連続猛暑日記録を残した平成27年8月。千代田区内神田の日経広告研究所会議室で19日夕刻開かれた日経俳句会8月例会(通算141回)には、出席20人、投句参加12人計32人の参加があった。
兼題は「処暑(しょしょ)」「終戦日(敗戦忌)」で、投句総数は156句。7句選句の結果、最高は大熊万歩さんの「蝉の殻爪の先まで光満つ」の9点句。次席は杉山智宥さんの「寝て疲れ起きて疲れて処暑となる」の7点句。三席には、澤井二堂さんの「今朝もまたラジオ体操終戦日」、谷川水馬さんの「利き酒のほどよく醒めて処暑の風」、村田佳代さんの「ジャズ祭の正午の静けさ終戦日」の6点3句が並んだ。
次いで5点句は、大沢反平さんの「道白し昼月白し広島忌」と、水馬さんの「引き揚げを語る母亡き終戦日」の2句。続く4点句は6句、3点句は12句、2点25句、1点28句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「処暑」
寝て疲れ起きて疲れて処暑となる 杉山 智宥
利き酒のほどよく醒めて処暑の風 谷川 水馬
輪郭のやや衰へし処暑の蔭 大熊 万歩
悼む日を幾つかこなし処暑の風 廣上 正市
処暑の子の宿題帳の捗らず 嵐田 双歩
Tシャツの薄れし色や処暑の風 大熊 万歩
香り立つクロワッサンや処暑の朝 須藤 光迷
遠き日のコーラス合宿処暑の寺 高瀬 大虫
里帰り処暑の昼寝や畳拭く 水口 弥生
「終戦日(敗戦忌)」
今朝もまたラジオ体操終戦日 澤井 二堂
ジャズ祭の正午の静けさ終戦日 村田 佳代
引き揚げを語る母亡き敗戦忌 谷川 水馬
敗戦忌義手の奏でる手風琴 高瀬 大虫
米国で娘安産終戦忌 澤井 二堂
腹の子に手を添え語る終戦日 徳永 正裕
なほ固く締める蛇口や終戦日 廣上 正市
物置の黒き飯盒終戦日 星川 佳子
「雑詠」
蝉の殻爪の先まで光満つ 大熊 万歩
道白し昼月白し広島忌 大沢 反平
あやかしの憲法論議蚯蚓鳴く 嵐田 双歩
縄文の壷の中より秋の声 今泉恂之介
陽を受けて凛と銀座の白絣 水口 弥生
解像度上がり台風眼の深き 高瀬 大虫
年齢はただの数字と生御霊 星川 佳子
繋ぐ手の願ひあるらし星流る 水口 弥生
参加者(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、澤井二堂、鈴木好夫、杉山智宥、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、徳永正裕、直井正、野田冷峰、流合研士郎、星川佳子、水口弥生、横井定利
(投句参加)池村実千代、大石柏人、大熊万歩、岡田臣弘、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、堤てる夫、廣上正市、藤村詠悟、村田佳代
(記録 堤てる夫)