日経俳句会は3年前から「奥の細道」を大垣から始める「逆回り奥の細道吟行」を続けている。この6月は山形県の立石寺を中心に回る予定だった。しかし3・11の大震災の影響で、仙台から入る旅はあれこれ支障を来す恐れがあるかも知れない。これは秋にずらし、今回は番外編として芭蕉の生地伊賀上野を訪ね、名張へ出て赤目四十八滝を眺め、山越えで奈良県宇陀へ抜け室生寺と大野寺磨崖仏を拝観しようということになった。
堤てる夫幹事がコース設定から赤目温泉の宿の手配など万遺漏無く整えてくれ、6月5、6日の一泊二日で快適な吟行ができた。参加者は嵐田啓明、今泉恂之介、大澤水牛、大下綾子、加藤明男、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、広上正市、星川佳子、吉野光久(以上日経俳句会)に谷川透、玉田春陽子(以上番町喜楽会)を加えた16名。
帰京後、投句・選句5句のメール句会を行った。最高は五点で、「山椒魚石の顔して石の上 啓明」と「夜話の輪の静まりて河鹿鳴く 正裕」の二句。次席四点は「磨崖仏仰げば傾ぐ日傘かな 啓明」「滝しぶき赤目の牛の黒光り 啓明」「軒低き忍者の町や夏燕 明男」の3句だった。以下3点が8句、2点9句、1点17句と続いた。3点以上の高点句は以下の通り。
山椒魚石の顔して石の上 嵐田 啓明
夜話の輪の静まりて河鹿鳴く 徳永 正裕
軒低き忍者の町や夏燕 加藤 明男
滝しぶき赤目の牛の黒光り 嵐田 啓明
磨崖仏仰げば傾ぐ日傘かな 嵐田 啓明
沢蟹を噛むや命を論じつつ 今泉恂之介
立て膝の如意輪観音涼しげに 大澤 水牛
遠ざかりまた近づきぬ滝の音 大下 綾子
万緑に朱を差す女人高野かな 須藤 光迷
土芳居て碧梧桐居て青葉闇 堤 てる夫
夏の城こども忍者徘徊す 徳永 正裕
室生寺や小鉢数へる夏料理 広上 正市
滝つぼの上にぽっかり丸い空 吉野 光久