番町句会は姉妹句会の喜楽会と合併し「番町喜楽会」になったのを記念して、3月11日から13日に「俳都松山吟行大会」を開催した。日経俳句会有志にも声を掛け、総勢16人の和気藹々たる吟行団が出来上がった。
3月11日朝、羽田空港を出発、松山東急インに二泊し、松山城をはじめ市内の子規ゆかりの場所を巡り、道後温泉周辺から石手寺、子規の俳句の先達大原其戎の三津浜、種田山頭火終焉の一草庵などを勢力的に回り、密度の濃い三日間を過ごした。到着日の午後、松山城を見物していたところに東北関東大地震・大津波の知らせが飛び込んで来た。一同暗澹たる思いにとらわれたが、ここでじたばたしてもどうにもならないと心を決めて、計画通り実行した。
参加者は、井上啓一、井上登代子(井上夫人)、今泉而雲、大澤水牛、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、前島厳水、三好六甫(以上番町句会)、須藤光迷、谷川透、玉田春陽子(以上喜楽会)、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子(以上日経俳句会)の16名。
12日夜に松山東急インで句会開催。投句は3句以上5句、選句は5句とした。その結果、最高点は5点で『春風を足でつまんでリフト乗る 佳子』、続く4点は『句碑の文字春ゆらゆらと碧梧桐 百子』と『ぞなもしの婆の親切春うらら 大虫』の2句だった。以下3点9句、2点9句、1点22句ということになった。
吟行句らしく松山の風景、食べ物、人情などを詠んだ佳句が数多く生まれた。また大震災のショックは大きく、それにまつわる句がかなりの数に上った。好評を得た句は以下の通り。
うららけし坊っちゃん電車で温泉に 井上 啓一
春愁や城山できくなゐの報 同
芽柳や空に二の丸天守閣 今泉 而雲
妻も子も地震も津波も霞かな 同
刀匠の家ひっそりと花豌豆 大澤 水牛
地震情報うららの城を揺るがせり 同
春宵や坊っちゃんの湯はやはらかき 須藤 光迷
山頭火逝きし庵の紙雛 同
句碑の文字春ゆらゆらと碧梧桐 高井 百子
春のなゐメール飛び交ふ天守閣 同
ぞなもしの婆の親切春うらら 高瀬 大虫
天守閣霞の先に伊予の富士 同
花便り薄墨色の地酒かな 高橋 楓子
走り根に遊ぶ子供や水温む 同
赤シャツで鯛めし喰らふ春の昼 谷川 透
刻太鼓聞きて神の湯春夕べ 同
佐保姫ののりすてし雲城の上 玉田春陽子
読めぬ字を頷き飛ばす城の春 同
春の宵道後の湯銭四百円 堤 てる夫
聖人に出会ふ僥倖伊予の春 同
伊予や好し春の館で子規に会ふ 徳永 正裕
大地震や留守宅案じ春宴 同
春ふわり往くも還るも句碑巡り 野田 冷峰
朽ちるまま歩き遍路に朝の露 同
春風を足でつまんでリフト乗る 星川 佳子
あたたかや一遍上人誕生日 同
地震津波国襲ひしも伊予は春 前島 厳水
石手寺に香煙けぶる竹の秋 同
春の雲わがとほつおや石鎚山 三好 六甫
ひざ笑ひ山に笑はれ下りけり 同