日経俳句会は平成25年第8回例会(通算122回)を9月17日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で開いた。兼題は「鰯雲(いわしぐも)」「狗尾草(えのころぐさ、ねこじゃらし)」で、出席22人、投句参加13人からの168句を対象に7句選句で句会を進めた。その結果、最高は星川佳子さんの「醤油屋の屋根ながながと鰯雲」の7点句。次席は植村博明さんの「鉄棒のつかみ直して鰯雲」の6点句。続く5点句は、嵐田啓明さんの「なきながら壁にぶつかる秋の蝉」、大下綾子さんの「いわし雲磨き込まれし聖火台」、横井定利さんの「仕舞風呂秋の七草暗誦す」の3句。
次いで4点が10句、3点15句、2点23句、1点が41句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「鰯雲」
醤油屋の屋根ながながと鰯雲 星川 佳子
鉄棒のつかみ直して鰯雲 植村 博明
いわし雲磨き込まれし聖火台 大下 綾子
鰯雲豆粒ほどの人の陰 植村 博明
投網うつ夜明けの海や鰯雲 金田 青水
庭下駄のひんやりとして鰯雲 星川 佳子
いわし雲母となった日想ひだす 池村実千代
体操の反りかえる空鰯雲 大石 柏人
鰯雲の中へボート漕ぎ出す 大熊 万歩
鰯雲石巻にも大漁旗 岡田 臣弘
包丁を研ぐ水にあり鰯雲 須藤 光迷
鰯雲昔海軍兵学校 田中 頼子
稜線の長き浅間や鰯雲 堤 てる夫
少年の大志やいずこ鰯雲 徳永 正裕
鰯雲あれこれ問わずルージュ引く 野田 冷峰
「狗尾草」
足元に谷中の風や猫じゃらし 澤井 二堂
名ばかりの農地となりてねこじゃらし 杉山 智宥
指切りや狗尾草の風の道 野田 冷峰
口下手な男と女ねこじゃらし 横井 定利
猫じゃらし鉄条網を撫でにけり 大熊 万歩
「予定地」の看板古びねこじゃらし 大下 綾子
もののふの夢の城址ねこじゃらし 流合研士郎
「雑詠」
なきながら壁にぶつかる秋の蝉 嵐田 啓明
仕舞風呂秋の七草暗誦す 横井 定利
露の夜に歌つてをりぬ藤圭子 今泉恂之介
新涼や家出の猫に言い寄られ 大沢 反平
新涼や身離れのよき魚の骨 佐々木 碩
姉の手の母の手に似し良夜かな 金田 青水
とりあへず意地を呑みこみ敬老日 吉野 光久
参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、岡田臣弘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、横井定利(投句参加)池村実千代、大石柏人、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、直井正、村田佳代、山田明美、吉野光久
(まとめ・堤てる夫)