。上記以外の参加者の代表句は次の通り。
女子寮の門番は猫春隣 嵐田 双歩
遅い人笑ひて待つも福詣 池村実千代
真白なる豊島区役所寒に入る 井上 啓一
鐘楼に日は斜めなり冬桜 今泉 而云
のっけから団子頬張る福詣 大澤 水牛
友と行く余生豊かな福詣り 大沢 反平
にぎやかに集合写真寒夕焼 大下 綾子
きざはしの夕陽やさしや毘沙門天 岡田 臣弘
野良猫をはべらせて笑む弁才天 片野 涸魚
旗差しに導かれゆく福詣 久保田 操
ビルの隅腹もてあます布袋尊 澤井 二堂
様々な顔の都電や冬温し 須藤 光迷
道連れを追ひ越し越され七福神 高井 百子
民族の垣を払ひて宝船 高瀬 大虫
冬晴の六百年の大銀杏 田中 白山
連衆の笑顔力に福詣 谷川 水馬
薄紅はもてなしの色寒桜 玉田春陽子
寒林や東条英機ねむる墓 堤 てる夫
路地奥に年酒ありて無礼講 徳永 正裕
七福神スタンプラリー賑やかに 野田 冷峰
「まだ無い」という名の猫や冬の墓碑 廣田 可升
雑司ヶ谷箒欅に冬小松 藤村 詠悟
木曾節の競演となり新年会 星川 佳子
これがまあ漱石の墓冬の空 前島 厳水
福詣り終えてしもたや風の酒 山口斗詩子
参加者(日経俳句会)嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、藤村詠悟、星川佳子
(番町喜楽会)井上啓一、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升、前島巌水、山口斗詩子
(まとめ 堤てる夫)