山口 詩朗

• 蕗のたう二つ摘みきて朝餉かな　　　　　　　（平22）
• 雛の夜の勉強部屋に更くる灯よ　　　　　　　（平24）
• 亀泳ぐ啓蟄の水動かして　　　　　　　　　　（平18）
• 待つことに慣れし病廊黄水仙　　　　　　　　（平24）
• 新緑の絵の具足りないリアス海　　　　　　　（平23）東日本被災地にて
• 浸水の溝にどっこい緋のメダカ　　　　　　　（平23）東日本被災地にて
• 豆御飯炊かしぎて傘寿の母思ふ　　　　　　　　　（平8）第一回酔吟会
• ペディキュアの足がそろへり三社祭　　　　　（平21）
• 点滴のなき初夏の日を横たはり　　　　　　　（平23）
• 飛びついて青き葉となる雨蛙　　　　　　　　（平20）
• 病む妻へ唯一の手料理冷素麺　　　　　　　　（平23）
• ひと電車待つ間のつるべ落としかな　　　　　（平2）第６回日経俳句会賞受賞作
• 伸び伸びとはみ出してゐる秋刀魚かな
• 会ふたびにすぼまるお母かん大根だいこ煮だき　　　　　（平20）
• 木枯らしの吹きおさまりし星の数
• ふんだんに寒の宮水灘五郷　　　　　　　　　（平20）
• 酒蔵の高窓一つ日脚伸ぶ　　　　　　　　　　（平23）
• 持ち寄りて本の嵩増す炬燵かな　　　　　　　（平23）
• ガラス戸に初春の子の手形あり　　　　　　　（平24）
• 初夢の母模糊として笑ふかな　　　　　　　　（平24）