日経俳句会の平成26年第9回例会(通算133回)は10月15日(水)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所会議室で開かれた。兼題は「行く秋(ゆくあき)」「小鳥来る(ことりくる)」で、投句総数は164句の大賑わい。7句選句の結果、最高は須藤光迷さんの7点句「行く秋や詩朗句集の深き味」。三回忌を経た山口詩朗さんの句文集「団居」が話題となったこの秋を題材にした佳句が圧倒的人気を集めた。次席6点句は嵐田双歩さんの「よその子の育つ早さや小鳥くる」と、廣上正市さんの「刃物研ぐ一滴二滴秋の水」と「草引けば穴の深きや秋暮るる」の計3句。三席5点はこれまた廣上さんの「百年の開校記念日小鳥来る」の1句だった。
続く4点句は9句で、池村実千代さん、大熊万歩さんの作品がそれぞれ2句づつ入った。3点は9句、以下2点27句、1点47句。なおこの日の句会から嵐田啓明さんが俳号「双歩(そうふ)」を名乗ることになった。
兼題別3点以上の高点句は次の通り。
「行く秋」
行く秋や詩朗句集の深き味 須藤 光迷
行く秋や名画座のある学生街 嵐田 双歩
行く秋を高尾の山に拾ひけり 直井 正
行く秋やオカリナの音低くして 野田 冷峰
行く秋や世辞言ひて食ふ五平餅 今泉恂之介
行く秋やLEDの光の樹 大澤 水牛
行く秋や手かざすほどの日の光 鈴木 好夫
行く秋やだらだらと飲む金曜日 村田 佳代
「小鳥来る」
よその子の育つ早さや小鳥くる 嵐田 双歩
百年の開校記念日小鳥来る 廣上 正市
小鳥くる淡きときめき文化祭 池村実千代
静寂といふ音のあり小鳥くる 池村実千代
小鳥来るひとり暮らしのニュータウン 植村 博明
箒目の気ままな庭や小鳥来る 大熊 万歩
小鳥来て奏楽堂に朝の歌 澤井 二堂
「雑詠」
刃物研ぐ一滴二滴秋の水 廣上 正市
草引けば穴の深きや秋暮るる 廣上 正市
鈴虫を飼う主逝きて甕ばかり 大熊 万歩
語らずに歩む無月の池の端 大倉悌志郎
葭の原鬼の野分が飛んで行く 大沢 反平
根津の杜足袋の白さや華(はな)神輿 澤井 二堂
流鏑馬の的は舞いたり薄紅葉 須藤 光迷
稲架(はざ)掛けのひと息入れる団居かな 堤 てる夫
参加者(出席)嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、大熊万歩、大澤水牛、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、堤てる夫、直井正、廣上正市、藤村詠悟、星川佳子、水口弥生(投句参加)植村博明、大石柏人、大倉悌志郎、大沢反平、加藤明男、金田青水、久保田操、高石昌魚、徳永正裕、野田冷峰、流合研士郎、藤野十三妹、村田佳代、横井定利 (まとめ・堤てる夫)