4月13日(水)午後六時半から東京・大手町の日経ビルで第77回銀鴎会例会が開かれた。東日本大震災から既に一ヶ月以上経過したが、被災地の瓦礫の片付けは進まず、まだ1万5千人以上の行方不明者が残されている。東電福島原子力発電所の事故処理は一向に進展せず不安を掻き立てている。震度6、5といった余震が相次ぎ、東京でもかなりの揺れを感じて電車が一時停止するなど、大震災の余波は治まらない。
そうした中での句会だったが、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫、直井正、広上正市の十三名が出席、金田青水、田中頼子、藤野十三妹、吉野光久の四名が投句参加した。
この日の兼題は「朧」と「木の芽和」。投句五句、選句七句で句会を行った結果、最高点は六点で「修羅の春岬に立てば海まろし 光久」の一句。五点句がなく、四点が「消えし街静かに照らす朧月 庄一郎」「ありのまま生きて夕餉の木の芽和 十三妹」「まず含む辛口の酒木の芽和 碩」「思ひがけぬ人の便りやなゐの春 光久」の四句出た。次いで三点が八句、二点十句、一点二十二句と続いた。兼題別の三点以上獲得句は以下の通り。
「朧」
消えし街静かに照らす朧月 井上庄一郎
朧夜や廃墟の街を隠すごと 井上庄一郎
「木の芽和」
木の芽和遠嶺は白き能登の町 大倉悌志郎
ありのまま生きて夕餉の木の芽和 藤野十三妹
まず含む辛口の酒木の芽和 佐々木 碩
幼名で呼び合ふ友の木の芽和 吉野 光久
木の芽あへ眼耳鼻舌の和音かな 澤井 二堂
八戸の烏賊ありがたく木の芽和 金田 青水
熱燗に木の芽田楽峠茶屋 井上庄一郎
「雑詠」
修羅の春岬に立てば海まろし 吉野 光久
思ひがけぬ人の便りやなゐの春 吉野 光久
啓蟄や扉全開理髪店 佐々木 碩
津波あと小学校の桜かな 田中 頼子