番町喜楽会は10月6日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第85回例会を開催した。兼題は「霧(きり)」と「蟋蟀(こおろぎ)」で、雑詠を含む投句総数は100句ちょうど、20人のメンバーから投句があった。7句選句の句会の結果、今泉而雲さんの「牛の背のひしめき行くや霧の中」が9点という記録的な得点でトップ。次席は5点で、高井百子さんの「名月に駆け足で去る嵐かな」「秋灯り母に戻りて帰路急ぐ」の2句に、玉田春陽子さんの「本棚の不揃ひの闇ちちろ鳴く」の計3句。
次いで4点句が5句。山口斗詩子さんの「尾灯追ふ霧の箱根路九十九折り」「朋友の焼きたる皿に初秋刀魚」の2句と、大澤水牛さんの「天高し焼味噌で食ふ伊那の蕎麦」、須藤光迷さんの「就活に案山子も村を出るといふ」、春陽子さんの「朝霧や用なき下駄の横並び」が並んだ。以下、3点7句、2点17句、1点22句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「霧」
牛の背のひしめき行くや霧の中 今泉 而雲
朝霧や用なき下駄の横並び 玉田春陽子
尾灯追ふ霧の箱根路九十九折り 山口斗詩子
濃淡の霧薄墨の絵となりぬ 野田 冷峰
上る霧留まる霧あり霧の中 野見山恵子
病院の結果待つ間や霧深し 三好 六甫
「蟋蟀」
本棚の不揃ひの闇ちちろ鳴く 玉田春陽子
認知力壊れゆく友ちちろ鳴く 井上 啓一
酔ひざめの水の旨さやちちろ鳴く 玉田春陽子
廃船の主を気取りてちちろ鳴く 三好 六甫
「雑詠」
名月に駆け足で去る嵐かな 高井 百子
秋灯り母に戻りて帰路急ぐ 高井 百子
天高し焼味噌で食ふ伊那の蕎麦 大澤 水牛
就活に案山子も村を出るといふ 須藤 光迷
朋友の焼きたる皿に初秋刀魚 山口斗詩子
曼珠沙華十日遅れて庭の隅 大澤 水牛
参加者(出席)大澤水牛、加沼鬼一、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、谷川水馬、野田冷峰、山口斗詩子
(まとめ・堤てる夫)