日経俳句会の平成24年の句会活動を締めくくる「忘年合同句会」は12月18日の年次総会後に開催された。兼題「冬温し(ふゆぬくし)」「熊(くま)」の2句と雑詠1句の合計3句を投句、廣上幹事が作成した選句表を会員に送り返し、各人が5句選句して再び廣上幹事に送るという手順で事前に投句・選句を進め、忘年句会そのものは幹事による選句結果の発表で始まった。
最高の9点は杉山智宥さんの「居眠りを眺め居眠り冬温し」だった。次席は7点で、このところ自宅から投句を続けてきた金田青水さんが久しぶりに元気な姿を見せ「極月やどしんと棄てる文庫本」で存在感を発揮した。三席は6点句で、田中頼子さんの「縁談のひとつ起こりて冬ぬくし」と、徳永正裕さんの「詰め合ふて座る都電や冬ぬくし」の2句。続く4点は7句、3点が14句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。
「冬温し」
居眠りを眺め居眠り冬温し 杉山 智宥
縁談のひとつ起こりて冬ぬくし 田中 頼子
詰め合ふて座る都電や冬ぬくし 徳永 正裕
冬温し柔らかきかな影法師 大熊 万歩
主治医よりやさしき言葉冬ぬくし 大倉悌志郎
岸壁に釣竿の列冬ぬくし 佐々木 碩
冬ぬくし窓辺に花鉢揃ひけり 廣上 正市
斬る真似と斬られる真似と冬温し 嵐田 啓明
母の家縁側ありて冬温し 今泉恂之介
冬ぬくし醤油の匂ふ渡し跡 大倉悌志郎
冬温し良寛のうた筆の跡 澤井 二堂
「熊」
マンモスの眠る山河や熊眠る 廣上 正市
痩せ熊が海を見ている飢餓半島 大沢 反平
轟音に母熊射手を見据えたり 岡田 臣弘
熊来たる柿をもげとて広報車 高瀬 大虫
着ぶくれて熊めいた人道に寝る 高橋 淳
大騒動主はなんとも小さき熊 杉山 智宥
山女熊除け付けて一列に 野田 冷峰
「雑詠」
極月やどしんと棄てる文庫本 金田 青水
ビルばかり大きくなりて年暮るる 片野 涸魚
風に飛ぶ声訊き返す雪の尾根 深田森太郎
縄暖簾出でて独りの時雨かな 今泉恂之介
師走選挙まじる廃品回収車 大澤 水牛
聖堂をあまねく満たす冬日かな 大下 綾子
透き通る空をほのかに枇杷の花 星川 佳子
(まとめ・堤てる夫)