日経俳句会の大プロジェクト「逆回り奥の細道」吟行は5回目を数え、10月23日、24日の1泊2日、山形市の立石寺から最上町の山刀伐峠へと、羽州街道、出羽街道を辿った。参加者は大澤水牛幹事長(双牛舎代表)、今泉恂之介(同)はじめ大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、鈴木好夫、鈴木玲子、高瀬大虫、田中頼子、徳永正裕、野田冷峰、広上正市、星川佳子、吉野光久、山口詩朗、堤てる夫(旅幹事)の16人。時折小雨に遭ったが、大雨予報は運よく外れて、紅葉の羽州を満喫した。
JR仙山線山寺駅から望む立石寺は、宝珠山の山肌に剥き出しの奇岩壁、断崖の御堂が秋の日差しに映え、なんとも言いつくせぬ景観。日曜日の参詣客多く「清閑の地」にはほど遠かった。
仙山線・山形新幹線で大石田駅へ、観光バスで尾花沢へ行く。芭蕉が10泊した尾花沢では「芭蕉・清風歴史資料館」を訪ね、豪商・鈴木清風の豪快な人物像に触れる。主な宿所であった養泉寺には155年前に奉納された仁王尊像があり、阿形・吽形ともに青い腹がけ姿というユニークさ。土地の大工の手になるものだという。
赤倉温泉に泊まり、2日目の山刀伐峠へはマイクロバスで頂上付近まで上がり、峠越の古道が残る二十七曲がりを徒歩で下った。ブナ林は高く、足元は落葉で埋まる。「高山森々として一鳥声聞かず」の雰囲気を味わった。「蚤虱馬の尿する枕もと」にかかわる「封人の家」や尿前の関所跡それに平坦地における分水嶺(JR陸羽東線堺田駅そば)を観て帰途に。陸羽東線鳴子温泉駅に行く途中、紅葉真っ盛りの鳴子峡の景色を楽しむことができた。
メールによる吟行句会を行った結果、好評の作品は次の通り。
黄落に鎌首もたげ蝮草 吉野 光久
音もなく水分かれ行く出羽の秋 広上 正市
山寺や盲女の杖の探る秋 徳永 正裕
誰か摘む馬屋の裏の一位の実 徳永 正裕
冬近し腹がけをする仁王像 星川 佳子
岩肌の女顔めく秋時雨 今泉恂之介
振り仰ぐ山寺は早や霧の中 大下 綾子
尾花もて招きをるなり養泉寺 高瀬 大虫
分水嶺ひとまたぎせり谷紅葉 堤 てる夫
小流れのふたみに分かれ草の秋 吉野 光久
土産屋にことに色濃きあけびかな 広上 正市
(まとめ堤てる夫)