日経俳句会は2月19日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館で、平成25年第2回例会(通算116回)を開いた。「春は名のみ」と言う通り、寒風厳しい天気のせいか、出席者は21人と少な目だったが、投句参加者が16人あり、投句総数は179句と相変わらずの盛況ぶり。
兼題は「水温む(みずぬるむ)」「クロッカス」で、7句選句の句会の結果、最高は10点を集めた吉野光久さんの「鎌倉やどの径ゆくも藪椿」の一句。再び辛い治療を凌いでいる光久さん、意気軒昂。次席は7点で、大倉悌志郎さんの「捨て鉢の梅さきがけて匂ひけり」と、横井定利さんの「ピアノでも弾いてみようかクロッカス」の二句。続く6点句は定利さんの「ガンだつたんよのほほんと春ショール」と堤てる夫さんの「塩田平降りてきそうな寒の星」の二句。
以下5点句が4句、4点8句、3点9句、2点20句、1点52句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「水温む」
おみくじはみんな中吉水温む 大熊 万歩
いく度も名を変へ大河水温む 廣上 正市
水ぬるむ昔の日記ひろい読み 池村実千代
水温む盆栽展の列につき 大下 綾子
水温む皇居めぐりて神田まで 金田 青水
水遣りの勢い増して水温む 流合研士郎
すみません降りますの声水温む 山田 明美
水温む豊後の海の兜蟹 嵐田 啓明
水温む些細なことに笑ひ声 嵐田 啓明
花屋さん赤いゴム長水温む 植村 博明
水ぬるむ庭師の謡軒端より 岡田 臣弘
雨の文字にはかに優し水温む 徳永 正裕
石仏を巡る一日や水温む 廣上 正市
「クロッカス」
ピアノでも弾いてみようかクロッカス 横井 定利
房総の春は弾けてクロッカス 大沢 反平
幾人も杖を止めたるクロッカス 須藤 光迷
クロッカスほのかに香る脇机 岡田 臣弘
クロッカス小さき芽吹き窓の鉢 来間 紘
バスに香を置いて降りゆくクロッカス 野田 冷峰
空つかむ赤ちゃんの手やクロッカス 嵐田 啓明
幼子の指さす先のクロッカス 植村 博明
「雑詠」
鎌倉やどの径ゆくも藪椿 吉野 光久
捨て鉢の梅さきがけて匂ひけり 大倉悌志郎
塩田平降りてきそうな寒の星 堤 てる夫
ガンだつたんよのほほんと春ショール 横井 定利
恋猫に米を研ぐ手を休めけり 須藤 光迷
参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、大澤水牛、岡田臣弘、来間紘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳、徳永正裕、堤てる夫、流合研士郎、廣上正市、星川佳子、村田佳代、山田明美、横井定利(投句参加)池村実千代、植村博明、大石柏人、大熊万歩、大倉悌志郎、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、田中頼子、直井正、野田冷峰、藤野十三妹、水口弥生、吉野光久
(まとめ・堤てる夫)