日経俳句会の通年企画「逆回り奥の細道吟行」は、いよいよ大詰めの第8回として6月23、4日、那須・黒羽、日光を回った。参加者は大澤水牛幹事長初め嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、澤井二堂、杉山智宥、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、廣上正市、星川佳子、堤てる夫(幹事)の12人。
初日は栃木県大田原市に点在する芭蕉ゆかりの史跡などをマイクロバスで訪ねた。黒羽(くろばね)は芭蕉一行が14日間も滞在した土地で、芭蕉句碑を辿るだけでも大変。「秣おふ人を枝折の夏野かな」の句碑がある玉藻稲荷神社を皮切りに、「夏山に足駄を拝むかどでかな」の修験光明寺跡、臨済宗の名刹、東山雲巌寺で「木啄きも庵は破らず夏木立」の句碑を見る。その後、黒羽藩主大関家の菩提寺の大雄寺と、隣接の芭蕉公園、芭蕉の館へ。那珂川沿いの「観光やな」で昼食を取った後、遊行柳、殺生石を観て一路、日光の宿へ行く。
二日目のハイライトは裏見の滝。路線バスで「滝の入口」まで行き、あとは上り坂をだらだら上り、急な岩道や木道を苦闘一時間、ようやく滝壷を見下ろす観覧ポイントに到着できた。下山後は大谷(だいや)川沿いに憾満ヶ淵に向かう。「大日堂跡」の小さな芭蕉句碑は「あらたふと青葉若葉の日の光り」。那須岳から流れ出た岩石は滑らかで薄い灰色、川の水は澄み切っていた。遊歩道の崖際に大小の地蔵が百体ほど苔むして並ぶ「並び地蔵」が印象的だった。
昼食後は三々五々、日光山内に入り東照宮参拝。東照宮の修復工事が始まるとかで、間もなく陽明門も覆いが掛けられるという。特別公開していた奥宮の家康公廟所まで入れたのと相まって幸運な旅の締め括りとなった。帰京後恒例のメール句会を行った。好評を博した句は以下の通り。
健脚の翁と歩む夏木立 嵐田 啓明
青葉越え天より迫る大伽藍 井上庄一郎
木下闇小角の足駄滑りし跡 今泉恂之介
青き淵涼しく眠る百地蔵 大澤 水牛
裏見滝きりきり舞ひの夏の蝶 澤井 二堂
夏の雲校舎の壁に読む芭蕉 杉山 智宥
鬼気はらむ殺生石や沖縄忌 谷川 水馬
裏見をば風にたのみて滝見かな 玉田春陽子
ほととぎす家康公の廟所まで 堤 てる夫
雨やみて日光山内夏の朝 徳永 正裕
青田風はせをの時空駆けめぐる 廣上 正市
水無月や苔の衣の百地蔵 星川 佳子
(まとめ 堤てる夫)