「天高し」と「秋草」に百六十二句
最高の六点に四句が並ぶ
日経俳句会の平成27年第9回例会(通算143回)が10月21日(水)午後6時半から千代田区内神田の日経広告研究所会議室(MIFビル)で開かれた。この日は出席19人に対して投句参加者が15人で、投句総数は162句と相変わらずの賑わい。兼題は「天高し」と「秋草」の二題。7句選句で句会を行った結果、最高点が6点で、「天高し草投げ上げる象の鼻 万歩」「秋の灯のふつと消えたり百二歳 水牛」「自販機のコインの響く夜寒かな 臣弘」「安曇野の秋草挿して蕎麦処 悌志郎」の四句が並んだ。次席の5点は「天高く速き疎水の南禅寺 好夫」「天高しゆるゆる戻る蛸の足 光迷」「売れ残る墓苑の幟秋深し 反平」「無造作に秋草と言ひ束ねたる 水牛」と、これまた4句が押しくらまんじゅう。三席4点句は「戦国の石垣しかと天高し 正裕」、「抗わず引き抜かれたり秋の草 而云」「地蔵撫で秋草撫でて風去りぬ 研士郎」の3句。続く3点は13句、2点22句、1点46句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「天高し」
天高し草投げ上げる象の鼻 大熊 万歩
天高く速き疎水の南禅寺 鈴木 好夫
天高しゆるゆる戻る蛸の足 須藤 光迷
戦国の石垣しかと天高し 徳永 正裕
秋高し山下りる牛乳張りて 徳永 正裕
天高し雲をかすめる観覧車 久保田 操
天高しラグビーボール宙を裂く 水口 弥生
「秋草」
安曇野の秋草挿して蕎麦処 大倉悌志郎
無造作に秋草と言ひ束ねたる 大澤 水牛
抗わず引き抜かれたり秋の草 今泉 而云
地蔵撫で秋草撫でて風去りぬ 流合研士郎
信号機撤去の告示秋の草 廣上 正市
さわさわと挽歌の調べ秋の草 直井 正
廃線や潮の匂ひと秋の草 加藤 明男
「雑詠」
秋の灯のふつと消えたり百二歳 大澤 水牛
自販機のコインの響く夜寒かな 岡田 臣弘
売れ残る墓苑の幟秋深し 大沢 反平
山峡に夜の鳴る音秋は染む 藤野十三妹
月天心人の心の深き井戸 藤野十三妹
染め抜きの赤き幟やりんご狩り 谷川 水馬
シャシャシュシュととぐ音軽し今年米 加藤 明男
駄菓子屋の硝子に釣瓶落としかな 須藤 光迷
秋桜育ち過ぎたる貸農園 杉山 智有
秋澄むや会社でいれるハーブティー 星川 佳子
参加者(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、徳永正裕、直井正、野田冷峰、流合研士郎、廣上正市、星川佳子。(投句参加)池村実千代、植村博明、大石柏人、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、藤野十三妹、藤村詠悟、水口弥生、横井定利。 (まとめ・大澤水牛)